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第57話 ゾンビ廃墟の決戦

 忍者窃盗団の拠点に攻め込んだモット団は敵の策略に嵌って苦戦を強いられていた。そんな中、モットの頭の中で謎の声が聞こえた。その声によれば幸せの青い鳥が勝利に繋がるらしい。


モット「(何だ今の声は?謎の声が聞こえるのはマルチダの親子だけじゃなかったのか。でも一か八かかけるしかない、幸せの青い鳥ってのはたぶんコイツのことだクエ)」


 モットが謎の声を聞いて間もなく、お札官女は大量の札をばら撒いた。それらの札にはアンデッドを浄化する骸浄化の札、魔法の杖を無効化する魔導具封じの札、炎魔法や水魔法を吸収する耐火の札と耐水の札があった。

 屍浄化の札に体を覆われかけたモットソルジャー達は何とか剥がそうとするが、いくら破ろうとも札は再生して襲ってくる。そしてモットの体にも何枚か札が張り付いた。


モット「出でよ我が精霊神、ブルーコールクエクエ!!」


 モットは精霊神のブルーコールクエクエを呼び出した。幸せの青い鳥に分類される精霊神で、この世界のクエクエと呼ばれるオオクチバシ怪鳥の姿を模している。

 モットは周囲に残った自分やクナイの部下達にブルーコールクエクエを攻撃させた。ブルーコールクエクエは受けた物理攻撃を炎魔法に変換して吐き出すことが出来る。モットはブルーコールクエクエを使い、その紫色に燃える炎で自分の体に付いた札を焼き払った。そしてこの炎が札だけにダメージを与えていることに気づくと、札に襲われているモットソルジャー達にも炎を浴びせて救出することに成功した。  


お札巫女「何だあのふざけた鳥の式神は!?」


クナイ「隙あり、忍法触手クナイみじん切り!!」


お札巫女「ギャアアアアア!」


 ブルーコールクエクエの炎を浴びて水銀の札とその効力を取り除かれたクナイは大量の触手に持たせた暗器でお札巫女を切り裂いた。そして、それをすかさずモットのブルーコールクエクエの炎が直撃して焼き尽くした。


クナイ「さらばだ。父上に作られて裏切るまでご苦労だったな」


モット「こちらの強敵は処理したクエ!」


 その頃、右舷の部隊ではゲルシアや魔磁禍瑠七型には相性が悪い酒樽大工と音波を浴びせることで周囲の金属の重さを操る釣鐘鍛冶師が彼女達の進軍を阻んでいた。

 2体の上級忍術魔人に苦戦したゲルシアは飛行艇に待機させていた傭兵アマゾネス怪人の『大砲キャベツ』を呼び寄せた。大砲キャベツはキャベツの着ぐるみのような胴体に2本の砲身を生やした姿をしていて、常に不安げな表情を浮かべている。


酒樽大工「がはは、何じゃその不格好な怪人は?」


大砲キャベツ「嫌だ殺される!」


ゲルシア「いいからやりなさい。言う事を聞かないと、あのメカ娘共に戻すわよ?」


 大砲キャベツはしぶしぶ酒樽大工に向かって砲撃を開始した。命中精度は高く酒樽大工は数回破壊されたがすぐに再生してくる。


酒樽大工「無駄だと言ってるじゃろう。ん、砲弾に混じってキャベツが飛んできておるぞ!…もったいないのう」


 酒樽大工は大砲キャベツの放ったキャベツを口にした。そのキャベツには魔法生物を含む生命体の食欲を誘う成分が含まれており、破片になった際にキャベツ片を浴びた酒樽大工は何も迷いもなくキャベツを丸ごと喰らった。


