第6話 結成モット団
モトマチシティー
辺境に栄えた農村都市、モットの生まれ故郷で名前の由来となった。ある義勇軍が大戦中に使っていた砦の廃墟がある。
じゃしん家
モットの実家、遠く離れた騎士の王国に分家もあった。本来は姓を持たなかったが、曾祖母によってじゃしんと名乗るようになった。モットが5歳の時、ある事件によりモットを残して全滅した。
エビ怪人、ミニン、元囚人400人、スケルトン数十体を率いてモットは故郷モトマチへ帰郷した。ここはかつて農業が盛んな辺境の都市で大戦前には周囲の都市に農産物を供給して潤っていた。だが、大戦の影響で食料需要が減り一気に衰退してしまい、領土拡大を進める有力都市からも見放された。
現在は夜逃げした役所に代わって地元の青年団により自治が行われている。引退した冒険者や都市を追われた移住者を受け入れたことで人口を維持しているが、多くの若者は冒険者等を目指して去っていくので消滅も時間の問題だった
モットの一団は商店街に向かった。青年団に事情を説明して協力を得ようとした。しかし、商店街はモットが率いる異形の集団を見て騒然とした。そして、治安維持にあたる青年団がモットの前に現れた。
青年団「この悪ガキ、今度は何をやらかした!?」
モット「ここを拠点に自分のギルドを結成しに戻ってきたんだ」
青年団「勝手なことを、見るからに怪しい集団ではないか」
青年団「こっちは数日前に現れた赤忍者の悪事で手いっぱいなんだ」
モット「あ、アイツ等なら僕らで退治した」
モットは先程、赤忍者達を討伐した事を青年団員に説明して、その証拠に奪還した盗品を元囚人やスケルトン達に運んでこさせた。何とか誤解は解け、とりあえず青年団長との面談を進められ、その人物のいる家を訪れた。
そこはモットがよく知っている家だった。冒険者アカデミーの同級生ウオヘイことウオ君の家だ。案内されたモットはウオヘイに事情を説明した。
ウオヘイ「ふむ、小生はモトマチ青年団ギルドを任せられている身。モット君の要望は聞いてやりたいところだけど、脱獄囚はちょっとまずいな」
モット「確かウオ君も流れてきた身だったな?僕の子分共と大して変わらないじゃないか」
ウオヘイ「それは…」
ミニン「ウオさん、頼みますよ。この人達のほとんどが濡れ衣で捕まっていたんです」
エビ怪人「お役に立ちますからエビ」
ウオヘイはエビ怪人を見て少し考えると、モットのギルド結成への協力を承諾した。ただし、条件として世界共通治安維持法令に遵ずること、元囚人の身分を隠すこと、農作業や害獣駆除等の労働力を提供すること、住民をギルドバトルに巻き込まないことを条件に提示した。
モット「そうとくれば商店街にある噴水の広場でギルド結成式をやろう」
エビ怪人「ところでご主人様、誰もギルドの名前を聞いていませんでしたエビ。考えておられるのですかエビ?」
モット「もちろんだ。ギルド結成式の演説で発表する」
モットは商店街中心の噴水前の広場に集めた仲間を整列させ、用意してもらった空のみかん箱でつくった足場に上って勝手に演説を始めた。
モット「(なんだか緊張するな。いや、僕は勇者なんだ。うまくやれるぞ!)」
モット「みんな聞いてくれ!長旅ご苦労だった。モトマチシティーにようこそ」
モット「僕はアシュラさんの脱走計画に協力したPTのモットだ。アシュラさんとの約束により君達を僕のギルドに招き入れたい」
モット「ここは見ての通り辺境だ。ハイリパインの権力は及ばない。それに放棄された農地と空家がたくさんある。君達が僕のギルドに入ってくれるのであれば、衣食住は保証しよう」
モット「君たちの大半が冒険者でないことや、戦闘スキルを有しないことは分かっている。誰にもできるギルド歩兵ソルジャーとして従事しているだけで十分だ」
