出口
リアルが忙しくて、来週の土曜までは投稿が難しそうです。
明日は…出来ればします。
「んー、早く出口に向かってくれないかな〜。」
私は、あの冒険者達が出口へ向かうの待っていた。
でも、一向に動く気配が見られない。
そう言えば、私を街に近付けさせないように〜、って言ってたような…
一人、喰い殺して恐怖心を煽るか…
「っ!?」
「な、なんのようだ?」
へえ?
会話から入るんだ?
それなら…
「出口……何処?」
うん、よく言った!
流石私!やればできるじゃん!!
「出口か…俺達も迷ってて分かんないんだよ…」
「……そう。」
チッ!
せっかく勇気を出して、声を掛けてやったというのに。
まったく、不快な人間だ事だ。
「私を……鑑定したよね?」
「したな…ヒメユリさん…だったか?」
「そう……この名前は珍しい……バレるわけにはいかないの……」
私は、分かりやすく殺意を出す。
「出口に…案内してくれないなら………」
「くっ!」
私は、鋭い牙を剥き出しにして、
「あなた達は…もう要らない。」
私は、先頭の冒険者の首に噛みつき、一気に血を啜りとった。
相変わらず味は感じない。
でも、魔物の血を吸ったときとは違う…とても満足感を感じる。
それに、血のストックがしやすい。
操血術は、血の消耗が激しい。
だから、沢山の血を集める必要がある。
その点、何故か人間の血は、魔物の血の何倍もストック出来るのだ。
総量じゃなくて、一回の吸血でストック出来る血の量ね?
魔物が十なら、人間は五十かな?
きっと、自分の血に変換しやすいんだろうね、人間の血は。
「リーダー!?」
「クソッ!!俺達だけでも逃げるぞ!!」
残った二人の冒険者は、一目散に逃げ出した。
このまま逃がすわけにはいかない。
けど、少し泳がせてみるか…
リーダーがやられた!!
何なんだあの化け物は!?
「ヒメユリとか言ったか?すぐに組合に報告しねえと、近い将来人類の厄災になるぞ!!」
「ああ。だが、問題はあの化け物が俺達の事を逃してくれるかどうかだ。」
奴は、あのレベルで気配感知がレベル10だった。
しかし、気になる事もあった。
「あいつの目。まるで呪われてるみたいに真っ黒だったな。」
「ああ。あんなに恐ろしい目は、見たことねぇ。」
あいつの目は、眼球が闇をはめ込んだように真っ黒だった。
それどころか、目の周りも黒くなっていて、呪いのような模様が刻まれていた。
「もし、奴が人に化けて暮らすなら、目隠しは必須だろうな。」
「そうだな。それに、奴は目が見えてるのか?」
「そうか…奴は、そもそも目が見えない可能性があるな。それで、感知系のスキルのレベルが高かったのか…」
目が見えない変わりに、感覚や音に敏感というのはよく聞く話だ。
特に、目の悪い…または目の見えない魔物は沢山いる。
そういった魔物は、総じて他の感覚が優れている。
「仲間を置いて…何処に行くの…?」
「なっ!?」
俺のすぐ耳元で声がした。
そして、すぐに首にチクリとした痛みが走る。
すると、生命力が流れ出すような感覚とともに、この世の苦痛から開放されたかのような快感が押し寄せてきた。
あぁ…この状態がいつまで続けばいいのに。
俺は、快感に包まれながら、眠ることにした。
そして、二度と目覚める事は無かった。
「クソッ!クソッ!!」
仲間はみんなやられた。
先に帰ったやつも居たが、リーダーを喰い殺した時の奴の顔は、美味い獲物を見つけた獣の顔だった。
つまり、奴は人間の味を知ってる。
「クソが…俺には妻子が居るんだ。絶対に死ぬわけには行かねえ!!」
俺には、愛する妻と、ようやく喋れるようになった子供がいる。
『パパ、いって、らしゃ、い』
『いってらっしゃい、あなた。』
『ああ、行ってくる。』
今朝の会話が、蘇ってくる。
俺が死んだら、誰があいつらを守るんだ!!
あいつらを守れるのは、俺だけだろ!!
「俺は死なねぇ…家族が、家で待ってるんだ!!」
俺は、心を奮い立たせ、足に力を入れる。
「家族が…居るの…?」
「!?」
俺のすぐ後ろで、あの化け物の声がした。
振り向くと、すぐそこまで奴が来ていた。
「ああああああああああああ!!」
俺は、力任せに持っていた閃光弾を投げる。
しかし、
「何か…した…?」
「チクショウ!!やっぱり目が見えないのかよ!!」
目くらましが出来ないと、もう一つの発煙弾も効かないだろう。
そうなると、この化け物から逃げる術がねえ…
そして、奴が俺の肩を掴んできた。
ぐいっと体が後ろに倒される。
「捕まえた………鬼ごっこは…終わりだね…」
化け物は、俺の上に乗りにんまりと笑う。
そして、化け物は口を開いて、鋭い牙を見せてくる。
首に噛み付く気だ。
「待ってくれ!!俺には家族が居るんだ!!妻と、ようやく喋れるようになったばかりの子供が居るんだ!!」
すると、化け物は口を閉じて、俺から離れた。
「そう………行って…いいよ…」
「いいのか?」
「うん…」
以外だった。
まさか、こんなにあっさりと見逃してもらえるとは…
もしかしたら、あの三人を喰って、腹いっぱいだったのかも知れない。
なにはともあれ、俺は命拾いした。
「ようやく見つけた…」
俺は、しばらく走り回ったあと、ダンジョンの出口を見つけた。
これで帰れる!!
