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第8話 魔界遠征

魔界

 太古の昔に平行世界として分裂した異世界で魔族やモンスターが住まう。次元の裂け目が生じた特定の場所により移動が可能。3つの魔界は難易度によってA・B・Cと名付けられていて、いずれも人間の居住地域がある。

 魔界Aは多くの強力な魔王により戦国状態となっている。魔界Bは鳥の魔王によって治められ人間とも友好関係を築いている。魔界Cは魔王がいるとされるが詳細は知られていない。最も難易度が低く、大手企業によって冒険者の娯楽地域として開拓が進んでいる。


 モット団の本部の砦、呼び出された幹部達はモットの提案を受け入れた。まずは転送サービスを用いた遠征先はどこにするか話し合った。


ミニン「私は行くつもりはないが、参加者全員の難易度に適した広大な場所がいいのでは?」


モット「だったら転送先にある魔界とかに行こう」


 この星で確認されている異世界には天界と魔界がありそれぞれ3つずつ存在する。そのルートは一部の冒険者サービス企業によって独占されている。


 また、他のパラレルワールドや地底界もあるらしいが、正確なルートは発見されておらず、天界も天使に認められた者しかアクセスできない。すなわち冒険者が狩りに向かうことができる異世界は魔界のみである。


幹部見習い戦士「いきなり魔界ッスか!?」


幹部ロボットガンナー「魔界Aだけはやめた方がいいシェラ」


幹部見習い魔法使い「あの三賢者の2人から聞いたが、魔界Aは魔王同士の覇権争いが激しくなって、2人の故郷の開拓村が滅んだそうだ」


エビ怪人「そこはハードルが高いですエビ」

 

ウオヘイ「それなら、魔界Cはどうだろう?そこなら難易度が一番低く、冒険者サービス企業によってある程度の管理もされている」


モット「大人数の転送費用が割引できるな。そこにしよう」


ウオヘイ「ちょうど小生もそこへ行きたいと思っていた。PTに参加させてもらえないか?」


モット「確かウオ君は僧侶系の冒険職だったな、回復が使えるメンバーは貴重だ。是非参加してくれ」


幹部見習い戦士「ギルドマスターが言うなら従うッス」


幹部見習い魔法使い「もう巨大人食い花は勘弁して下さいよ」


モット「遠征先は魔界Cで決定だ。メンバー編成と物資のリストを作るぞ」


 こうしてモット団は遠征準備を整えて魔界Cに出発した。遠征メンバーは108人で雑用のスケルトンも荷物に押し込んで連れて行った。転送先は魔界Cの47番駐屯地で大手冒険者サービス企業によって管理されている。


駐屯地管理人「いらっしゃいませ!ご予約にあった団体様ですね」


モット「僕が代表だ」


エビ怪人「団体?」


ウオヘイ「有力な都市や国家の承認を受けてないギルドは非公式の団体扱いなのだよ」


駐屯地管理人「活動可能エリアと駐屯地の施設についての説明を始めますのでよくお聞き下さい」


モット「よろしく頼む」


 ギルドマスターのモットは駐屯地管理人から説明や注意事項を受けた後に誓約書へのサインを終えて駐屯地を見回った。酒場、宿屋、鍛冶屋、治療所、収集品の換金所等の設備が揃っている。