酒樽大工「酒のつまみにもならぬがなかなかの味じゃったぞ、うぐぐ…」


 酒樽大工は突然苦しみだした。その姿は見る見るうちに大砲へと変化した。


釣鐘鍛冶師「何をやっている酒樽!」


大砲キャベツ「コイツの生命力では16発くらい。照準はあの金属の塊」


 大砲キャベツが念じると酒樽大工が変異した大砲が釣鐘鍛冶師に向かって砲弾を発射した。その砲弾には酒樽大工の魔力と生命力が含まれており、釣鐘鍛冶師の能力では威力を抑えて防ぐことができない、砲弾を数発受けた釣鐘鍛冶師の体は凹んだ。さらに大砲キャベツが念じると砲弾が次々と発射されて、大砲キャベツが放ったホーミング弾も合わさって釣鐘鍛冶師の体は何もできずに数メートル真上に打ち上げられた。


釣鐘鍛冶師「術が効かぬ、この私の金属の体がぁーっ!!」


ゲルシア「今よ、あの寸動に向かってホワイトフレア!」


 釣鐘鍛冶師の弱体化を確認したゲルシアはシャドーオブワルキューレの必殺技ホワイトフレアを噴射して釣鐘鍛冶師を貫いて粉砕した。


酒樽大工「わ、わしの存在に必要な忍びの気が…」


 大砲を撃ち尽くした酒樽大工は元の姿に戻ったが、力尽きて只の樽に変化した。


ゲルシア「周囲の建物への被害はないわね。大砲キャベツは逃げないように縛り付けておきなさい。それから突入よ」


 こうして忍者窃盗団本部を取り囲んだモット団は強敵を排除したことで第五花札ビルの内部へと乗り込んだ。その後はこれといった強敵はおらず、ビルの各階は制圧されて屋上から乗り込んだ消毒マン達とも合流してついに、愚か麻呂のいる頭領の間へと乗り込んだ。


クナイ「ここまでだな裏切り者。父上が作った最高傑作の忍術魔人でありながら私を裏切り、忍者窃盗団を二分して多くの犠牲を出した罪を償ってもらうぞ!」


愚か麻呂「マロはまだ負けてないでおじゃる。それに水蜘蛛丸は…」


 クナイの父、小野田水蜘蛛丸はとある世界の忍者であった。悪事を働く化け猫を追いかけ化け猫が異世界転移した井戸に飛び込んだ際に、井戸の壁に頭部をぶつけ一度絶命してから、この世界に転生してきたらしい。しかしこの世界での体はタコのような触手モンスターで人間には受け入れられずにいた。そこで水蜘蛛丸は愚か麻呂の素体となる人形を作り出してしばらくその人形に憑依して忍者として活躍していた。

 

愚か麻呂「奴はある時、人化の術を獲得した。そして自らが使っていたこのマロの体に忍術と忍びの気の半分を込めてマロを作り出したのでおじゃる」


愚か麻呂「マロは忍者窃盗団の為に働いた。しかし、年老いた水蜘蛛丸はマロより奴隷市場で拾ったくノ一との間にもうけた小娘の方を後継者にするとほざいたのでおじゃるよ!」