そう、思った時だった。
「お疲れ様…」
俺の首に、チクリとした痛みが走る。
「なんで…見逃してくれたんじゃ…」
「見逃す?」
化け物は、首にから離れてにんまりと笑う。
「妻子が…居るんだって?…私が美味しく頂いてあげるよ…名前は?」
この化け物は、もとから俺を逃がすつもりなんて無かったらしい。
それどころか、愛する妻子を食うと言いやがった。
「絶対に…教えてやるもんか…」
すると、あの化け物から表情が消えた。
「そう…」
そして、俺は全てを吸い付くされた。
「ここが出口か…場所は覚えた。」
転がっている死体から剣を拝借すると、今まで使っていた剣を捨てた。
既に、刀身はボロボロになっていて、いつ折れてもおかしくなかった。
それに、鑑定結果も
『名称:鉄の剣
なんの変哲もない普通の剣。特に特別な価値はない。』
だった。
なら、捨てても問題ない。
だって、なんの変哲もない普通の剣、だからね。
…いや、コレクションとして、残しておくか…
私は、ステータスを開き、あるスキルを探す。
「アイテムボックスは無いのかな?…これか?」
私は、それらしきスキルを見つけた。
『空間収納
物を、亜空間に保存するスキル。スキルレベルに応じて収納量も増え、亜空間内の時間の流れも操作できるようになる。』
「これが、アイテムボックスの代わりか…どうしよう、スキルポイント100か…」
スキルポイントは、一回のレベルアップで10しか手に入らない。
だから、とても貴重な物だ。
けど、コレを取得しないと剣がかさばる。
「仕方ない、必要な出費だ。それに、空間収納はこれからも使うだろうし、先行投資にもなるでしょ?」
私は、必要な出費として、空間収納を取得した。
…とは言っても、今のところ剣しか入れるものは無いんだけね?
どの道、空間収納はいつか取得するだろうし、取っておいて損はないはず。
「大丈夫、いつか頻繁に使うはず。」
私は、自分にそう言い聞かせながら、その場を離れた。
下層
「これは?」
私は、隠し部屋らしきものを見付けていた。
直感のおかげで、こういった物を見つけやすくなっている。
隠し部屋や罠があると、ここだ!!って感じで、感覚的にわかってしまう。
今回の隠し部屋もそうやって見つけのだ。
そして、隠し部屋には宝箱があった。
「さてさて…何が入ってるかな?」
私は、ウキウキしながら宝箱を開ける。
そこには、金属製のアイマスクのうような物があった。
『名称:姫の目隠し
スキル:再生強化、運気上昇、光耐性強化、不壊
盲目の姫が着けていたと言われる目隠し。着用者の自己再生能力と運気を上昇させる効果がある。また、決して壊れず、着用者の成長と共に形と力を変える不思議な力がある。』
成長する装飾品!!
これは、とんでもないお宝を掘り起こしたかも知れない。
だって、成長する装飾品だよ?
一生使える物だから。
それに、壊れないというオプション付。
何百年、何千年先まで使える素晴らしい装飾品だ。
「さて、では早速。」
私は、目隠しをつけてみた。
…元々目が見えないから、変化はない。
けど、見せたくない部分を隠せてる感はある。
さっき、人間に恐ろしいって言われたからね。
隠しておかないと、私の美貌が台無しになる。
数多くの男達を誑かしてきた、この私の美貌を損ねるようなものは、隠しておかないと。
「さてと、取り敢えず下層のボスを倒して、ダンジョンの外に出よう。」
ボスを倒してしまえば、このダンジョンに残るから理由はない。
私は、異世界を旅したい。
目は見えないけど、耳と肌で感じることができる。
そう、私にはぬくもりとせせらぎさえあれば、それで満足だ。
そのためには、まずはこのダンジョンのボスを倒す。
旅に出るのはそれからだ。
「またいつか、お天道様の元、旅をするために!…お天道様の元?」
私、吸血鬼だよね?
この世界の吸血鬼って、日光は弱点なのかな?
弱点なんだろうな~
吸血鬼は普通に強い。
この私が簡単に、大量の魔物を蹴散らせるくらいには強い。
それが、国単位で襲いかかってくれば、人類なんてあっという間に掃討されてる。
それなのに、人類が生き残ってるって事は、吸血鬼を抑えつける何かがある。
おそらく、それが太陽なにかだと思う。
太陽という弱点があるせいで、吸血鬼はいつまでも暴れるわけにはいかない。
「取り敢えず、日光耐性が得られるまでは、ここに引きこもるしかないのかな?」
そんな気がするな〜
だって、気合で耐えられるなら、日光は大した弱点じゃない。
何か、日光を防ぐ物ないとキツイ。
それで防ぎ切れるか分からないけど。
「はぁ、取り敢えずこの憂鬱さを、愚かな猿共にぶつけてやり過ごそう。」
私は、性懲りもなく現れた猿共に怒りをぶつけることにした。
「お前達に恨みはないが、取り敢えず死んでもらおうか。」
「ギ、ギギャッ」
リーダー格の猿が私のことを警戒している。
だがもう遅い。
私は、闇魔法と操血術で後ろの猿共を蹴散らす。
次に、一気に距離を詰めてますリーダー格の猿の首をはねる。
最後に、何が起こったか理解出来ていない猿共を殲滅して終わり。
ちっとも楽しくないけれど、血は多少集まった。
ついでに経験値も。
「こうした努力を積み重ねないと、強い吸血鬼にはなれないか…」
私は、血を回収すると、すぐに新しい獲物を探して歩き出した。