第6話 土地の拡張
翌日、村人の話を聞いていくと。
村の西を流れる小川の向こうには、広大な森が広がっているらしい。
一方で、東と北は山が連なっている。
村の周辺を図示するとこんな感じ。
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氷山
山
森 竹林 山
森 川【村】野 山
森 林 山
荒地
海
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図のように、北の山は途中から雪山になっている。
川は北から南西方向へ伸びていっているらしい。
南は林から荒地に繋がるが、もっと南へ行くと海が出てくるってウワサだ。
なんにせよ村の東西南北の地形により、やってくるモンスターや人の種類が違うんだそうな。
「占いによると次に村へ来るのは……7日後に西からゴブリンが4匹。10日後に東から冒険者が3人だヨ」
占い師がそう言う。
「ゴブリンはまだわかるけど……冒険者って? 攻めてくるのか?」
「そこまではわからないヨ。アタシが占えるのは1『村にやってくる者の種類と数』2『その時期』3『その方角』だからネ」
そう言えばそうだったな。
「わかった。伝えてくれてありがとう」
占い師が帰ると、俺は祠の中で少し考えにふけった。
冒険者はひとまず置いておいて、その前のゴブリンのことを考えよう。
ゴブリンはたぶんオークよりずっと弱そうだし、4匹と数も少ない。
神である俺がじきじきに戦えば問題にならないだろう。
が、石工のオヤジが『石の剣』を完成させる予定がちょうど7日。
剣があれば狩人に戦ってもらうこともできる。
「神は魔物を倒しても強くなりませんが、村人が敵を倒せば熟練度が上がります」
と、天使の助言。
ならやっぱりゴブリンは狩人に倒させたいところだな。
「けど、ちょっと待て。神は魔物を倒しても強くならないの?」
「はい」
「じゃあ俺って、もう強くならないのか?」
「神の力はその『領土』と『民』の力が反映されます。つまり、村を広げたり、村人を増やしたりすれば同時に神も強くなるのです」
天使がそう説明し終えた時。
「神さま。お水です」
と、ナルメが椀に水を持って来てくれた。
「お、ありがとう」
そう答えながら、そう言えば彼女へ天職『巫女』を付与していないことに気づく。
「ナルメ、ちょっとこっちへ来なさい」
「はい。なんでしょう?」
俺は、少女をそばに呼び寄せると『天職、巫女を与える』と念じた。
すると、例の幻想的な青い光が辺りを包むが……
光が消えた次の瞬間。
ナルメは目の覚めるような白衣に朱色の袴といった立派な巫女装束を纏っているではないか。
「わあ。素敵!」
と喜ぶ少女の黒髪と小麦色の肌が装束の紅白を限りなく流麗なものに見せている。
「ありがとうございます! 私、一生懸命神さまに仕えるわ!」
そう言ってナルメは祠の周りを掃除に行った。
「……いい子ですね」
と、天使がポツリとつぶやいた。
あいかわらずの無表情だが、天使がそんなことを感じるなんてちょっと意外だった。
「さて、これで神の力を高めることができます」
「ああ、そうだったな」
だが、天使はすぐにいつもの説明という役割に戻る。
「具体的に言うと、巫女の力によって『神の領土』を増やすことができるのです」
そう言われてもよくわからなかったが、天使が言うことまとめるとこうだ。
まず、現在『村の土地』として換算されている『範囲』のようなものがあるんだと。
この範囲の土地と民から、俺は神としての力を得ているんだそうな。
しかし、巫女を置いたことによって、さらにその村の土地を広げることができるそうなのだ。
「領土の広げる方向は神の恣意によって決めることができます。範囲を選択してください」
と言われるのでちょっと悩む。
現状、村の形はこんな感じ。
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これに4マス付け加えることができるらしい。
そこで俺はこういうふうに村の土地を広げてみた。
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□□
□□
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なぜそんな歪な形にしたのかと思われるかもしれないが、これは川に沿って範囲を設置したからである。
村は川の恵みによって生きているところが大きいからな。
そうした方が大きなパワーを得られるんじゃないかって思ったんだ。
「あれ!? なんだかすごく気分がいいぞ!」
「広がったぶんの土地が神へ力を与え始めたのです。これで今までの1.5倍の力を出すことができるでしょう」
ただ広げる土地の場所を選択しただけなのに……
巫女の力ってすげえんだな。
純粋にかわいいしさ。
「あとなんだ、英雄を産んでくれることもあるんだっけ。それはどうやったら産んでくれるんだ?」
そう尋ねると、天使は時が止まったようにピタっと静止してしまう。
「おい、どうした? 巫女はどうやったら英雄を産んでくれるのかって聞いているのに」
「それは……」
天使はようやく口を開いたが、ふいにその無表情な美少女の顔を真っ赤にして消えてしまった。
いけね、そういうことか……
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