表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

アキラとアキと召喚と

作者: もおきんるい

アキラとアキは異世界召喚されてしまった・・

「よくぞ、よくぞ!!世界の悪にして大敵である魔王を討ち滅ぼしてくれた!!この世界を代表して厚く礼を言わせていただこうぞ!!」


この世界では大国であるロゾフ王国の国王は、王座から立ち上がり、深々と礼をする。

ここは王城の大広間、謁見の間だ。

王が首を垂れるのは、5段上・・王座前には階段があり、階下には二人の男女が片膝を付いて畏まった表情をしている。

二人は勇者、そして聖女だ。

二人はこの国の人間・・いや、この世界の人間ではない。

魔王を倒すため、異世界から召喚されたのである。

なぜそんな事になったかといえば、この世界の者には魔王と対抗出来る力を持つ者がいなかったからである。

そういったわけで・・・異世界の、それも魔王に対抗出来うる力を持つ人間を召喚したわけだ。

この世界は魔法が衰退していた。

二人を召喚するために、奴隷や捕虜、罪人・・合計にして1000人!その命をもって、召喚の術を実行したわけだ。

もちろんこの世界に来た二人には内緒、極秘事項だ。


アキラとアキ。これが二人の名前だ。

14歳で幼馴染。女がアキラ、男がアキ。


訓練もそこそこに、たった二人で戦場に追いやられた。

成果は驚くべきもので、ちょっと泥に汚れた程度で帰ってきたのだ。

『まあ、勇者と聖女だ。それくらいは』

『その程度、軽くやってもらわなくては』

なんとも人の心など無い言葉がこそこそと交わされる。

感謝こそされ、こんな言葉に晒される謂れはない。

二人の従者となった騎士二人は、人々、いや国の態度に怒りを覚えるも。


「いいんだよ。ね、アキ」

「キラがそういうなら」


二人は我関せずを貫いて、戦地へと旅立つ。




こうして着々と戦果を上げ、魔王の部下と戦い続け・・




遂に魔王を討ち滅ぼし、国へ凱旋したのである。



さて時を初めに戻して・・


王の謝意ののち、魔王を滅ぼした二人を祝う祝賀会が開催された。

王は大層機嫌良く、自分の子達を呼び寄せると勇者と聖女に引き合わせた。


「勇者殿、そして聖女殿。二人に褒美を遣わそう。我が子、王太子を聖女の夫に。姫を勇者の妻に。これで我が国も安泰じゃ!」


そしてわははと大声で笑う。


「それは無理です、王」

「無理です」


勇者と聖女は苦笑する。


「な、なんだと?我が国の王太子と姫との婚姻を望まぬだと?!」

「まあ・・・無理なので」

「はい。結婚は出来ません」


王はご機嫌だった態度が一転、激怒した。


「我が王子、姫をよくも侮辱したな!!出ていけ!!」


引っ捕らえよとは言えなかった。なぜなら魔王すら倒した勇者、そして聖女だ。

まあ引っ捕らえよと言われても出来はしなかっただろうが。この場にいた騎士達はほっとしたのだった。

出て行く二人の後を、従者をしていた騎士二人が追う。





「戦いを一度でも見てればわかるのにねぇ」


アキラ・・キラが呆れた声でひと言。


「キラが勇者だもんね。姫とは結婚できないよ。女同士だしね」


アキは先ほどのことを思い出し、くすくすと笑う。


「それを言うならあんたも結婚できないだろがー。男同士だもんな」

「まあぼくは聖女ならぬ聖者だけどね」


男っぽいアキラにいつも守られていたアキ。

剣道に空手を嗜んでいたアキラ、大人しくて優しいアキ。


突然召喚され・・・気がつくと真っ白な空間にふたりは立っていた。

そこに一人の女性が現れた。


『あなた方はある国に召喚されたのです』


その女性は女神だと告げ、事情を説明してくれた。


魔王が現れると、異世界から勇者と聖女を呼ぶ世界がある。


最初は止むに止まれず、その世界の人々のためだった。


勇者と聖女を手厚く持て成し、協力して魔王を倒した。

国と勇者と聖女が一丸となって、協力して得た栄光だった。


魔王はそれで滅びた。


歓喜、高揚。

この熱い戦いの記憶を人々は忘れることができなかった。


何度も召喚され、勇者と聖女はその時『悪』と言われている『敵』と戦わされた。

『悪と戦う』事で、王は国民の支持を確保。いつしか王政の『不都合』の目眩しにも利用されることとなって・・


その世界の神は、遂に人間に愛想を尽かした。そして、魔法の(ことわり)を弱めていった。

もっと時が経てば、この世界の人間は魔法を使えなくなるだろう。