エビ怪人「他の転移サービスの出張所や装備のレンタルも行っているエビね」


モット「学生の時に来た19番駐屯地と違ってここはかなり充実しているな」


駐屯地管理人「19番駐屯地ですか?そちらは現在ある国の要人の方に貸切られております。現在は立ち入りできません」


モット「権力があれば魔界の土地も買えるのか。うらやましい」


ウオヘイ「モット君、早速出発してもらえないか?」


モット「そうだったな」


 モットは108人編成の遠征PTと荷物持ちのスケルトン30体を率いて駐屯地を出発した。


ウオヘイ「目的地が転送先から近くて良かった。半日もあればそこに着く」


モット「ではその付近に野営地に狩りを行うか」


エビ怪人「そう言えばこの地図にある立ち入り制限区域とは何エビか?」


モット「強すぎるモンスターでも出るんだろうか、近づかない方が無難だな」


ウオヘイ「…」


 モット達は魔界Cの荒れ地を進んだ。魔界Cの陸地は人間界の全陸地の3分の1未満の広さしかなく、南側に寄っている。


出現モンスター


人食い花 魔界にも多数生息する

ホーミングジェル 熱を食べるノリゴケの仲間、小さい火の玉を飛ばしてくる

ボコボコ コトコトの変異種、炎を纏った怪鳥の雛

ヒエヒエ コトコトの変異種、氷を纏った怪鳥の雛

おばけマント 布に霊体が宿った魔法生物

ベビードラゴン ドラゴンの幼体、育つ環境で属性や姿が変化する

トカゲ人 人型の爬虫類、武装する知能はある


 途中で遭遇したモンスターとの戦闘を数回終えたモット達は立ち入り制限区域の見える高台に差し掛かった。


モット「ん?あんなところに村がある」


エビ怪人「よく見ると廃墟みたいエビ」


見習い戦士幹部「人がいる。魔族だ!」


 廃墟のような村に魔族を確認したその時、その魔族は突然血を吹いて倒れた。


モット「何だ!?」


エビ怪人「冒険者のPTが魔族の村を襲っていますエビ」


ウオヘイ「あれが魔族狩りだよ。魔界Cでは珍しくない」


 ウオヘイの話こよると、この魔界にはジャドプターと呼ばれる人間との混血魔族が多数住んでおり、彼等は上級魔族からの迫害や奴隷の扱いを受けており、時には裏取引した人間のハンターによって狩り等の対象として弄ばれているそうだ。


モット「相手が人間でなければ何をやってもいいということか」


ウサギ獣人姉「あわああ」


ウサギ獣人弟「姉者見るな、迫害を受けてきたトラウマが!」


ウオヘイ「気分を害する前に先を急ごう」


 高台を下ると海沿いの道に出た。その道を進むと廃墟となった漁村に辿り着いた。


ウオヘイ「着いた。ここは小生の故郷だった」


モット「ってことはウオ君は魔族だったのか?」


ウオヘイ「先祖はこの魔界に追放された人間で半魚人達の村に受け入れられたんだ。小生はその末裔にあたる」


ウオヘイ「ここは人間に真珠や珊瑚を提供することで存続してきた村だったが、十数年前に…」


モット「さっきみたいな魔族狩りで滅ぼされて、モトマチシティーに逃げ延びたのか」


ウオヘイ「付き合わせてすまない。どうしても故郷に眠る仲間の供養がやりたくて」


モット「気にするな、もう仲間じゃないか!」


 モットはこの村の隣にキャンプ地を設置すると野営を行った。翌日、遠征による部下の育成と狩りを始めた。この付近に詳しいウオヘイの案内で適正モンスターのいるエリアへと進んだ。


エビ怪人「この難易度ならギルドソルジャーの皆にもいい練習になりそうですエビ」


モット「あの狩り方を試すとするか。魔法杖PTは後方、銃撃PTは左右に展開して待機しろ」


 モットは複数のPT周囲に待機させ、自分のPTでモンスターをかき集めて待機させた味方の正面まで誘導した。そして、あらかじめ待機させた部下達に加わるとモンスターの群れに向かって一斉攻撃を命じた。


