第9話 タケノコクエスト
タケノコ共和国
見かけは竹やぶに囲まれたレンガ造りの集落であるが、大戦時に各国から逃亡した優秀なハッカー達によってコンピュータが発達した経由があり、実体化プログラムの技術によって生計を立てている。
大国である東の帝国と悪逆非道で有名なネグソゴソド王国に隣接しているが、干渉国としての役割を持ち、大国からも独立を保証された小規模国家である。
エビ怪人「ご主人様、起きてくださいエビ!」
気を失ったモットが目を覚ますと、そこは47番駐屯地の医療所だった。あれからモット団一行は何とかここまで辿り着き、負傷者の治療を行っているそうだ。
モット「こちらの被害は?」
ギルドソルジャー「負傷者31名、心肺停止36名のうち19番名が蘇生に成功、残りは蘇生不能でロスト致しました。ロストに幹部は含まれておりません」
モット「そうか、亡骸をモトマチに転送して埋葬しておけ」
ギルドソルジャー「了解いたしました」
ウオヘイ「モット君、意識を取り戻したみたいだね。たった今収集品を売ってきた所だ」
モット「いくらで売れた?」
ウオヘイ「計算中だが今回の遠征の元は取れている黒字だよ」
モット「良かった。所で昨日の件は?」
ウオヘイ「駐屯地管理人にはどこかのハンターに魔物の群れを押し付けられたって報告しておいた。安心してくれ」
モット「何とか丸く収まってよかったな」
エビ怪人「ご主人様、魔界Cでの狩りはいかがいたしますエビ?」
モット「そうだな、遠征はここまでにしておくか。準備ができた者から撤収だ」
魔界Cに来たモット団は回復を終えたメンバーからモトマチシティーに転送で戻った。後処理の為に最後まで残ったモットはエビ怪人、ウオヘイ、ギルドソルジャー3名のPTでモトマチシティーに戻ろうとした。
モット「モトマチシティーも含めて転送先リストが消えているぞ!?どういうことだ?」
エビ怪人「システムの異常エビか」
ウオヘイ「連絡窓口も応答がない、何があったんだ?」
モット「本社への転送はまだ使えるみたいだ。直接クレームを言いに行ってやる」
モットのPTはタケノコ転送サービスの本社に転送で飛んできた。ここはガトリング半島の山岳部にある小規模な独立国家【タケノコ共和国】で転送サービスはこの国の国営企業である。
本社1階の転送設備からモット達が現れるとフロアの端に固まっていた本社職員の1人が話しかけてきた。
タケノコ職員「お客様、ですね!?」
モット「そうだ、帰り先がなかったのでクレームを入れに本社まで飛んできた。一体何があったんだ?」
タケノコ職員「実は…」
転送サービスの職員は強盗に押し入られたと説明した。職員や関係者は1階へ逃れたが出入口を閉じられてしまい、転送装置での脱出も試みたが強盗団によってシャットダウンされていることに気づいて外からの助けを待っているところだった。
タケノコ職員「まさか、強引に転移してこられるお客様がいるとは思いませんでした」
???「なかなか度胸のある冒険者PTではないか」
タケノコ職員「首相!?」
タケノコ首相「本社に用心棒を雇うべきだった。強盗団が私の護衛に化けているとは思わなくてな」
モット「僕らは怪人ギルドモット団のPTだ」
タケノコ首相「モット団?聞いたことはないね。まだ未承認か…」
モット「これから有名になるんだ!依頼なら受ける」
タケノコ首相「ないよりマシか、秘密情報もあるので事件を早急に解決したい」
モット「もし事件を解決したらギルド承認と信用度アップをお願いできる?」
タケノコ首相「お安い御用だ」
モット「皆聞いたか、早速2階に突入するぞ」
タケノコ首相「気を付けてくれ、奴らは姿を消せるスキルを持っている。手裏剣も投げてくるぞ」
ウオヘイ「手裏剣!?」
エビ怪人「まさかエビ」
モットのPTはタケノコ本社の2階のフロアに突入した。このフロアは本社のセキュリティを管理している。うまくいけば1階の人々を逃がすことができる。
赤忍者A「人質共、1階にいろと言ったであろうが!」
赤忍者B「からし丸が見張っておかなかったせいでニンニン」
モット「やっぱ忍者の仕業か!!」
赤忍者C「あ、お主らは何時ぞやの…」
