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第3話 怪人と三賢者

この世界の勇者

 勇者は上位の冒険者の総合職の位置づけであるが、かつては魔王を倒したような伝説の英雄が職に関係なく勇者と呼ばれていた。特に有名なのは1000年前に暗黒教団と彼等が召喚した邪神ジャドールを葬った七勇者で、各々強力な固有スキルを持っていた。現在もその末裔が存在する。


エビ怪人

 モットが飼っていた小型アクアリュウムのエビを怪しいガラクタ売りから買った魔物強化装置で人型にした生物。人の言葉を話し主人の命令には服従する。不明な点が多く何やら秘密がありそうだ。


 ハイリパインに到着したモット達は入都審査を終えて、外の広場に出た。エビ怪人の身体検査に少し時間がかかったが、当局は無害な魔法生物とみなした。

 ここはミッドカットの衛星都市で事実上は独立している。ミッドカットから裁判の請負や囚人の一時預かりも行っている司法が特に力を持った都市国家である。


 モットとエビ怪人は街の案内図を見た。道を確認した後、2人はモットの友人のマンションがある通りに向かって歩いていくことにした。

 広場の隅には警察や司法権力の不正捜査を訴える団体が、被疑者や囚人の全員釈放を叫んで訴えていた。


モット「この都市でのいつもの光景だ」


エビ怪人「所で、そのご友人はどんな方エビか?」


モット「そういえば名前を教えるの忘れてたな、毒斗瑠身人(ドクトル・ミニン)って言う奴だよ。僕の冒険者アカデミーの同級生で、アルケミスト学科バイオコースの優等生だ」


エビ怪人「おお、生物錬成のプロフェッショナルエビか、私のような怪人をいっぱい作ってくれそうですエビ」


モット「まあね、バイオの他に奴はポーション合成とかの応用できるスキルを持っている。仲間にできれはギルド作りが捗りそうなんだ」


 モットの友人(子分)ことミニンのマンションの部屋の前まで行き着いた2人だったが、立ち入り禁止・差押の張り紙がしてあった。どうやら3日前に逮捕されたらしい。罪状は業務上横領、違法部位培養とありモットにはよく分からなかった。


モット「やっぱ捕まってたか、だろうと思った」


エビ怪人「どうしますエビ?」


モット「詳細は探偵を雇って調査してもらうか」


 そうしてモット達はミニン逮捕の詳細情報を探偵から得た。どうやらミニンの罪状は重く、罪人収容複合施設(通称:刑務所タウン)で取り調べを受けており、仮釈放には時間がかかるようだった。

 何か良い手はないかと考え込むモットに探偵はヒソヒソ声で近日中に市民団体が反乱を起こして囚人を釈放するという情報を教えてくれた。


モット「そのどさくさに紛れればミニンを救い出せるかもしれない」


エビ怪人「成功率は絶望的ですエビ、それに私達は確実に賞金首エビ」


モット「確かに2人だけでは不可能だな、安い金で請け負ってくれる連中でも募集するか」


モット「それとエビ怪人にも戦闘スキルとかを覚えてもらうつもりだ。パーティー募集の張り紙を出しておく間に特訓しよう」


 モットはハイリパイン裏路地のある酒場にパーティー募集の掲示を貼り出した。探偵の情報によれば、この酒場では訳ありの依頼や仲間募集が多いので都合がよいらしい。

 次にモットはエビ怪人を訓練するために、広大な敷地のパイン自然公園にある戦闘修練可能なエリアにやってきた。ここはハイリパインの冒険者アカデミーの管理地で修練用に弱いモンスターが放たれていて、1人500G払えば半日使用可能となっている。


場所:パイン自然公園戦闘修練区

出現モンスター一覧

ノリゴケ スライム状の移動植物、弱い

ミズゼラチン 水の属性を持つノリゴケの仲間

クモモ マナを吸い取ってくる煙、物理が効かない

コトコト ある魔界原産の怪鳥の幼体、炎、氷、不死の変異体がいる

ノービスBOT 見習い冒険者を模した練習用デコイ


 モットはエビ怪人に買ってきたマツの棒を装備させて、弱そうなモンスターと戦わせた。エビ怪人はマツの棒を槍のように扱ってモンスターを叩きのめしている。エビ怪人はぶん回しを覚えた。適正武器は槍のようだ。


