集結と邂逅
誤字・脱字があれば報告していただけると幸いです。
「あれ?ここは…」
気が付くと、真っ白な世界に居た。
文字通り真っ白。
地面?には雲のような見た目の、触れることの出来ない何かがあった。
どっちかって言うと、霧かな?
霧みたいに湿っぽさが無いけど。
「もしかして、姫?」
後ろから声を掛けられた。
振り返ると、ガリガリの不健康そうなおっさんが居た。
「その声は…『キージー』さん?」
『キージー』
ゲームのパーティでタンクを努めていた、筋骨隆々の鬼人だ。
しかし、現実の見た目は…
「ガリガリだなぁとか思ったんじゃないですか?」
「ええ、ゲームのアバターがあれだからね…」
「ムッキムキの男に憧れてたんですけど、運動苦手なんですよね〜。あ、本名言っておきますね『木下 次郎』って言います。」
木下次郎…それでキージーか。
なんと言うか、安直な名前だね。
まぁ、下手に厨ニネームを付けるよりはマシか…
だってうちのパーティには、
「あれ?姫か?」
「噂をすればなんとやら、ね。」
この独特な声、あいつに違いない。
うちのパーティ、『巫女のヒメユリ』の火力担当。
「『アインツェルゲンガー』は、貴方よね?」
『アインツェルゲンガー』
調べてみたら、ドイツ語で一匹狼らしい。
その名前の通り、人狼族の中でも魔法に特化した、白銀狼の魔法使いだ。
そして、不治の病患者だ。
まぁ、じゃなきゃそんな名前付けないか。
「これまたガリガリね、うちのパーティには不健康な奴しかいないのかしら?」
「ふん!我は孤高の民、人と関わる事が無いのだ、見た目は関係ない!!」
「アインツェルゲンガーって、孤独な人って意味もあるらしいぜ?」
キージーがボソッと教えてくれた。
うーん、自虐かな?
だって、孤高の民だもんね。
というか、厨二病拗らせ過ぎでしょ!
あんたいくつだよ!?
「ん?やっと見つけたぞ姫!」
「えっと、どちら様でしょうか?」
「まぁ、そうなるよな。俺だよ、『ハルト』だよ。」
「へぇー…はあ!?」
『ハルト』
パーティの遠距離アタッカー二人目で、弓使いだ。
ちなみに、種族はエルフ。
イケメンではないが、物静かで優しそうなイメージの狩人服の男だった。
しかし、現実は…
「あの、色んな意味でデカくない?」
「そうだな、身長が205cmで、体重が198kgあるからな。よく、力士と間違われるよ。」
「デカ過ぎんだろ…」
キージーが数字を聞いて、驚愕している。
というか、よく力士と間違われるよじゃなくて、もう力士にしか見えないんだよ!
力士に転職すればいいのに…
ん?
