第25話 名もなき亡霊
バト大橋
ミッドカット南側と自由都市バ浜を結ぶ巨大な橋、第三次大戦前に建造されている。近年老朽化が問題となっており、さらにいわくつきの場所で多数の霊体モンスターが橋の下で出現している。その為、管理を任されているバ浜自治会は何度も修繕の邪魔になる霊体モンスターの駆除の依頼を出していたが、どれもうまくいかずに大手ギルドからも見放されている。
ベスタ軍の巨大戦艦建造に注意する傍ら、もう一つの失敗以来の継続をする為にバ浜へとやって来たモットのPTはバト大橋の海底で悪霊思念体発生源の探索を続けていた。
場所:バト大橋海底出現モンスター
ロックフィッシュ 頑丈な大型魚、敵と判断したものに体当たりしてくる。
猛毒クラゲ 光と水の属性耐性を変化させる特殊な生物、上下に移動して光を放つ。
ショット貝 肉食の巻貝、獲物を毒矢で仕留める。
セイレーン 水の精霊、縄張りに入らなければ何もしてこない。
パイレーツスケルトン 武器を持ち海底を彷徨うスケルトンの総称、元は海賊とは限らない。
悪霊思念体 青白い肌に両目と口に黒い穴がある悪霊、普通の人間が触れると生気を吸われて彼らの仲間入りとなる、赤い個体は執念深く追尾してくる。
探索から数十分後、モットのPTは霊体やスケルトンの多くいるエリアを絞ることが出来た。そこは土砂が不自然に盛り上がった海底の丘だった。
ウオヘイ「担当者の言っていた沈んだ島はここかもしれない」
モット「確か土で埋めて資材置き場にした後、海流の影響で沈んでしまったんだっけか」
ウオヘイ「ん?小生の持ってきた地形探査レーダーが付近に空洞を探知したぞ」
モット「宝が眠るという海底洞窟か、それとも工事の際に出来た穴か」
ハヤト「ご主人様、向こうから多数の霊体とスケルトンがこちらへ向かってきます」
モット「2人は光線ヒトデで遠距離砲撃、僕とウオ君、マルチダで近づいてきたコイツ等を魔法でぶっ潰す。ギルドソルジャーはハヤト達を援護しろ」
多数のパイレーツスケルトン、悪霊思念体と戦闘になった。光線ヒトデは水中でも使用可能な魚介類光線で敵の大群に一撃を浴びせた。パイレーツスケルトンは両断され、悪霊思念体もその威力の高さからダメージを受けているようだった。
続いてマルチダによる光魔法の弾幕攻撃、ウオヘイのターンアンデッド、モットのダークネスバン等の圧倒的火力で敵の殲滅に成功した。戦闘による海中の汚れが引くと辺りには多数の人骨が散乱し人魂の断片が浮かんでいる。
モット「悪霊にも闇魔法が効くみたいだな。ギルドソルジャー共、そっちの人骨と魂を回収しろ、残りのこっちは僕が捕食する」
モットは悪霊思念体の断片に齧り付いた。
モット「ハアハア、ウマい!海中だが喉が潤う、魔力も回復するぞ!」
マルチダ「あまり食い過ぎるな、この前みたいにクソを漏らすかもしれないぞ」
モット「それは誰にも言うなって言っただろ!」
ギルドソルジャーB「(骨の体でどうやって出すんだろう…)」
ギルドソルジャーC「骨を吸い込め回収壺!金だ金だ金だー!」
ギルドソルジャーA「本当に蓋を開けただけで魂を吸い込んでいる。便利なアイテムですね」
ウオヘイ「それにしても彼等は何かに操られている。かなり強力な…」
マルチダ「倒した悪霊思念体の見た目やパイレーツスケルトンの装備からしてトレジャーハンターのようだな」
モット「もぐもぐ、ロストしたウチの奴らはいないようだが流されたか海の生き物にでも食われたなこりゃ」
カリア「ご主人様、また複数の悪霊思念体が湧いてきています」
ウオヘイ「あの辺りか、レーダーによれば空洞があるみたいだが」
モットのPTは悪霊思念体が湧いてくる場所へと向かった。その場所は陥没したような窪みになっており、悪霊思念体は中心部分から海底をすり抜けるように湧いてくる。モットのPTは湧いた敵を一掃してからその窪みの中を探索した。するとロストしていたPTメンバーの遺体が土砂の中から見つかった。
ウオヘイ「彼等はここまで来ていたのか…」
モット「それとも吸い寄せられたか…」
ウオヘイ「ロストから蘇生不能状態に変更だ。せめて本部で手厚く葬ろう」
マルチダ「だったら私達が降りてきた場所までテレポートさせる」
マルチダは回収したPTの遺体をテレポートで運んで行った。その直後、また海底から悪霊思念体の手が伸びてきた。
モット「しつこい奴らだ。ロックポール!」
ウオヘイ「そこだ、ターンアンデット!」
