08話 鍛錬......鍛れん......たんれん
おかーさん、おとーさん!
ぼくね!しょうらいはこのむらから出て、いろんなところを旅するんだあ!
ふふふ、そっかあ!旅に出るのね〜!お母さん寂しくなっちゃうなあ。
うん!だいじょうぶ!てがみもかくし〜たまにかえってくるよ?
くっはははっ!偶にか〜!もっと沢山帰って来ないと母さん泣いちゃうかもなー!
えーわかったよお!
あ、あとね!いつもいろんなものをもってくるおじさんみたいに、ぼくもいろんなものをはこんで、みんなをえがおにするんだあ!
あら、行商人ってことね?いろんな物と一緒に幸せも運ぶのね〜!素敵ねグレン
よっと!おー少し重くなったか?行商人かあ!夢があるなあグレン。世界一の行商人になれるぞグレンなら
ひゃはは!うん!おとーさん、おかーさんにもとどけてあけるからねぇ!ひゃはは、たかーい!
ーーーーー
ふぁあ〜と欠伸しながらグレンは今日も日が出る前に起きた。
(なんか久しぶりに昔の夢を見た気がするな〜。昔と気持ちは変わらないし、そのためにはまずこの雷光を使えるようにならないと)
いつものように広場に集まり、門から出ると鍛錬が始まっていくのであった。
グレンが街に行くためにセンと模擬戦をすると決まってからかれこれ明日で1ヶ月が経とうとしていた。
模擬戦を行う日は、グレンが話した日から1ヶ月後に決まったため、まさに明日センとの模擬戦を控えていた。
あの日から四六時中、雷光の魔力を感じ流れるように意識を向けて過ごしていた。
走り込みの最初から足に纏わせ走り出すと師範担当のもの達が口を開けびっくりしながらグレンの後を追った。日に日にスピードが上がるグレンに師範も着いていくのがやっとの者や追いつけない若い師範もいるくらいであった。
ずっと出来なかった足以外に雷光を纏わせていくことも形になってきていた。戦うことをイメージしながら独り、組手をして戦いの中で雷光を使えるように鍛錬を積むことで、より早い成長に繋がったのだった。
他にも鍛錬の中で出来そうな技を片っ端から練習し明日の模擬戦の心意気は高まっていた。
そんな様子に触発されたのか、アカシアやコウガ、ミナト、アリスも鍛錬に気合いが入り行い以前よりも早く宝具を出せるようになって来たことで、自分の力に少しずつ慣れてきたようだった。
本日の鍛錬を終えたアカシア達は広場に集まり解散となる。いつものことなのか、ここにはグレンは居ない。
「くー明日が楽しみだっ! センさんとグレン兄の戦いだからすっげーのが見れるな!」
「あはは、コウガ毎日明日のことを考えてたもんね〜」
「んだよ! ミナトも人一倍楽しみにしてたくせになあ!なーアカシアはどんな戦いになると思う?」
「んー、傍で見てきたからか最近のグレン兄は1ヶ月前に比べても相当強くなったよね。なんか休みの日もおじいちゃんのとこで特訓してるみたいだし......。けどお父さんが相手だからな......」
「アカシアはセンさんの戦い見たことあるのー?」
「昔に1度だけ、ね。家族で山に果物取りと遠足しに行った時にウルフ型の魔物が襲ってきたんだけど、その時宝具も使わずに一瞬で狩ってたから......」
「はっまじかよ! すっげーなやっぱり!」
「ふん! どうせセンさん相手なら一瞬で決着着くわよ!」
「えーアリスはグレン兄さんを応援してないの?」
「も、もちろん応援はしてるわ!けど相手がセンさんだし、」
「ふーん。けどこの1ヶ月でグレン兄のあの力にはほんとにびっくりしたよなあ。中でも走ってる時にさーーー」
模擬戦をやると決まってから1週間が決まったある日、走り込みを行っていたグレンはいつも通り足に雷光を纏い走っていた。
そん中ふと、自分自身が雷みたいになればもっと早くるんじゃないかと感じたグレンはその場に立ち止まりイメージを膨らませていった。
後ろからコウガ達が追い着きそうになった時、立ち止まったグレンを見ていると眩しい程の光を放ち出し、いつもとは違った爆音がなった瞬間、その場からグレンは消えており、その後すぐに前方から違う爆音が鳴った。
何が起こったのか理解出来ていないでいると誰かのえ?という声で意識が、音が鳴った前方に視線を向けられる。そこにあったであろう巨木の半ばからポッキリと折れており、その横に仰向けになっているグレンが居たのだった。
子供達の空笑いが流れていく。