クナイ「まさか、父上を…」


愚か麻呂「察しが良いでおじゃるな、お主の父はマロの策略でゾンビワニ討伐の偽依頼を受け無残にも食われて死んだのでおじゃる」


クナイ「よくもーっ、忍法魔太刀の術」


 クナイは大量の鉄粉で巨大な妖刀を錬成すると触手でソレを握り愚か麻呂目掛けて振りかざした。しかし愚か麻呂はその攻撃を躱すと第五花札ビルの外に飛び出して術を唱えた。


愚か麻呂「出でよ蝋燭忍ダイダラボッチ!」


 愚か麻呂は巨大な蝋燭の忍者を召喚するとその体内に吸い込まれていった。そして巨大蝋燭忍者の姿は愚か麻呂の姿となり、周囲に紙の札をまき散らした。


モット「アレはさっきの!?」


クナイ「愚か麻呂は上級忍術魔人等の技を使用できるでござるよ」


 愚か麻呂の作り出した紙の札はマン破綻島の外へと飛んで行った。それと同時に倒したはずの木偶忍魔人達が一斉に蘇り、愚か麻呂の元に集って隊列を組んでいる。


愚か麻呂「忍法木材大橋の術!」


 木偶忍魔人達はマン破綻島の海岸に向かうと体を融合させて急成長を繰り返して巨大な橋を作った。その橋はゾンビの溢れる廃墟群と繋がった。


クナイ「あれはこけし魔人や酒樽大工の忍術。巨大化によって威力が増しているでござる」


愚か麻呂「そろそろでおじゃるな!」


 愚か麻呂によって作られた巨大橋を渡って何かがやって来る。それはお札を貼り付けられ愚か麻呂の手駒となったゾンビの大群であった。


モット「ゾンビを使役してやがる」


クナイ「お札官女の忍術である亡者傀儡の札でござったか、このままだとマン破綻島全体を巻き込んでしまい色々とまずいでござる」


ゲルシア「なんかやばくなったわね」


消毒マン「こちらからの距離だと転移移動の準備している間にもゾンビに攻め込まれたら大変だ」


モット「飛行艇のリッチ達で対応させる。ポチ、タマ、ロドリデゲス、出番だ!」


 愚か麻呂の操るゾンビの大群の相手をすることになったモット団は第五花札ビルからの移動準備を進めながら、飛行艇で待機させていたリッチ達に急行させて時間を稼ぐことになった。愚か麻呂は海を渡って廃墟のビルに座り込むとさらに札を生成してばら撒いている。

 マン破綻島と廃墟を繋ぐ橋の前にダミーリッチ達が急行した。彼等はアンデッド使役のスキルでゾンビを食い止めようとしたが、ゾンビ達はウイルス製でありかつ札によって使役されているので効果が無いようだ。


タマ「札も破壊しろ、我等も操られかねないぞ」


ポチ「タマ、ロドリデゲス、あのゾンビ共に向かってリッチストライカーアタックだ!」


タマ「まさか本当にアレをやるのか!?」


ロドリデゲス「本部で留守番している間にさんざん練習したから上手くいくっしょ」


 モット直属のペットである3体のリッチは自分達の体をバラバラに分解すると瘴気を帯びて転がる骨の山となってゾンビ達へ突撃した。瘴気は亡者傀儡の札に効くようで、その効力を無効化した。札による支配の外れたゾンビはタマ達の武装した6本の腕によって粉砕されている。他のリッチ達はゾンビの死体を再び使役して自らの配下にした後に札の付いたゾンビを襲わせている。


愚か麻呂「小癪な亡者傀儡の札!」


タマ「させるか、ファイアーバズーカ!」


 タマの放ったバズーカ弾は炎を帯びて、飛んでくる亡者傀儡の札の殆どを焼き尽くした。しかし、その中の一枚が瘴気をかいくぐってタマの顔面に張り付いた。


ポチ「やばい、リッチストライカーアタック解除!」


ロドリデゲス「おーいタマ、大丈夫か?」


タマ「これしきの事で…、私と魔王様の絆を断ち切れると思うなよ!」


 タマはアンデッドでありながら根性で亡者傀儡の札を無効化した。かつての契約主である魔王Cとの思い出を浮かべながら、ただ一人ゾンビと札の中に突撃している。その姿は弱体化しているとはいえ伝説の七勇者であった。


タマ「いつか、いつか、魔王様を解放して共に幸せな世界へ行くのだ!!」


ポチ「何言ってんだアイツ、頭大丈夫か?」


ロドリデゲス「まあ、役に立つなら多少の妄言はしゃーない」


 リッチ達の善戦もあってモット達も橋の周囲に到着した。モットは橋の破壊を提案したが愚か麻呂を倒すまではやめた方がいいとクナイに止められた。


消毒マン「大兄貴、この橋の木材がマン破綻島の地下施設に食い込んでいるよ」


クナイ「やはりそうだったでござるか、ここの地下は海水のろ過施設の1つ、壊してしまえばマン破綻島全体を敵に回すでござる」


???「巨大化して」


 再びモットの頭に謎の声が響いた。年齢も性別も不明なその声はモットに巨大化を促した。


モット「ええい、分かった分かった。全部隊はこの周囲に展開してゾンビ共を迎え撃て、僕は…」


 モットはアイテムボックスに収納していた試作の巨大化アイテム『ダークオーラクリスタル』を取り出した。謎の声は止んだ。


モット「何かあったら承知しないからな謎の声!!」


 怪人体である邪神大総帥の姿になったモットはダークオーラクリスタルを自分の胸部に打ち込んだ。モットの体は魔界Cの時のように巨大化した。そして海にダイブすると対岸の廃墟群に向かって必死に泳いだ。