モットが海底から石柱を突き上げると悪霊思念体が湧いた場所に穴が開いた。
ウオヘイ「埋もれていた海底洞窟!?ここから侵入できそうだ」
モット「宝があるかは分からないけど、奴らの親玉はいそうだな。マルチダが戻ってきたら突入する」
数分後、マルチダがテレポートで戻ってきたので一同は海底洞窟と思われる穴の内部へ突入した。悪霊思念体を倒しながら海底洞窟を奥まで進むと、行き止りだった。
ウオヘイ「落盤で空洞が崩れているみたいだ。ん?この先に空気が溜まった空洞があるみたいだ」
モット「僕の地面魔法でどかしたいところだが、せっかくの空気だまりに水を入れたくないな」
マルチダ「私のテレポートで全員を内部に移動できるぞ」
モット「ならば僕とマルチダでこの先に飛んで空気量とその成分を確かめる。ウオ君、レーダーを借りるぞ」
モットとマルチダは海底洞窟の行き止りの岩盤をテレポートで超えて先の安全を確かめてから他のPTメンバーを移動させた。
マルチダ「空気もあるし、この広さ等なら私の召喚獣達を呼び出せるぞ」
ウオヘイ「マルチダ君の召喚獣は水中適正のモンスターがいなかったな」
モット「下手に戦闘で暴れて洞窟崩されても厄介だから、あの白い蝙蝠を出しといてくれ」
マルチダは配下の白い使い魔を呼び出してPTに追従させた。一定間隔で出現する悪霊思念体を数体倒して少し進むと広い場所に出た。そこには子供と思われる骨が散らばっているが動くものはいないようだ。
マルチダ「生き埋めか…」
モット「散らばっている遺品からして海賊の関係者かもな」
ウオヘイ「海賊が討伐された時にその子供達がこの場所に逃げ込んで、島が埋め立てられ出れなくなってしまったのかもしれない」
マルチダ「この魔法道具は?」
ウオヘイ「光るオーブに、海水を真水にする壺、酸素を作る杖もある。壊れているみたいだが」
マルチダ「見ろ、こっちには空の樽と木箱の山が朽ちているぞ」
ウオヘイ「外に出れずに食料が尽きたってとこか…」
モット「この骨も回収しろ」
ギルドソルジャーA「へい!」
ウオヘイ「レーダーに反応!」
モット「奴等の親玉か?」
ウオヘイ「いや、大量の貴金属だ」
モットのPTが広間を抜けるとそこには海賊の宝と思われる財宝の山があった。一番奥の壁には子供の人骨が一体横たわっている。バンダナと真珠の首飾りを付けた子供のようだ。
モット「呪いの発生源はこの宝か?」
ウオヘイ「エリア鑑定!…そうみたいだ。この辺の財宝には呪いが込められている。特にあの骨の周囲に!」
モット「呪いの宝か、幾つかは浄化せずに持ち帰る。残りは…」
ハヤト&カリア「敵対意思を持った実体物が急接近!」
ウオヘイ「何、悪霊思念体ではないだと!?」
モット達の前に木と貝殻の人形がそれぞれ現れた。同時に悪霊思念も現れたが2体の人形はそれらを持参した退魔の札で退けた。
???「我の土遁岩石移動の術にかかれば海底洞窟への侵入など容易い事よ」
???「うふふふっ、忍者共の要請で来てみれば海底に埋蔵金でありんす」
???「それに我等は生命を持たぬ忍術魔人、悪霊ごときの呪いは恐れるに足らず」
モット「忍術魔人、窃盗団か?」
???「そうでありんす。ワラワは忍術魔人のこけし魔人3号!」
???「同じく、我こそは貝殻法師!」
こけし魔人「2号の姉者を斬った猫耳侍の仲間だそうでありんすね。埋蔵金を頂くついでにワラワ達が成敗するでありんす」
貝殻法師「忍者達の話によればお主等は忍術魔人を何体も殺めているそうであるな。仲間の仇である。いざ、勝負勝負!」
忍者窃盗団の魔人達と戦闘になった。こけし魔人は丸太を大量に召喚して投げてきた。モット達が丸太を攻撃すると、それは紫の忍装束を着た人形に変化して襲ってきた。
モット「インスタント戦闘員か?」
マルチダ「使い魔達を人型に変化して応戦させる」
こけし魔人「ワラワ達の配下である木偶人形の忍者でありんす」
モット「そっちが数ならこっちもだ。いでよスケルトン!」
木偶忍魔人の大群に対してモットとマルチダはそれぞれの眷属で応戦させた。木偶忍魔人は忍者の武器や体術を駆使して優勢となっている。
マルチダ「木ならこれだ!」
マルチダは口から火炎のブレスを吐いた。
ウオヘイ「うっ、ごほごほ!」
こけし魔人「こんな風通しの悪い場所で木材を大量に燃やして、良いのでありんすか?」
モット「炎は控えろ!味方が煙でやられてしまう」
貝殻法師「土遁カルシウム飛ばし!」