幹部ロボットガンナー「一方的に銃を撃つのは楽しいシェラ!」


ウサギ獣人姉「喰らいな、モンスター共!!」


幹部見習い魔法使い「魔法三弾撃ち始め、ファイア!!」


モット「撃ち方止め!近距離PTは前進せよ」


幹部見習い戦士「こりゃ楽だ!」


モット「どうだ、これが釣りによる集団狩りだ」


ウオヘイ「ふむ、なかなか考えるね」


エビ怪人「しかしこれってエビ…」


モット「スケルトン共、収集品を回収しろ」


 モットはこの戦法でエリア内のモンスターを3日間にわたって狩り続けて大量の収集品を得た。


ギルドソルジャー「ギルドマスター、収集品がもう一杯でこれ以上は運びきれません」


モット「47番駐屯地に引き上げて売りさばくか」


 魔界Cに来て4日目の午後、モットは収集品を部下達に運ばせてその護衛にあたった。来た道を引き返して立ち入り制限区域の近くに差し掛かった時、事件は起きた。


ウオヘイ「誰か走ってくる、魔族の人々だ」


モット「待て、攻撃するな」


 魔族狩りから逃げてきた魔族達は多くのスケルトンを従えたモットの一行を仲間と勘違いして近づいてきたらしい。傷の手当と食料を分けてくれたモット達に礼を言うとそのまま去っていった。