愚か麻呂「あのような術を隠し持っていたとは生意気でおじゃる」


ゲルシア「よそ見してると火傷するわよ」


 巨大愚か麻呂の影に移動していたシャドーオブワルキューレが炎を放ってその体を貫いた。愚か麻呂は少しよろけたが、その部分を直ぐに再生させるとシャドーオブワルキューレに向かって液体を掛けた。


愚か麻呂「忍法焼酎召喚の術!お前達ゲリラ人の弱点を知らぬとでも思ったか?」


 大量の焼酎を浴びたシャドーオブワルキューレはゲルシアによって引っ込められ、本体のゲルシアもダメージを負った。


ゲルシア「ううっ、今度は消滅しなくてよかった。後は任せたよモットちゃん…」


ショットシェラー「軍団長が倒れたシェラ、安全な所で回復にあたるシェラ!」


 ゲルシアが酒でダウンしてまもなく、巨大化したモットが廃墟群へとたどり着いた。


愚か麻呂「巨大な骨のからくり、そのような姿でマロに挑むとは愚かでおじゃる!」


 愚か麻呂は無数の札を放った。それは骸浄化の札のようだった。モットにそれらの札が迫ったその時、再び声がした。


???「炎のオーラで燃やすんだ」


モット「こうなったらヤケクソだ。ヘルファイヤーオーラ!!」


 モットは全身から炎が沸き上がる姿を想像した。すると、海水で濡れているはずのモットの前方に紫の炎のオーラが放たれて札の攻撃を防いだ。


モット「上手くいった。今度はこっちからだ、ダークネスブレス!!」


 モットは闇のブレスを愚か麻呂に吐きつけて転ばせた。その隙に周囲の地面から土を呼び出してそれらをゾンビに浴びせると肉食バクテリアに変えて襲わせた。ゾンビの大群は次々に骨と化してその数を減らした。またモットが念じたことでその人骨はスケルトンとなって他のゾンビを襲っている。


愚か麻呂「何なのでおじゃるか、その力は?」


モット「先祖から受け継いだ力と、よく分からん声のせいだ!」


 モットは懐中電灯剣で愚か麻呂に斬りかかった。切り口から溶けた蝋が流れているがすぐに再生した。


愚か麻呂「無駄でおじゃる。怪しげな術をいくら使おうとも、この蝋で出来た巨大な体は忍びの気による物質変換と溶けた蝋の固まる化学反応操作によって…」


クナイ「そう言うことでござったか!!」


愚か麻呂「馬鹿な、クナイが何故ここにいるでおじゃる!」


 クナイはモットが巨大化したのを見計らって触手の姿に変化するとモットの巨大な骨盤の裏に張り付いていた。


モット「全然気づかなかったぞ」


クナイ「愚か麻呂、お主が私と距離を取って巨大化した理由がやっと分かった。忍法スキル継承の術!」


 クナイは愚か麻呂の体に飛びつくと何かの術を放った。そしてモットに愚か麻呂を懐中電灯剣で切るように促した。モットは愚か麻呂がクナイを振り払う前に懐中電灯剣でその両腕を切断した。


愚か麻呂「切り落とそうとも忍法遠隔操作の術で…」


 愚か麻呂が切り落とされた両腕を宙に浮かべた瞬間、右腕が凄まじい砲撃を受けて消滅した。モットが攻撃の飛んできた方に目をやると、消毒マンと配下のサイバー家電獣が砲撃を行ったようだ。


消毒マン「どうだ、超重量級のサイバー家電獣レールガンザウルス!」


モット「恐竜の骨を被った新怪人か、今度は左腕だ!」


 モットは愚か麻呂の左腕を懐中電灯剣で駒切にすると、丸めて宙に放り上げた。そこを狙って消毒マン達のレールガンの第二射が直撃して蒸発させた。愚か麻呂は両腕を失ったことで振り払えなくなったクナイに何かの術を吸い取られて弱体化した。