モット「まずはこの地域の復興に尽くせ、ここを拠点に活動する為に」
モット「そしてスキルを鍛えろ、いずれは世界最強のギルドとなる」
モット「ここに怪人ギルド、モット団の結成を宣言する!!」
モットは演説を終えた。一同は呆気にとられた。
ミニン「怪人って…なんじゃそりゃ、マシな名前なかったんですかい?」
モット「いいじゃん、エビ怪人の活躍もあったし。それに前いたギルドもギルドマスターの名前だったし(僕の名前を使って有名になればきっとヌヌーティも気づいてくれるはず…)」
モット「それと、ギルド結成はアシュラさんおかげだ。そこで、名前を貰うことにした」
モット「これから我が名は『モット・A・じゃしん』とする(名乗っていれば息子さんが見つかるかもしれないからね)」
ミニン「勝手に名前を名乗らなくても…」
次にモットはエビ怪人、ミニン、戦闘スキルを持つ数名の元囚人を幹部に任命した。それ以外はモットのデザインの入ったヘルメットを着用させ下っ端のギルドソルジャーにした。
元囚人達からは不満や心配の声が上がったが、追われるもしくは投獄されるよりはマシな扱いだったのでそれ以上の反発はなかった。そして彼等には住いとなる空き家やテントが与えられた。
次にモットは港にあるモトマチ唯一の交易センターへ向かった。ここには以前購入した魔物強化装置が届いている。モットは荷物を受け取るとスケルトンの引く荷車に乗せて実家へ向かった。
モット「よしよし、コイツさえあれば、怪人を作れるぞ」
ミニン「本当にこれでエビ怪人を作ったのか…」
実家に到着すると、モットは封印された屋敷の門を開けた。塀に囲まれたじゃしん家の敷地は意外と広く、大きな屋根の母屋に小さな2階建ての離れ、頑丈な倉庫もついていた。
ミニン「相変わらず家だけはデカいなぁ」
モット「裕福な時代もあったからな。皆には空いた部屋を使わせてやる」
まずは倉庫に梱包された魔物強化装置を運ばせた。次に連れてきた仲間一同で屋敷の掃除を行って、住み込みで働く部下達の部屋を割り振った。母屋にはギルドソルジャー6名、離れ1階はミニン、2階のモットの部屋はそのままで、エビ怪人には倉庫の屋根裏を与えた。操ったスケルトン達は屋敷中に配置して見張りをやらせることにした。
翌日モットは電力を繋いだばかりの倉庫で魔物強化装置をケーブルを繋いで組み立てた。付属の組み立てマニュアルやミニンの手伝いもあって簡単に完成した。
ミニン「この装置本当に大丈夫ですかい?」
モット「くどいな、結構高かったんだぞ」
ミニン「魔物を調教して人型にするにしては構造が単純すぎるこの装置」
モット「証拠に怪人を作ってやる、素材を入れろ」
エビ怪人「これで私にも怪人仲間ができるエビ」
モットはギルドソルジャーに改造用の捕まえた亀をセットさせて装置付属のコンピューターを起動した。しかし、装置の表示には複製元の素材を入れてくださいと出るだけで起動しない。
モット「何故だ、壊れたのか?」
ミニン「コレって、やっぱり…」
ミニンはこの装置が立体複製機を偽装した偽物であることに気づいた。本物の装置はガラクタ売りがエビ怪人を作ったものだけで、モットに発送する際にはよくできた偽物とすり替えていたと予想した。
モット「あのガラクタ売りめ!」
ミニン「まあ直せばそっちに使えるけど」
エビ怪人「装備品の複製に使える機械エビ」
モット「くそう、いつか本物を手に入れてやる!!」
エビ怪人をモットに作り与え、偽物をモットに売りつけたあの時のガラクタ売りの目的は未だに分からなかった。
モットは落胆したが、ギルド結成の目標は達成されたので、しばらく生活を優先に故郷で活動することにした。