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第32話 下級兵士モットソルジャー

 メカ娘ナデシコをA級怪人サタンフラワー改造し終えたモットは本部の地下にあるバイオセンターへと足を運んだ。

 地下に広がる広大なクリーンルームの入り口には人が入るほどの大きさの円柱状の透明容器が積まれている。科学班の作業員達がそれらの容器をスケルトンを操る術士達の前へと運び、スケルトンを1体づつ入れている。

 それらの容器は浮遊魔法によってに施設の奥に用意された3~4段もある棚へと無数に整列させられ、コードとチューブが接続される。チューブから生理食塩水が送られスケルトン全体が浸された後に半透明のバイオ液が少しずつ注入されて、そこから培養が行われていた。


モット「前来た時と様子が違うな」


ミニン「量産体制に入ってるからね」


モット「培養までに掛かる時間は?」


ミニン「本来ならじっくりやって半月ってとこだけど、今は促進魔法で無理やり細胞を植え付けて擬態させているから半日くらいだ。その代わり速くやれば速いほど、エネルギーコストが跳ね上がって性能は著しく低下するけど」


モット「今は頭数を揃えたい、そのくらいのスピードで頼む」


ミニン「了解だ。出来たばかり培養スケルトン兵に科学班の知識を植え付けて新たな助手や作業員にして使ってもいるんだ」


モット「培養スケルトン兵か、言いにくいなぁ。僕が新しい正式名所を付けてやる」


ミニン「バイオギルドソルジャーとかかい?」


モット「僕の細胞を使ってるから、モットソルジャーと呼ぼう!」


ミニン「正確にはモットさんの細胞のコピーだけどね」


 モットはしばらくバイオセンターでのスケルトン培養を見学した。促進魔法によってバイオ液に浸されたスケルトンは通常より速く血管や肉、眼球等の必要最低限の臓器が形成されていく。

 その後、全身が皮膚に覆われて、体毛が生え始めたら完成の段階となる。衣類プリント機を持った科学班達によって着衣が施され、頭部にはモット団のエンブレムが刻まれたカルシュウム合成のヘルメットが錬成される。

 培養容器からコードとチューブが外されると、浮遊魔法によってベルトコンベアの上部に乗せられて大きな洗浄槽の手前まで運搬されると、転移の杖を持った作業員によってカプセルから洗浄層内に培養スケルトン兵のみが移される。

 洗浄後、彼等は機械の網に抄い上げられ、再びベルトコンベアーに乗せられて、乾燥と体内に残った不要な液体の除去が施された。最後に意識回復魔法が込められた魔導装置からの照射によって動き始めて言葉を発する。

 起き上がった者達に担当の科学班が話しかけ、モットへの忠誠を確認、ギルド登録を行っている。


科学班「これより最終契約を行う。以下の質問に答えよ。①一般の魂か又は人造魂か?②一般の者は氏名、人造魂はリストから名前を選べ③死亡時期と理由、④生前の職業⑤得意武器」


モットソルジャーA「①一般です②いくつかありますがサオリゲでお願いします③かなり前に洞窟に閉じ込められて餓死しました④一応海賊見習いですが、死霊となってアンデッドもやってました⑤魔法はもう使えませんがカットラスが得意です!」


科学班「よし、居住区1-Cへ行け。命令があるまでそこで待機だ」


モットソルジャーA「はい!」


ミニン「一応培養中に彼らの脳内にモット団の事は説明している。殆どの者は従ってくれるはずだよ」


科学班「こら!何処へ行く?」


モットソルジャーB「私は死んでもベスタ兵だ。総統閣下を食い殺した化け物に忠誠は誓えるか…ぐほっ!」


 反抗的な態度のモットソルジャーがその場から逃げ出そうとした時、その体は波のように揺れ動きながら崩れ落ちて、やがて溶けて骨に戻った。


科学班「他の者はよく見ておけ。お前達を蘇生して下さった契約主様に逆らうと、擬態魔法が解除されると同時にバイオ液によって得られた肉体は溶け、魂は直ちにロストする」


科学班「ちゃんと培養中に聞かせた事を守るように!」


科学班「ミニン班長、ギルドマスター閣下、大変お見苦しい所を申し訳ございません」


モット「不良品は仕方ない。気にするな」


ミニン「そうだ、モットさんにバイオいや、モットソルジャー培養中の説明を収録させてもらわないと」


モット「しょうがないクエ~」


ミニン「文章は考えておいたから朗読してね」


モット「これか…」


フラス子「それじゃあ録音しまーす!」


モット「聞こえている魂はよく聞くように。君達は一度死にました!でも安心してね。我がギルドの科学技術と禁術で、魂を憑依させたスケルトンとして操ってやるから。骨のままじゃいろいろと不便だから、僕の細胞で人間のように擬態させた。君達は培養ソルジャーとして仮の生命を得た分けだ。ここでうーんと働いて活躍したソルジャーには人間に戻れる禁術をかけてあげよう。ちなみに君達の年齢は成人前後に統一させてある。赤ん坊から老人まで第二の人生をやり直せるわけだ。ただし、決して裏切らないように、裏切ろうとすると僕の細胞が契約破棄とみなして溶けてしまうから。それじゃあ運がよかったらまた会おう。契約主兼闇の勇者より」