タケノコ本社を占領したのは以前戦った忍者だった。赤忍者達と戦闘になった。
モット「くっ、設備を壊してしまうから水浸しにはできないぞ」
ウオヘイ「任せてくれエンチャントウォーター!!」
エビ怪人「これなら有利に戦えるエビ」
赤忍者B「舐めるな、こっちは5人われらの技をとくと見よでニンニン」
水属性の付与を受けたモットのPTは赤忍者の集団を簡単にぶっ飛ばした。
赤忍者A「ぐはぁ!」
赤忍者D「回復の巻物!」
赤忍者E「先輩、我らには不利な相手ですぜ。上の階のサメ丸さん達と合流を!」
モット「待て、逃げるな!」
赤忍者達を追って3階へ向かったモット達は見えない何かから攻撃を受けた。
エビ怪人「痛っ、手裏剣が」
モット「ギルドソルジャー共、盾を構えろ」
ウオヘイ「見えないスキルを使う忍者だ」
モット「くそっ、心眼スキルさえあれば…」
赤忍者A「どうだ、仲間の青忍者は姿を消せるんでい!」
青忍者A「敗走した赤忍者は黙っておれ!」
モット「魔法でまとめてぶっ飛ばしてやりたいが、このフロアの設備も壊しそうでできない」
エビ怪人「ご主人様、私の後ろへ。槍ぶん回し!」
青忍者B「拙者達の光学迷彩の術には歯が立つまい」
青忍者C「風馬手裏剣でとどめを刺してやるぞよ」
モット「(光学迷彩?)」
モット「これでどうだ。シャドーミスト!!」
エビ怪人「黒い霧のお陰で敵の動きが少し見えてきたエビ」
青忍者A「何だと!!」
モット「光を遮って対象に纏わりつくデバフ魔法だ」
エビ怪人「槍ぶん回しエビ!」
青忍者B「ウボァ!!」
青忍者A「作戦変更、例の部品は奪った。逃げるぞよ」
モットのPTに追い詰められた忍者達はタケノコ本社の屋上へ向って、用意しておいたグライダーで飛び去った。
モット「待てー!」
ウオヘイ「ひとまず人質を解放して後を追いかけよう」
モットのPTはセキュリティを解除して1階のタケノコ首相達に事情を説明した。
タケノコ首相「機密部品を盗まれただと!?」
モット「奴らの飛んで行った先が分かれば」
タケノコ職員「盗まれた部品は特殊な電波を放っています。しばらくは追跡が可能です」
モット「現在の位置は?」
タケノコ職員「西の国境へと向かっています」
タケノコ首相「しめた、西の国境は谷の間の一本道だ」
タケノコ職員「近くに川が流れているのでボートで下れば間に合うかもしれません」
タケノコ首相「用意させる、すぐに向かってくれ」
モットのPTは大きめのボートに乗り込んで川を下った。
ウオヘイ「エビ怪人、協力してくれ。水魔法:ジェット水流でボートを早めるんだ」
エビ怪人「了解エビ」
ウオヘイとエビ怪人の活躍によってボートは西の国境に先回りした。
赤忍者A「帝国領へ急げ、この部品だけでも届ければお偉いさんから褒美が…」
モット「待ち伏せだ!!」
青忍者A「なぬーっ!」
赤忍者A「しまた、先ほど川を下っていたボートはでめえらだったか」
赤忍者B「しかし、西の国境付近には強力な味方が待機しているニンニン」
忍者達は持っていた筒に点火して黄色い狼煙を揚げた。すると帝国領の方から何者かが走ってくる。
黄忍者「アタイ等をお呼びかい?」
モット「黄色の忍者はくのいちなのか」
青忍者C「クククッ、それだけではないぞよ」
黄忍者の後ろから付いてきた謎の人物がマントを取った。その姿にモット達は驚いた。
モット「なんじゃこりゃ!?」
ウオヘイ「これって、おでんの…」
赤忍者A「我等の頭領が忍びの気で作り出した忍術魔人」
黄忍者「こんにゃく魔人よ!」
こんにゃく魔人「にゅろーん!!」
黄忍者「忍法分身の術!」
モット「怪人!?待ち伏せのつもりが挟み撃ちになったか」
黄忍者「喰らいな、分身かまいたち!」
こんにゃく魔人が熱気を帯びて突撃してくる。それに合わせて刀を抜いた黄忍者と分身は一斉にかまいたちを放ってきた。
モット「エビ怪人、こんにゃく魔人の相手をしてくれ。他は雑魚忍者から蹴散らすぞ」
ウオヘイ「ジェット水流!!」
赤忍者C「ぐおお!」
青忍者A「広い場所なら闇の霧を避けられる。忍法光学迷彩の術!」
モット「青忍者には植物魔法を試してみろ」
ギルドソルジャー「了解しました。プラント!」