「はは、流石に死んだと思った......。はあ〜これはちゃんと扱えるまで封印しよ」
とグレンは独りこどを呟くのであった。
「はは、あれはびっくりしたよね〜!」
「そうよ! 突然音が鳴ったと思ったら木を破壊してるし、グレンも倒れてるし」
「だね、。あんな力、弟の僕でも知らなくてびっくりしたんだから。 素振りやってる時もーーー」
いつものように鍛錬に勤しむアカシア達は、宝具を使って素振りを行っていた。少し休憩がてら、他の子供達とは離れた所で1人、組手を行っているグレンを観察する。追いつき追い越すと決めた4人はグレンを注意深く見ていると、突然以前と同様な轟音が鳴ると同時にグレンの手の平から生き物のように何かが迸っていくのが見えた。するとぶわっと辺りに光が広がり周りは眩しくて見えないほどであった。
子供達はびっくりしてざわざわしたのだが、光が収まると辺りはシーンと静寂が包まれ、子供達はあんぐりと口を開けて、ただ一点を見つめていた。
その目に映った先にはグレンの周りにはぽっかりと大きなクレーターが出来てしまっており、その中心であちゃーと頭をかくグレンが立っていた。
「あはは、あれもびっくりしたよね〜!何せ村の人も何事かって見に来たくらいだもん」
「全く、あの後出来た穴を直すのを手伝わされたし、災難だったわほんと!」
「なんか宝具を扱うことが前よりも慣れてきたからグレン兄に追いつけるかなーて思ったら、すぐ離されていつも遠い存在って感じだよ」
「グレン兄だからなあ〜、」
「そうそう。僕の父さんも言ってたけどグレン兄さん、今の僕達より小さい頃から、別格っていわれてたみたいだしね。アカシアだって僕からしたら宝具を扱うのが上手だし凄いと思うよ?」
「ふん! ほんとに悔しいけどグレンだからで納得しちゃうわね。ミナトが言った通り、私も鍛錬が始まった時には年上の子にも模擬戦で勝ってたりしてたから、そんたこと気にしたら負けよ?誇りに思いなさい、アカシア」
「うん......!そうだね、ありがとうみんな」
「うわーアリスがまともなこといってらあ!」
「うるさい!ばかコウガ!」
皆そんなグレンを誇りに思い笑いあい、明日を楽しみに待つのだった。
少し前に時間は遡り、グレンからの挑戦を聞いたセンは息子との勝負のためと他の戦士達に言って休日以外に久しぶりに休みを取っていた。
そんな長とその息子の勝負ともあり村の者もこれは観戦をしなければと休みにする者も多かった。特に戦士達は俺は俺はと休みを取ろうとするのをベテラン勢が先に休みを取ってしまったため、渋々若い者と、中堅はいつも通り仕事をする日となったのだった。
日に日に、その日が近づくに連れて村全体がどこかお祭りのような雰囲気になっている。
センもそんな村の様子をちょうどグレンの力を見せることができるという親ながらの思いもあり何も言わなかったのだった。
「なんかさ〜最近の長、気合いっていうかどこか漲ってるよな?」
「ああ、前よりも楽しそう?ていうか着いていくのがやっとだしな。グレンとの勝負が楽しみなんじゃないか?」
「なんか意外って言うかさ、父親なんだなって思うわ」
若い戦士達もセンが狩の際の戦いを見てそんな風に思っていた。
若い戦士と同様にセンと同年代のコウガやミナト、アリスの父親や母親もそんなセンをみて笑っていた。
「あのやろう、年甲斐もなくワクワクしやがってなあ!」
「そうだな、久しぶりにあんな姿を見る気がするよ」
「確かにね〜全く若い子達が着いていくやっとじゃないのさ」
「アリスからグレンの力を聞いたが、相当やるそうじゃないか。昔からどこかずば抜けてはいたが、宝具が無いグレンがどこまで戦えるのか俺も楽しみだな」
「がはは、お前らはその目で見てないからなあ!アイツは根っからの戦士だしな!宝具が出せなくて苦しんでいた時を見てきたから余計に俺はグレンを応援してるぜ、顔なんてぶっ飛ばしたら笑っちまうな!」
とギランは豪快に笑い、コウガの母親のアカネやミナトの父親であるカイト、アリスの父親のレオは感慨深いという表情で前にいるセンを見たのだった。
「おい、さっきから聞こえんてんだよ!さっさと行くぞ!」
(ちっ、まあ楽しみなのは間違いねぇがな、)
そんな様子で大人達も明日の模擬戦を楽しみにして過ごしていたのだった。
そんなやり取りが行われていたことを知らないグレンは鍛錬を終えた後にリュウゲンの所にいき明日に向けて調整を行なっていた。