モット「そろそろPT募集の締め切り時間だ酒場に戻ろう」


エビ怪人「了解エビ」


 2人が修練を終えようとしたとき、公園へのゲートが騒がしい。様子を見に行くとそこには老人を取り囲む不良達の姿があった。まだ戦闘エリアだったので、モットは不良グループにダークネスバーンをお見舞いしてやった。

 しかし不良達にモットの魔法は効いていなかった。なぜなら彼等はハイリパインの上級役人である親の力で聖職アカデミーに通っており、高価な闇耐性装備を買い与えられていた。

 不良達は標的をモット達に変更した。


不良「おいおい、俺達を聖獣と知っての挑発か?」


不良「それにふざけた着ぐるみ野郎までいやがる。じじいの前にこいつらをボコろうぜ」


モット「(相手は6人、数では不利か、何とかひるませてエビ怪人にぶん回しを使わせれば勝算はあるが…、待てよ、ここの地面は砂が多く柔らかいぞ!)」


モット「ロックポール!!」

 

 モットは向かってきた不良に向けて魔法:ロックポールを使用した。この魔法は足元の土砂や岩石を柱状に錬成して突き上げて攻撃する魔法で、電気属性の魔法を防いだり、狭い場所では通路の妨害にも使用できる。ゼムノス団にいた頃は場所を問わず頻繁に使用したり、後始末を放置したりした為、自重を言い渡されていた。

 ロックポールによって不良達は一斉によろけた。すかさずモットは魔法:泥爆弾を唱えた。この魔法は操っている地面魔法の対象を爆発させ煙幕のように使うことができる。不良達は飛び散った砂を浴びて全員無防備となった。


モット「今だエビ怪人、さっき覚えたぶん回しを使え!」


エビ怪人「了解エビ!」


 エビ怪人はマツの棒をぶん回して不良達をバタバタ倒した。モットは何人かの不良を金属製杖で殴りつけ追撃した。

 不良達が体制を立て直し反撃に出ようとすると、周囲に老人の味方と思われる市民達が集まってきた。よく見ると囚人釈放を訴えていた団体だった。


不良「ちくしょー覚えてろよ!」


不良「ここが戦闘可能エリアでなければ親に言いつけてやるのによう…」


 不良達は逃げ去った。モットは救った老人と市民団体から礼を言われた。話を聞くと老人は市民団体の幹部の1人で、ある計画の会合でこの場所で落ち合う予定で、初心者虐めを行おうとしていた不良グループこと聖獣を発見して注意したら襲われたとのことだった。

 モットが思い切って囚人釈放の反乱について尋ねると、ここで話し合うの計画のことだったので、老人救出の件もあって加えてもらうことになった。

 反乱は明日の18時に刑務所タウンの区画で実行となっている。この区画には警察署や裁判所が隣接した司法局の管理区域となっている。市民団体の反乱でこの区画の機能すべてを破壊してその隙に刑務所タウンの内通者を通じて内部に潜入して囚人達を町の外に逃がす作戦だった。


モット「(成功率は考えない方がいいか…)」


内通者「私が内通者であの施設の看守をやっているアシュラだ。君達の戦いはさっき見せてもらった。潜入に協力してもらえないか?」


 アシュラと名のる看守はモットとエビ怪人の戦いぶりを評価して刑務所タウンの潜入に指名してくれた。後に勧誘するPTメンバーも加えて良いそうだ。


 話を終えてモット達が酒場へ戻ると、掲示しておいたPTに応募があった。応募したのはチーム名:三賢者を名乗る戦士(男)、魔法使い(女)、僧侶(不明)の3人組で、実名を名乗らない条件でモットの計画に手を貸してくれるそうだ。


戦士「少しやばそうな話だが、これだけの報酬をくれるなら何でもやるぜ」


魔法使い「ふふ、反乱とか面白そうじゃないの」


僧侶「追われるリスクもありますが、雇い主さんの故郷までご一緒できるならこちらにも好都合です」


 戦士と魔法使いは魔界Aの植民村出身のいとこ同士で、僧侶は数年前に川のほとりで倒れていた所を救って仲間にしたらしい。モットはこの僧侶のモブ顔をどこかで見たような気がしたが、この時は思い出せなかったが、まあいいやと思い宿屋にとまった。


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