クナイ「新たな両腕を生やすには蝋が足りぬな。それに時すでに遅しでござる」

 

愚か麻呂「こうなったら分離でおじゃる!」


 愚か麻呂は巨大な肉体を捨てて元の大きさに戻って逃亡を図るも、モット達の足元に到達していた3体のリッチに取り囲まれた。


ポチ「逃がさんぞ人形野郎!」


愚か麻呂「待つでおじゃる。マロを倒せばマン破綻島の有力ギルド全てを敵に…」


モット「アレだけやっといて今更だろ!」


愚か麻呂「ぐへぃ!!」


 モットは巨大な前足で愚か麻呂を踏み潰した。愚か麻呂が動かなくなったことを確認すると巨大化を解除して、クナイと共に残骸となった愚か麻呂に近づいた。


クナイ「まだ生きているようでござるな」


愚か麻呂「うっ、再生の術が使えぬ、マロはまだ死にとうない…」


モット「クナイ、一体コイツに何をしたんだ?」


クナイ「愚か麻呂は私が父上から受け継ぐはずだった幾つかの術を持っていたようで、先程張り付いた際に蝋の体の外からそれらの術を吸い上げてやったのでござるよ」


 愚か麻呂はクナイの父である水蜘蛛丸に長年使用されていたことで、彼の持つ有用なスキルの術を会得していた。水蜘蛛丸生前時に彼やクナイ達他の忍者窃盗団にはそのことを隠しており、クナイが水蜘蛛丸から術を学ぶ前に主を謀殺してクナイ以上の実力を保つことに成功したのである。


モット「それにしても創造物が創造主を裏切ってギルドごと乗っ取りを謀るとは、怪人とかの製造で最も気を付けないといけないリスクだ」


クナイ「うむ、コヤツに従った忍術魔人達が私の術では制御しきれない状態であったのも実に恐ろしいでござる」


愚か麻呂「マロは水蜘蛛丸の手足となって共に生きてきた、マロの方がそこの小娘より忍者窃盗団の頭にふさわしい。力で乗っ取った者が支配者でおじゃる」


モット「ならば、僕等に負けた貴様は只の敗者だな」


クナイ「いかにも、父上の仇討たせてもらう!」


 クナイは無数の触手で愚か麻呂の体をバラバラに引き千切ると、そのコアである『愚』と書かれた球体に向かって暗器を突き立てて破壊した。


愚か麻呂「おじゃーっ!!」


モット「何か出て来たぞ!?」


 モットは愚か麻呂のコアから出て来た魂らしき物体をつかみ取ると、一口かじってみた。人間の魂同様の味がした、モットはその魂を味わいながら捕食した。


モット「人間の魂でも入っていたのか?」


クナイ「父上の忍術で創造された人造魂のはずでござるよ。きっと長い時を得て本物の魂と変わりない存在へと変化したのでござろう」


モット「人造魂が本物と大差なくなるか…」


 こうしてクナイ達をゼムノス団に売った裏切り者の忍者窃盗団は一掃された。敵側の忍術魔人は全て破壊され、倒された人間の忍者達は愚か麻呂に騙されていた者だけが蘇生後に再びクナイの元に仕え、そうでない者はモット団の捕虜収容施設に送られることになった。

 その後、モット団は戦闘の後始末に取り掛かった。愚か麻呂が木偶忍魔人達で築いた巨大橋はクナイの忍術とサイバー家電獣達の活躍で難なく撤去されて、マン破綻島は静まりを取り戻した。

 ダウンしていたゲルシアはクナイの酔い覚ましの術で無事に回復して、モットから追加報酬を受け取ると、部下をまとめて撤収に取り掛かっている。


モット「これで僕らの傘下になれるな?」


クナイ「無論でござる。上様!」


 傭兵アマゾネスを先に返したモットは忍者窃盗団本部の修繕と設備確認の為に数日間マン破綻島に滞在することになった。翌日、クナイが氷結武者と共に忍術魔人達の再生成を行っていると、一人のモットソルジャーが話しかけてきた。