今現在、召喚の魔法が使えないというか、人の魂を膨大に使えばなんとか使える状態ではあった。

まさか、人命を・・膨大に使用して召喚の術を使うまでしようとは、神さえ予想だにしなかった。

ここまでくると神も・・・人間の浅ましさに恐怖した。

神はもうその世界にはいない。遠く旅立ってしまったのだ。


「神もいない世界にあなた方を行かせるわけにはいきません」


目の前の女神様は、元の世界に戻してくれると言う。

だが。


「行ってみたい!」


アキラは目を輝かせて言うと、


「キラが行くなら・・ぼくも行く」


アキもぼそぼそと呟いた。


女神様はやれやれと肩を少しはね上げると、もう一人神様が現れた。


「冒険したい気持ちはわかるよ。私も昔、人間だったからね」


すると二人はその国の騎士の姿に変化した。


「私たちが守るよ。楽しい冒険をしようじゃないか」

「まあ!わたくしたちはふたりを守護するのよ!冒険はあなたがしたいだけでしょう?」

「まあまあ」


二人の神様が二人同時に合掌、ぱん!と手を叩いて・・・


無事、あの国へと到着、召喚されたのだった。



「冒険はもういいかい?アキラにアキ」

「うん!まあ楽しかった・・アキはどうだった?」

「キラと一緒にいられたから・・」

「もーー!アキはーー!!」


神様の片方が、地面に魔法陣を描く。


「さあ、準備ができましたよ」

「さすがです!我が妻は本当に有能・・あてて」


もう一人の神様はぎゅっと頬をつねられたが嬉しそうだ。

4人は魔法陣中央に立ち。

ぴかっと魔法陣が光ると・・・4人はその世界から消えた。



自分達が召喚されるために1000人もの命が失われたことは、召喚の時に神様から教えられていた。

行かないで帰ったら、その魂達に申し訳ない。

アキラはそう思ったのだ。だから赴いた。

王から勇者と聖女(自分たち)(男だけど)に『戦ってほしい』と言われるのも分かっていたから驚きもしなかった。


ふたり(と神様ペア)で過ごした冒険の旅。

この世界の人間は、二人になーーーんにもしてくれなかった。お金と武器を少し渡し、『さあ行け』てなもんだ。


・・・実は。

敵である存在というのが・・魔王ではなく獣人族だった。

アキラとアキの世界にだって差別はある。姿が違うと言うだけで人間が勝手に差別し、敵対している獣人族の国を滅ぼしてくれ、って内容だったのだ。

一緒にいた神様ふたりがうま〜〜く隠してくれたので、倒した事になっているが、結論から言えば『保護』していたのだ。彼らを傷ひとつつけることはなかった。せいぜい山賊とか、悪いことをしたやつをボコったくらい。

あとは魔物、モンスターを討伐していた。

アキラとアキの境遇に甚く同情し、何彼となく世話をしてくれたので、感謝は獣人族に対して思うのみだ。

リスの尻尾は縁起物だそうで、二人にもくれた。


この世界に来て217日。

だが元の世界に戻ったら、召喚される日に帰ることになる・・そしてこの世界の冒険も、記憶から消えてしまうとの事。


「まー、消えてもいい記憶、かな」

「キラがそう言うなら」

「でもね」


アキラはアキの首に抱きついた。そして、チュ!頬にリップサービス。いやリップサービスはそう言う意味じゃない。


「アキがいてくれたから、楽しかったよ!」

「キラが・・そういうなら・・ううん、ぼくも、だよ」


プツンと音がした。ブラックアウト。




「キラ、器用だね。立ったまま寝てるよ」


アキに優しくゆすられて、アキラは目を覚ました。

手にはもこもことした手触りの・・・リスの尻尾?


「あれ?なにこれ?リスの尻尾?」

「ぼくも持ってる」

「どうしたんだろこれ」

「不思議」


じっとアキラは手にあるリスのしっぽを見つめ・・にかっと笑った。


「ま、いっか!おそろいだね、アキ!」

「ふふ。おそろいだね」


二人はすっかり忘れてしまった。


「なんか」

「?」

「楽しいね、アキ」

「え?」

「なんか・・楽しい、そんな気分」

「そう?キラが楽しいなら、ぼくも楽しい・・かな」


話しながら二人で歩いていると、塾のポスターが目に入る。


「受験だね」

「あーーーー!!どこかに消えたいーーー!!」

「どこに逃げるんだよ」

「異世界に!!」


突然、ピカッと光って。

光に二人は包まれて・・・



え?

まさか・・続くの?


それは神のみぞ知る?



end


ひさびさのなろう投稿。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