アインツは意外と大丈夫そう。
ちなみに、アインツって言うのは、アインツェルゲンガーを略して呼んでる名前、つまり愛称みたいなもの。
「アインツ、反応薄いね…アインツ?」
「こいつ、アインツだったのかよ。…なんか、固まってね?」
「ビビってフリーズしたんじゃね?」
「おーい、アインツー」
「返事が無い、ただのシカバネのようだ。」
「勝手に殺すな!!」
「あ、生き返った。」
どうやら、フリーズしていたらしい。
でも、返事が無いには、反応するみたい。
「もしや…貴女は『ヒメユリ』様では?」
「ひっ!!」
「おい変態、姫に近付くな!」
「待て待て待て!私です!『ホタテフライ』です!!」
『ホタテフライ』
いつも私の側にいて、姫の盾を自称する変態だ。
アバターは、老執事って感じだけど、現実の見た目はザ・ヒキニートって感じの見た目だ。
ちなみに、種族は魔族だ。
「なんだお前かカキフライ。」
「ホタテフライです。」
「びっくりさせないでよ、カキフライ。」
「ホタテフライです。」
「お前、結構太ってるんだな、カキフライ。」
「だから、ホタテフライです。後、お前にだけは言われたくないな!」
「ふん!醜いな、カキフライ。」
「だから、ホタテフライだつってんだろ!ブチ殺すぞ!!」
正直、何故カキフライにしなかったのか不思議だ。
七不思議にしてもいいと思う。
「さて、あと一人来てないわけだけど…あれじゃない?」
「あれだろうな。」
「あれだな。」
「あれですね。」
「間違いない、あれだな。」
「えーっと、私ですか?」
「貴方しか居ないでしょ?『エビ・チリ』」
『エビ・チリ』
大盾とハルバードで戦う、パーティの二番目の盾。
キージーは完全防御特化で、両手に盾を持っている。
その盾に、棘が付いてるので、よくウニタンクって呼ばれてたりする。
それに対して、エビ・チリは攻撃も出来て、物理火力では一応最強だ。
しかし、魔法、遠距離攻撃に重点を置くこのパーティでは、もともと物理火力が低からエビ・チリの物理火力はあくまでオマケ程度。
種族は、獣人のヒトガタライオン種だ。
ちなみに、獣人には2種類あって、半人種とヒトガタ種だ。
半人種は、見た目がまんま人間で、ケモミミが着いている。
ヒトガタ種は、直立二足歩行をする動物だ。
違いとしては、魔法や器用なことがしたいなら半人種、前衛でバリバリ戦うならヒトガタ種という感じだ。
つまり、
半人種→魔法の適性が高い、手先が器用。
ヒトガタ種→物理攻撃、防御力が高い。戦闘向き。
という感じだね。
ちなみに、一目で分かった理由は、唯一コイツだけ現実の顔写真を見せてもらったからだ。
「『巫女のヒメユリ』が揃ったわね。改めて自己紹介しましょうか、アバター名『ヒメユリ』よ。」
「『キージー』だ。」
「『アインツェ「アインツね。」』ぐぬぬぬ!!」
「『ハルト』だ。」
「『ホタテフライ』です。」「カキフライね。」
「『エビ・チリ』だ。」
こうして見ると、ゲームで始めて集まった時みたいで、懐かしいわね。
なんだか、新鮮な気持ちになる。
私が、感傷に浸っていると。
『予定通り、十万人が集まったみたいだね。やあ、気分はどうかな?』
手紙の送り主と思しき奴が現れた。
しかし、姿が見当たらない。
しばらく、キョロキョロしていると、
「霧が…晴れてる?」
真っ白の世界に見えていたのは、一面霧だらけだったかららしい。
そして、手紙の送り主の姿が見えてきた。
「デカくねえか?」
「結構な距離があると思うんだけど…」
「だとしたら、実際の大きさはどれくらい何だよ。」
その姿は、女性に真っ赤なアゲハチョウの羽を付けたような姿だった。
そして、とても神々しいと、本能で感じた。
あれはまさに…
「神…」
送り主の名前に『蝶の神』と書かれていたが、あれは本当らしい。
「あれが…『蝶の神』」
そして、魂で感じ取った。
あれは、『次元が違う』程度の言葉で…いや、人間の言葉で言い表せるような存在ではないと。
何人たりとも彼の神には、勝てないと。
個として、完全に完成された存在であるという事に。
『君達は、“大きいとか”、“神々しい”以外の感想を抱けないのかね?まぁ、確かに私は大きいよ。この羽一枚で太陽がすっぽり入る大きさがあるからね。確かに私は神々しいよ。これでもかなり、位の高い神だからね。』
羽一枚で太陽がすっぽり入る?
太陽って、確か地球の109倍の大きさがあるんだよね?
彼の神は、太陽より遥かに大きいの?
そんなの、大きいなんてレベルじゃない。
蝶の神
いったい、あれは何者なんだ…