モット「仲間の村にたどり着けるといいが」


ギルドソルジャー「ギルドマスター、今度は冒険者です」


幹部見習い魔法使い「数は30人ほどいます」


ハンター弓使い「ちょいとすいません団体さん、この辺りで人の形をした化け物は見ませんでしたかねえ?」


ウオヘイ「(お前らだ!)」


モット「知らんな、誰も見ていない」


ハンター戦士「本当か?今俺達は魔族の村で死体の山を築くゲームをやっているんだ。邪魔すると痛い目にあうぞ」


ハンター超術師「よく見たら獣人がいるわよ。もしかしてグルなんじゃない?」


モット「うちは怪人ギルドだ。仲間になればあらゆる種族を歓迎する(魔法少女を除いてな…)」


ウオヘイ「そうだ、いちゃもんはやめろ!」


ハンター錬金術師「おやおや、魔物血族者の反応が目の前に2人ありますね」


ウオヘイ「しまった、奴らの索敵で…」


モット「(2人?ウオ君とエビ怪人のことか?)」


ハンター弓使い「成程、魔族共が底辺冒険者を護衛に雇ったに違いない」


ハンター戦士「数で勝てると思うなよ、やっちまえ!!」


 魔族ハンター30人と戦闘になった。


エビ怪人「蟹光線!!」


ハンター超術師「すごいビームねエビの半魚人さん、でも残念」


モット「蟹光線を捻じ曲げやがった」


ハンター戦士「オラオラ、避けてみな」


 ハンターの戦士は斬撃を飛ばしてモット団のギルドソルジャーを切りつけた。


ウオヘイ「ヒーラス!」


モット「喰らえ、ダークネスボン!!」


ハンターギルドソルジャー「ぐはっ!」


モット「銃と魔法で応戦しろ撃ち方始め!」


ハンター超術士「させないわよサイレンス!!」


ハンター錬金術師「銃弾はお任せを、身代わりデコイ!」


幹部ロボットガンナー「弾丸が吸い寄せられるシェラ」


ハンター弓使い「クラスターアロー!」


 ハンター達のリーダーが放った矢は無数に分裂して降り注いだ。


モット「急いで盾を上に構えろ!」


ギルドソルジャー「うわぁ!!」


エビ怪人「相手の連携が強力すぎて反撃できる隙が無いエビ」


ウオヘイ「こいつ等は本気でこちらを皆殺しにする気だ」


モット「(魔族の村のように一方的にやられるわけには行けない。ん、そうだ!)」


 モットはある作戦をひらめいた。


モット「ウオ君、エビ怪人、悪いが少しこの場で耐えてくれ!」


エビ怪人「了解エビ!」


モット「僕が戻ってきて、合図したら例の戦法だ。いいな?」


 モットはウオヘイとエビ怪人に戦闘の指揮を任せるとスケルトンを盾に戦闘を離脱した。


ハンター戦士「ハハハッ、お前らの親分は仲間を置いて逃走か」


ハンター超術士「無様だねえ、後で探し出して貼り付けにしてあげる」


ハンター錬金術師「勿論皆さんもご一緒にどうぞ」


ウオヘイ「全員盾を持って回避行動、モット君を信じるんだ」


エビ怪人「了解エビ」


 残ったモット団のPTは陣形を保ちながらハンターPTの攻撃に耐えた。その頃モットは大急ぎで近くにあるハンターに襲われた魔族の村を訪れた。


モット「思った通りだ、肉が残ってるのは闇魔法で腐敗させてと…」


 辺りが薄暗くなった。モット団のPTは実力差の違う相手からの攻撃を何とか耐え忍んでいた。


ウオヘイ「戦闘不能は何人だい?」


ギルドソルジャー「36人です」


ウオヘイ「回復や蘇生魔法の連発でマナが付きてきた。ミニン君のSPポーションはもう切れたしそろそろ危ないな」


ハンター弓使い「避けるのだけはうまいやつらだ。じわじわと弄ってやれ」


ハンター戦士「それにしても魔族に逃げられた腹いせに底辺ギルドをPKするのは楽しいぜ」


ハンター超術士「フフフッ、ここは法の通じない魔界。管理企業に金さえ払えば何をやってもお咎め無しよ」


ハンター錬金術師「人間界のダンジョンでも似たようなことはやりますけどね」


ハンターギルドソルジャー「ん、何だか物凄い腐敗臭がするぞ」


モット「待たせたな、突撃だ!!」


 モットは魔族の村で調達したスケルトンを数百体従えてハンターPTの背後から突撃した。さらに強烈な腐敗臭に釣られて多くのモンスターを引き付けてきた。


ハンター弓使い「アイツ正気か?」


ハンター戦士「トレインだと!?」


ハンター錬金術師「こ、こっちに向かってきます!」


 突然の奇襲によりハンターPTはモット団の側に追われるように走り出してきた。


モット「今だ、いつもの陣形で狩りをやれ!!」


エビ怪人「撃ち方始め!」


 モットの合図によりモット団の全員は狩りの時の陣形を組んだ。遠距離PTによる魔法と銃撃による集中砲火が混乱に陥ったハンターPTを襲った。それが終わると今度は近距離PTの突撃が行われ弱り切ったハンターPTは蹂躙された。


 ハンターPTを追い込んだ腐敗臭を放つスケルトンとモンスターの群れは左右に分かれて去っていった。戦闘が終わるとモットの姿は無く、代わりに岩の柱が佇んでいる。

 

エビ怪人「ご主人様…」


モット「ロックポール解除!」


ウオヘイ「魔法で出した岩の中に隠れていたのか」


モット「何とか勝利したぜ。負傷者の手当を…」


モット「それと、荷物と取集品を回収しろ急いでだ」


ハンター弓使い「待てよ、よくも俺達をトレインで轢いてくれたな…」


モット「スケルトン共、こいつ等の装備を奪っていけ!」


ハンター弓使い「覚えてろよネクロマンサー、このままじゃ済まないからな」


モット「生きていたらな、早く逃げないと囮のスケルトンが戻ってくるぞ」


ハンター超術士「何で…すって!?」


モット「素材は貴様らが殺した魔族の死体だ。有効利用させてもらった」


ハンター錬金術師「うぐっ、どうかお慈悲を…」


ハンター戦士「死ねーっ、ネクロマンサー野郎!!」


 ハンター戦士が最後の力で起き上がりエビ怪人に肩を支えられたモットを短剣で刺そうと突っ込んできた。それに気づいたエビ怪人は槍を投擲してハンター戦士の心臓を一突きした。


モット「これが慈悲だ。それに僕はネクロマンサーではない、闇の勇者だ…」


 そう言い放つとモットは気を失った。残ったモット団のメンバーは指示どうりに負傷者と荷物を回収してその場を後にした。


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