モットはギルドソルジャーにオート魔法杖での植物魔法を命じた。杖から召喚された葉っぱが青忍者達に纏わりついて爆発した。
青忍者B「ぐふぅ!」
モット「姿を消せても植物魔法は吸い寄せるようだな」
黄忍者「だったらアタイの分身は弱点属性でないと倒せないよ!」
ギルドソルジャー「黄忍者達にはファイアもウォーターも効きません」
ウオヘイ「かまいたちを防ぐのがやっとだ」
一方、こんにゃく魔人と戦っているエビ怪人は苦戦を強いられた。
エビ怪人「槍での突きが受け流されるエビ」
エビ怪人「蟹光線エビ!」
こんにゃく魔人「ぶよぶよ」
エビ怪人「弾かれたエビ」
モット「ウオ君、エビ怪人の援護を」
ウオヘイ「分かった。兜割り!」
ウオヘイは斧で勢いよくこんにゃく魔人を殴ったが傷つけることなく跳ね飛ばされた。
ウオヘイ「ぬわっ!」
モット「攻撃を受け流したり弾いたりするのが得意な怪人だな」
黄忍者「よそ見をしていていいのかい?」
モット「一か八かでダークネスバン!」
黄忍者「効かないよ」
モット「だったらこれだ。ロックポール!」
闇魔法を分身で防いだ黄忍者だったが、続けてモットが出したロックポールは避けれずに打ちのめされた。
黄忍者「うぎゃーっ!」
モット「黄色は地面に弱かったのか、次はこんにゃく魔人だ」
忍者達を倒したモットのPTはこんにゃく魔人に集中攻撃を行ったが、どれも効いていない。こんにゃく魔人は口から熱湯を吹いて反撃してきた。
モット「熱っ、闇魔法で腐らせることができると思ったのに…」
ウオヘイ「この怪人は装束の弱点とは違うみたいだ。おでんの弱点は何かないか」
モット「冷めたら不味いとか」
エビ怪人「氷属性の魔法エビ!」
ウオヘイ「しかし僕らには氷魔法が使えるメンバーはいない」
エビ怪人「魔界Cで水魔法を使ってた時、少し冷たくできたエビ」
モット「水魔法と氷魔法の両特化は珍しくない。出せるかもしれないな」
エビ怪人「むーん、アイス!アイス!アイス!アイス!」
ウオヘイ「何も出ないか…」
赤忍者A「この隙に、ここは任せたぞ。こんにゃく魔人」
エビ怪人が氷魔法を出せないでいると起き上がった忍者達は逃げようとした。
モット「逃がすか。蟹光線をお見舞いしてやれ!」
エビ怪人「蟹光線!!ってあれ?」
蟹光線を撃とうとしたエビ怪人は謎の光線を放って忍者達の足元を凍らせた。
モット「それだ!今度はこんにゃく魔人を狙え」
エビ怪人「冷凍蟹光線!!」
こんにゃく魔人「ぶにょにょーっ!」
エビ怪人の新スキル:冷凍蟹光線を浴びたこんにゃく魔人は砕け散って爆発した。
黄忍者「こんにゃく魔人がやられるなんて…寒い」
赤忍者A「ヒエッ!氷漬けだけは勘弁してくれ」
モット「盗んだ部品を返せば逃がしてやる。つんつん!」
青忍者A「分かった、分かったから氷を解いてくれ!」
盗まれた部品を取り戻して忍者達は約束どうり逃がしてやった。タケノコ本社へ報告へ戻ると首相一同から礼を言われた。
首相との約束通りにタケノコサービス信用度のランクを上げてもらい、タケノコ共和国からのギルド承認を受けられた。
用を終えたモットがPTメンバーと共にモトマチシティーへ戻ろうとするとタケノコ転送サービスの役員に呼び止められた。
タケノコ役員「お待ちください。こちらはほんのお礼です」
モット「コレはギルド端末!」
タケノコ役員「最新型の機種でございます」
ギルド端末とはタッチ操作でギルド情報を扱える通信機器で、マスター用とメンバー用がある。マスター用のギルド端末はギルドのメンバー登録や資金運用を簡単に行える。
モット「左腕に装着しとくか、これでリッチなギルドマスターになった気分だ」
タケノコ役員「端末損失時のデータバックアップサービスは無料でございます。なお、メンバー用は他社製品でもご使用になれますが、是非とも当社からお買い求めください」
モット「いいものを貰った。タケノコさんありがとう!!」
タケノコ役員「他に何かございましたらその端末でのご連絡か、当社までお越しください」
ギルド承認によりモット団は正式なギルドとして活動範囲を広げ力を付けていった。しかし、名声が上がったことによって恐れていた事態が訪れる。