「とうとう、明日じゃのうグレン。全く村の者も浮き足立ちおって。あまり気にするでないぞ?お前さんは大丈夫だと思うがのう」
「じいちゃんありがとう。あんまり恥ずかしい姿は見せれないけど、なんかいつもより落ち着いてるんだよね」
「ほっほ、それはいい事じゃのう。どれ北山に向かうとするかのう」
グレンとリュウゲンは鍛錬が昼過ぎに終わってからは、リュウゲンが何も予定が無い日に 2人で北山に行き鍛錬を行なっていた。
グレンが目を瞑りながら身体の中の雷光を流れるように意識し纏わせて行くのを見るリュウゲンは時折石をリュウゲンに投げ集中を切らすように仕向ける。
最初は避けることも出来ずに雷光も霧散してしまっていた。家に帰った時に母親のレイとエルに悲鳴をあげられる事もあった程、身体のあちこちに打撲があるほどリュウゲンの鍛錬は過酷であった。
しかし最近では避けたり掴んだり、中にはでかい石を殴り粉々にするなどの芸当も出来るようなり、集中は切らさずに雷光を纏わせ続けている。
また鍛錬が進むと、リュウゲンはグレンに家の屋根に使う瓦をもっと薄くさせた防具を特注でつくり着させた。リュウゲンが石を投げるのを瓦が割れないように防具自体に雷光で纏わせさせる鍛錬もあった。
そんな過酷な鍛錬をひたむきに行なってきた姿を見続けたリュウゲンも曾孫の成長を自分のことのように喜び、年甲斐もなく明日の模擬戦を1番楽しみにしていた1人であった。
「ふー。もう無理......」
「ほっほ、良くここまでやってきのう。こんな鍛錬をするのはお前さんが初めてじゃよ。今日はここまでにして明日に備えるのがよい」
その場で倒れ込みはぁはぁと息をするグレンはこれまでの鍛錬を思い出し、どっと余計に疲れが蓄積したのを感じたのだった。
家に帰るとバタバタと近寄りエルが入念にグレンの身体を見る。リュウゲンとの鍛錬が始まってからというもの、こうしてチェックするのが日課になっていた。
「うん。きょうもだいじょうぶね!」
「エル、そんな心配しなくても大丈夫だよ?」
「むー!」
「おかえりなさいグレン。あんな傷だらけで帰ってきたのはどこの誰だったかしら?心配よね、エル」
「そーだよ!ぐれんおにいさまがわるい!」
「いや、あれは、ごめんなさい。エルもごめんよ」
「ふふ、ご飯食べて今日は早く寝て休んでね??」
「ありがとう母さん。」
その後いつものように過しベッドに布団に入るとすぐに眠りについた。そして鍛錬を行う夢を見るのだった。
「鍛錬......鍛れん......たんれん......」
当日の朝。
グレンを含め鍛錬の一環として、模擬戦の見学のため子供達も休みであった。
ふぁーと大きな欠伸をしながら、いつもより遅い時間に起きたグレン。
(はあーとうとうこの日が来た......)
少しの緊張があるものの、それよりも父親にどれくらい立ち合えるのか、それの方がグレンの中では大きかった。
広間に行くとご飯の用意をレイとエル、アカシアが行っていた。
「おはよー!ぐれんおにいさま!いっぱいねたねぇ〜!」
「ふふ、エルは今日はゆっくりグレンを寝させてあげようと起こしに行かなったのよ、ね、エル」
「うん!きょうはぐれんおにいさまのだいじなひだから!」
「どう?調子は?まあグレン兄、ゆっくり寝てるくらいだから大丈夫そうかな」
「久しぶりにこんな時間に起きた気がするよ」
「まえは!ちかこくのじょうしゅうはんだったもんね!」
天真爛漫にいうエルにグレンは頭をかきながら苦笑いするのであった。
「よし。ご飯にしましょうか。エルリュウゲンお爺様を呼んできて?アカシアはお父さん庭から呼んできて?」
「あれ、父さん庭に行ってたんだ」
「そうだよー、僕なんかより早く起きて庭で身体動かしてたみたい!」
「ふふ、グレンよりそわそわしてたみたいよ?」
「ふーん、そーなんだ」
そこにリュウゲンと庭から広間に戻ってきたセンがやってきた。レイの言う通りセン狩りの仕事と同じ時間に起きてしまうほど、グランよりもどこかそわそわしていたのだった。そのため早くから庭で身体を動かして準備を行っていたのだ。
「ほっほっほ、センもグレン体調はどうじゃ?」
「ああ、いつも通りだな」
「うん、俺もー」
「そうか、今日は儂が審判をするからのう。よろしく頼むのう」
「えー!おじいちゃんがするのー?」