フラス子「OKです。よくできました」


ミニン「人造魂向けのセリフは無いけどまあいいや」


モット「って言うか人間に戻れる禁術ってあるけど?」


ミニン「理論上彼等はモットさんから蘇生魔法を受けると人間に戻れる。ちなみに人造魂は乗り移ったスケルトンのDNAが復元されて人間になるよ」


モット「僕は人間に戻れないのにコイツ等はずるいような気がする」


ミニン「生き返る又は人間にするって契約で操ってるからね」


モット「(待てよ、もしかしたら僕をアンデッドにした何者かがいるとすれば…)」


物流担当「ギルドマスター!」


モット「ん、何だ?」


物流担当「マルチダ様宛に届いた荷物を仕分けしておりましたら怪しく揺れ動く異臭のする箱が…」


モット「ああ、マルチダの艦長就任祝いに買ってやった衣装が届いていたか」


モット「急用が出来た。科学班はこのままモットソルジャーを大量生産してくれ」


ミニン「承知した。完成したモットソルジャーはざっと800人くらいだ。もっともっと作るにはスケルトンと魂が必要だから収集は頼んだよ」


モット「ああ、一応モットソルジャー達もリリンダに訓練させとくか」


 モットはバイオセンターを後にして、本部の通販荷物置き場へと向かった。そこでは怪しく揺れる箱にサカキが武器を構えている。


モット「悪いなサカキ、コイツは僕が始末をつけておく」


サカキ「分かった」


 モットが箱を開けると女のゾンビが勢いよく飛びだしてきた。


モット「メカ娘の次は騎士のゾンビか!?」


 モットは邪神大総帥に変身して飛び出してきたゾンビを殺人泥爆弾で白骨に変えた。


モット「目覚めよスケルトン、そのままバイオセンターに直行しろ(このスケルトン、オーラ魔法の適性があるな)」


モット「おかしいなあ、騎士の王国製のドレスアーマーだったハズだが、確か金髪の女騎士のモデルさんの写真付きだったはず」


サカキ「モット君、箱に大罪人ゾンビ化の刑執行って書いてあるぞ、ゾンビ化前の写真も」


モット「あ、誤購入だったか」


マルチダ「何やら騒がしいが、新しい軍服をくれたのはお前だな。礼を言う」


モット「マルチダ、少しは貫禄が出たな。もう破るなよ」


キメラ「余計な真似を!」


マルチダ「よせ、キメラ。コイツが私にプレゼントしてくれたんだ(また貰ってばかりだな)」


キメラ「(マルチダ様、ますますこの男に好意を寄せておられる。子を残せぬアンデッドなどに…)」


サカキ「モット君、ちょっといいか?」


モット「どうした?」


サカキ「モット君の改造中に俺の配下が反逆をしていた件だ。すまなかった!」


キメラ「私が粛清した!」


モット「今更気にしていない。運が良くて僕の改造は成功したんだし」


サカキ「しかしな」


モット「だけどビーストファイターズも結構消耗してるから、魔物強化装置で新しい獣怪人でも作ってくれ、像と犬の奴のクローンでもいいし猫耳兵も補充しておくように」


サカキ「獣人達を故意に作り出したくなくて今までやらなかったが、仕方あるまいな」


 誤購入したゾンビの始末を終えたモットに再びミニンから呼び出しがあった。


モット「今度は何だミニン?」


ミニン「言い忘れていたことがあったんで、モットソルジャー達の製造拡大に欠かせない元素が不足していてね」


モット「どんな物質だ?」


ミニン「ウソウソプリウムという魔界Cで多く取れる希少な物質だ。モットさんの細胞をコピーするにはウソウソプリウムのイオンから発する特殊な波長が必要なんだ」


モット「結構高そうだな、魔界Cへ採取に行けと?」


ミニン「なのです!」


モット「だったらついでにヤマタノオロチ、邪神大総帥、モットソルジャーの実戦をついでに行うか」


サカキ「しかし、魔界Cへ直接大軍を送るのは転送サービスでは禁止されているから無理なんじゃ」


モット「あ、そうだったな」


ドロン「いや、世界樹を用いれば可能だ!」


 そこにモット団幹部のチーム三賢者がやって来た。ドロンと従妹のポニョンは魔界A出身で魔界への転移には詳しかった。

 モットは新戦力の実戦を大規模にやりたいと思っていた。三賢者から得られた情報によって再び魔界Cへの遠征を計画する。

挿絵(By みてみん)

モットソルジャー(培養スケルトン兵)

性別:男女同数 年齢:成人前後に自動調整 数:いくらでもいる 弱点:人間と同様、契約破棄、不死浄化魔法

 モット団に採用された下級ギルド兵士。ドクトル・ミニン達科学班の研究によって開発、量産された。スケルトンより打たれ強く、人間同様の思考力や記憶力を持つ。また人間と違って食料は少量で済み、生殖能力を持たない。

 製造方法は魂を憑依させたスケルトンにモットの細胞のコピーを付着させ、モットとの代理契約を一方的に結ばせた上で、人間擬態魔法をかけることによって、人体が生成されて短期間で人間同様の忠実な半アンデッドの僕が完成する。

 主に3つに分類され、魂と骨が一致する者、魂と骨が一致しない者、人造魂の者が混在する。体の色素はモットと同一となっていて、見た目は性別によって違うがほぼ一緒。体格と声は性別や素体の人骨によって若干異なる。

 人造魂の個体を除いて生前の記憶は有しており、生き返りたい又は人間になりたいという欲望が植え付けられおり、その為モットへの忠誠を本能としている。

 しかし、死亡する、モットを裏切る、契約破棄を言い渡されると、擬態魔法が消滅して骨に戻り、魂はロストする。

 戦闘経験や食事・運動によって成長をすることで、魂に由来する生前の肉体の細胞が体内に生成されてゆき、モットの細胞との割合が一定を超えると、ほぼ完全な人間同様になるらしい。また、人造魂はスケルトンの持ち主の遺伝情報に切り替わる仕様となっている。

 主な武器はモットが設計したステンレス製の刀で、銃器や魔法の杖等の飛び道具と併用する。


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