第3話 占い師
占い師は、外敵からの襲撃を予知できる天職。
全滅を防ぐのには必須の役割だという。
というわけで、俺はとりあえず村の無職3人のうち一人を占い師にすることにした。
「占い師? ふんッ、ピンと来ねえな」
「お、おで……う、占いには興味ない」
「占い師ネェ。まあ、悪くないカモ……」
ひとりずつ尋ねてみると3人目のちょっとやさぐれた姉さんが興味あるっぽい。
ならば彼女にお願いしよう。
「ふぅん。神さまがそうおっしゃるんなら仕方がないわネ……わかった。アタイ、占い師やってみるヨ!」
そう言ってくれたので、俺は彼女へ手をかざし『天職……占い師を授ける』と念じた。
すると、ふいに辺りを青白い光が包み、すげー幻想的な雰囲気になる。
そんな演出聞いてなかったのでマジびっくりしたが、光が消えるとやさぐれ姉さんは目を丸くしてこう言った。
「ううッ! 変だネ……なんだか急に占いがしたくなったヨ」
どうやら天職の付与が成功したらしい。
正確に言うと、『占い師』が占ってくれるのは次の三つ。
1 外から村にやってくる者の種類と数
2 その方角
3 その時期
たしかに、それがわかっていればかなり村人を守りやすくなるだろう。
「占いには少し時間がかかるヨ。またあとで来ナ」
やさぐれ姉さんがそう言うので占いは彼女に任す。
俺は残り二人の失業者へ、別の天職を付与しに行くことにした。
「ぁあ? 石を細工してアイテムや武器を作るだと? ……まあ、それならやってやらなくもねえな」
「お、おで……狩る。た、たた、闘う!」
そう言うので、気難しそうなオヤジには『石工』を付与し、吃音の青年には『狩人』を付与した。
「な、なんだ……急に石の加工がしたくてたまらなくなってきやがった!?」
「ち、血がたぎる! か、かか、狩りがしたい! うおおお……」
なんか天職を付与するとモチベがヤバいなぁ。
でもまあ、悪いことじゃないよね。
ちなみに、『石工』がアイテムを作り出すにはそれなりの日数がかかるらしい。
俺は悩んだ末に、とりあえず石の剣を作るように命じた。
何か武器を作ってやらないと『狩人』の青年が狩りをやれないんだってさ。
「あと付与していない天職がひとつあったよな。なんだっけ?」
「神官(巫女)です」
と、美少女天使が答えた。
彼女は普段は姿を見せず、こうして疑問を口にした時だけ急にあらわれる。
「ああ、確か神の力を高めてくれるんだっけ? うーん、それは後回しでもいいかなぁ」
無職ももういなくなっちゃったし。
「もちろん神のご自由ですが、今のままでは村を魔物の襲撃から守るのには不十分かもしれません」
「マジで?」
「神は初期値で常人をはるかに超えた運動能力を持ちます。ちょっとやそっとのザコ敵ならば神ご自身の武力で打ち払うこともできるでしょう。しかし、少しでも強い魔物に攻められた時、これを凌駕することはまだできないはずです」
強い魔物か……
「つーか、魔物って実際はどういうものなんだ?」
「神は魔物をご存じない?」
「いや、イメージはできるけど、前世の世界じゃ想像上のモノだったからな」
「なんと……」
そう言うと天使は急に黙り、目を閉じて祈るような姿勢を取る。
銀髪を風がゆらし、やがてその美しい瞳は再び開かれた。
「確かに。あなたが人間をしていた異世界には、魔物がいなかったようですね。それに魔法もない……」
「魔法も存在するのか!?」
「存在はします。現在、この世界でも魔法の使用に至っている人間の村や町は非常に希少ですが、おいおい使う村も出てくるはずです。もちろんこの村も神次第では使えるようになります。もっとも……村を発展させようとお考えならばですが」
村を発展、か。
今んとこそんなモチベは全然ないけどな。
あたりは自然の恵みが豊穣で食っていくのに悲壮感がなく、村人は素朴で気のいいヤツばかりだ。
今のままが最高じゃん。
せっかくよい村の神に転生したんだから、このままあの村人たちと仲良くのんびり暮らしていきたい。
「しかし、何度も言うようですが、村が全滅すれば神、あなたも消滅するのですよ」
「わかってるって」
ようするに村人を守れればいいのだ。
「じゃあ神官は置こうか。若者たちの中から選べばいいかなあ」
そう言って、小川の方へ向かって行く時だった。
「神さま! 神さま!」
後ろから声がして、振り返ると占い師があわてて走って来ていた。
「あとで来てネっていったじゃない。占い結果が出たんだヨ」
すっかり忘れていた。
今度から占いが出たら俺のところに来てもらうようにしよう。
「別にいいケド……そんなことより占い結果サ。次に村へやってくるのはオーク10匹。方角は西サッ!」
オークか。
天使の話じゃ、神の初期値だとちょっと強い魔物相手だとキツいって言ってたけど……
オークってフツー最弱じゃないよな。
イメージ的には微妙に判断に迷うところ。
でも10匹って数は多いんじゃねえか?
「で、いつ来るの?」
「正午サ……」
「正午? いつの?」
「今日だヨ! これからサ!」
その時。
小川の方で村人たちの悲鳴が聞こえてきた。
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