「そうじゃよ〜、家族のもんがこういう時は審判をやるのがしきたりじゃなあ。ほっほ、昔は人がいっぱいいたからのう、よく模擬戦をやっておったのう」
「へーそうなんだ。これからは一族で誰が強いかとかやればいいのに。年の終わりとかにさ、そしたら俺より年下の子も大人ももっとやる気が起きそうだけどなー」
「えー!僕もやってみたい!なんか子供と大人でわけて!どう?父さん?」
「まあ、悪くないな。だが山の巡回をしないと行けないからな。その巡回にあたった戦士のやる気は下がるな」
「んーそうだよねぇ〜。そんな行事があったら楽しそうだけどね」
「そうじゃのう。悪い話ではないのう。少なかった一族の者も少しづつ増えてきておるから、今後は検討してみても良さそうじゃのう、のうセンよ。やるとなったら儂も出ようかのう」
「まあな、一族のもんが聞いたら全員がやると言うだろよ。じいさんが出たら骨折れちまうぞ?」
「ほっほ、まだ若いもんには負ける気はないのう。」
「えー!おじいちゃんでるの??おとうさまがいったようにけがしちゃったらやだよ?」
あー若い人の骨が折れるだろうな〜と独りグレンは思うのだった。
ご飯を食べ、それぞれ思い思いに過ごしているうちに、10時を過ぎていた。
センがそろそろ行くぞと声をかけ家族総出で村の広間に向かう。道中で村の物からおーい!頑張れよお!や後で絶対見に行くからな!と激励が飛んできていた。
広間に近づくにつれガヤガヤと喧騒が大きくなっていき広場が見えるとそこには大勢の村の人々が集まっていた。中には長椅子を待ってきており後ろの者も観戦出来るように準備されていた。
グレン達一行が見えると、広場ではおーと喜びを上げていた。
「おーやっときたかあ!今日の主役が来たぞお!」
おーー!
「この村の長とその息子の一騎打ちだ!」
うおーー!
(ちっ、ギランめ、煽んじゃねぇよ、ほんとに戦闘狂の一族だな)
センはあらためてそう思うのであった。
「はは、凄いね。グレン兄......」
「ああ、なんか祭りみたいでいいな」
「ほっほっほ、グレンは余裕じゃのう。」
広場の中心にいくとその周りに一族の者が囲んでいた。前の方に戦士達が等間隔で座り、万が一に備え壁役になっていた。
その後ろに座っている者、またその後ろに長椅子で見ている者と観戦の準備は万端であった。
広場の端では屋台のような者が数店並びお祭り状態の有様になっていた。長椅子も鍛冶場の者が前々からこの日のために作っていたのだ。それほど村の者は今日を楽しみにしていたのだった。
「よし! そしたら長老と長から一言づつもらおう!」
半ば司会役のようにギランが仕切り、辺りはさっきの喧騒からしんと静寂に変わった。
「ほっほっほ、みんなよく来たのう。こんな村の者が集まるのも最近は一切なくなったから、儂らの家の事だが集まってくれて何より嬉しいことじゃ。グレンは自分の親に挑む勇気があって決まったことじゃから、どんな結果になろうが暖かく見守っておくれのう」
「みなよく来てくれた。今回、グレンと戦うのには理由がある。ただ挑むのではこんな大事にはしないならな。まずみなも分かっている者もいると思うが、俺の息子のグレンは宝具を今後も化現させることはできない」
本当かよ......
え、?そんな事あるの?
やっぱりそうなのか......
長の息子なのにか、?
「だまれっ!! 長が話してるだろうが!」
と次第に大きくなる声をギランの一喝でまた落ち着きを取り戻していく。
「びっくりするのは無理もない。ここにいるもの達は今までで初めての事だからな。宝具は我らの誇りである。それはその者の心から造られるものだからだ。しかし、今皆が持っている宝具が消えたとして、その者に心は無いのか?戦士としての誇りはないのか?」
「そんなことはねぇ!例え宝具が無くても俺は戦う!」
「僕も!みんなを助ける心がある!」
「私もよ!!宝具が無くても誇りと心はいつもあるわ!」
と前に座っていたコウガ、ミナト、アリスが声を1番に上げた。そんな様子を隣で見ていた親たちは子供の成長と声を出した勇気に嬉しくなった。
「よく言った!その通りだ。それを一族の者として忘れてはいけない。それをグレンが俺に教えてくれた。今日この勝負で、皆にも教えてくれるはずだ。その目で確かめてくれればと思う。俺も本気でいこう!」
(父さん......。ありがとう。俺の精一杯を伝えるよ)
「うむ。それでは両者立ちあえ!」
「はじめっ!!」