モットソルジャー「クナイ頭領、貴女に頼みがあります」


クナイ「何でござるか?下忍いや、最下級の戦闘員が気安く私に頼み事を申すなど…」


モットソルジャー「これでもですか?」


 モットソルジャーは被っていた変装用の人工皮膚のマスクを外してクナイに見せた。すると、クナイの態度が変わった。


クナイ「ソナタは我が恩人。私にできることがあるのなら何なりと…」


モットソルジャー「古物から怪人を作り出すスキルを私に授けて頂きたいのです」


クナイ「合点承知でござる」


 その翌日、モット団の駐留する第五花札ビルにマン破綻島の有力ギルド代表者達がクレームを入れに来た。彼等には先日の戦闘での魔法使用やゾンビ侵入未遂、飛行艇からの騒音での不満が溜まっているらしい。さらには、愚か麻呂と決戦を繰り広げた際に周囲の廃墟からゾンビの殆どを一掃してしまったことでゾンビハントの観光業が危機的状況に瀕しているので賠償も要求された。


モット「うるさい奴等だな、生存を脅かすゾンビを減らしてやったのに、それに愚か麻呂を放っておけばマン破綻島全域を支配されていたかもしれないんだぞ」


 代表者達はモットの態度と言葉に激怒した。モットは彼等を追い返してモット団本部に怪人や機械兵団等の援軍を呼んだ。


モット「もうこうなったらこの島を占領してウチの領地にしてやるぞ」


クナイ「上様、本気でござるか!?」


モットソルジャー「(それでこそ我がマスター!)」


 半日後、マン破綻島の有力ギルドは同盟を組んで第五花札ビルを包囲したが、それと同時にモットが呼び寄せていたモビルシューター魔磁禍瑠六型と戦闘機モブファイターが襲来。圧倒的戦力差により敵対有力ギルドは無血降伏した。

モット「この前のブロック置き場に中継点を設置したことで巨大兵器や兵員も移動が容易になった」


クナイ「有力ギルドの者達は必要最低限の利益を保証してくれるのなら従うと言っているでござる」


モット「経営は苦しそうだが何とか統治してやるかな」


 こうして、旧金貨連邦の生き残り地域の1つであるマン破綻島はモット団の支配下になってしまった。なお、現地住民や無法者達はモット団の事を『邪神軍』と呼ぶようになった。


お札官女

先代頭領がゾンビに対抗する為に作った上級忍術魔人達の一体。紙の札から作られており、火と水が弱点であるが、それらを吸い上げる札を使用することによってカバーできる。


酒樽大工

酒樽から作られた上級忍術魔人。体を破壊されても粉々にならない限り、他の木材に転生する術によって復活できる。術で生成した酒はアルコール度数を任意に変化できる。


釣鐘鍛冶師

武器製造に先代頭領が作り出した上級忍術魔人。自身をハンマーで叩くことで発生させる音波によって周囲の金属の重さを変化させられる。金属製の飛び道具やエネルギーを帯びた弾丸等の動きを止めて無効化する術も使える。


愚か麻呂

忍者窃盗団元若頭。クナイ達をゼムノス団に始末させて忍者窃盗団乗っ取りを画策した。事故に見せかけて創造主である先代頭領水蜘蛛丸を謀殺している。


大砲キャベツ

ゲルシア配下。実はアダマンジャー側に付いていたメカ娘で、盆地での戦いで一度死亡していた。遺体を回収したナデシコがツギハギメカ娘『カノンカノン』として作りかけていた所、蘇生してしまいナデシコの元から逃げ出していた。魔界Cに匿われていた傭兵アマゾネスによって捕縛されて、処分保留と引き換えにこき使われる羽目になった。自身が作り出すキャベツの砲弾を食べさせた相手を大砲に変えて操る能力がある。


レールガンザウルス

消毒マンが魔界Cのテイマーが使役していたスカルザウルスの残骸とレールガンを合成して作ったサイバー家電獣。絶大な威力を誇るレールガンを口から発射する。莫大なエネルギー消費と動きが遅いのが弱点で、運用には消毒マンのアシストが必要。巨体の為に組み立て式となっている。


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