貝殻法師の術で周囲の貝殻やフジツボが弾丸のように飛んできた。木偶忍魔人も巻き込んで白い使い魔とスケルトンは一気に数を減らした。ハヤトとカリアはツイントライデントを回転させPTの盾となった。
モット「2人共よくやった。光線ヒトデで敵の数を減らせ」
ハヤト「了解しました」
こけし魔人「光線?」
モットに炎を控えるように言われたマルチダは貝殻法師に向かって冷気のブレスを吐いた。
貝殻法師「効かぬ、結界真珠層の術!」
貝殻法師は真珠色の結界を出現させマルチダの攻撃を防いだ。
マルチダ「サンダーオーブ!プラントスパイク!」
モット「ダークネスバン!ロックポール!」
ウオヘイ「バブルカノン!シャインバン!」
マルチダ「私のマナ弾幕すら効いていないぞ」
モット達は貝殻法師の結界に向けて属性魔法を色々撃ち込んだが、どれも防がれてしまった。
貝殻法師「かっかっかっ!我の結界真珠層はあらゆる攻撃魔法を分解してしまうのだ」
ハヤト「ご主人様、光線ヒトデのチャージが完了しました」
モット「よし、スケルトンと使い魔を退かせる。丸太とあの魔人を撃て!」
ハヤトの操作によって光線ヒトデの1体は魚介類光線で周囲の木偶忍魔人を薙ぎ払い、もう1体は最大出力で貝殻法師を攻撃した。
貝殻法師「そんな光線ごときで、忍法真珠層反射の術」
マルチダ「危ない、ポータルホール!」
マルチダは跳ね返された光線をワープホールで吸い込んで消し去った。
モット「そうだマルチダ、奴の結界内に攻撃魔法を転移させられるか?」
マルチダ「壊さない限り侵入は不可能だ」
貝殻法師「ん?そい言えば、お主は見るからにアンデッド」
モット「それがどうした?」
ウオヘイ「気を付けろモット君、ターンアンデッドが来るかもしれないぞ!」
貝殻法師「退魔の札よりお主達にはこっちの方が効果がありそうだ。土遁カルシュウム吸引の術!」
貝殻法師は両手から白いブレスのような術を放ってモットを囲っていたスケルトン達からカルシウム成分を吸ってきた。吸われたスケルトンは崩れ去り、残った魂をこけし魔人が退魔の札で成仏させた。退魔の札を避けようとしたモットの右肩に貝殻法師の術が掠った。
モット「なんだと、直ぐに再生できない…」
貝殻法師「我は一定範囲内の貝殻や骨などのカルシウム化合物を自在に操れるのである。リッチ級のアンデッドすらも我には抗えんぞ」
マルチダはテレポートでモットを貝殻法師の攻撃射程から遠ざけた。
モット「くっ、全員壁を背にして下がれ!」
こけし魔人「自ら後の無い隅っこに下がるとは愚かでありんす。木遁黒竹槍召喚の術!」
貝殻法師「二枚貝手裏剣!巻貝クナイ!」
鋭い貝殻が宙を舞い地面からは竹槍が足元に目掛けて生えてきた。マルチダは転移ポータルである程度の攻撃を吸い込んで防いだが、防ぎきれなかった数枚の貝殻により両腕に切り傷を負った。一方無数の竹槍はPTの盾となったスケルトンや白い使い魔達を串刺しにしてほぼ壊滅させた。
ウオヘイ「モット君、マルチダ君、どうやら眷属たちはこれ以上は呼びださない方がいいぞ」
マルチダ「私が手傷を負うとは…やむ負えん、変身して一気に攻撃する」
モット「よせ、さっきみたいに属性攻撃は防がれる(それに…)」
モット「こうなったら対抗策を考える。ハヤト、カリアはそれまでPTメンバーを守れ」
ハヤト&カリア「承知しましたご主人様」
モット「そういえば水中通信用の耳当てがあったな、みんな小声で会話しろ」
モットは敵に聞こえない小声で会話するように指示を出した。2体の忍術魔人からの攻撃を防ぎつつ、向かってくる木偶忍魔人の集団を撃破して数分経過した。
モット「マルチダ、ウオ君、もう一回奴らに属性攻撃を!(結界での防御中はカルシウム吸引が使えない。それに攻撃魔法を無効化するってことは…)」
ウオヘイ「分かった。ウオーターカッター」
マルチダ「サンダーオーブ!」
貝殻法師「何度やっても無駄であるぞ、結界真珠層の術!」
モット「マルチダ、僕をアイツの前に飛ばせ、ウオ君は僕が飛んだ瞬間に斧で援護を(やはり、同時使用はできないみたいだな)」
貝殻法師がこけし魔人達の前に出てドームのような結界を出現させ属性攻撃を防いだ瞬間、マルチダのテレポートで飛んだモットはミスリル球を取り付けた杖で貝殻法師の結界を殴りつけた。同時にウオヘイもトマホークの援護も相まって結界には大きくひびが入った。
貝殻法師「しまった物理攻撃は…」
モット「さっきのカルシュウム吸引が怖くて近づかないとでも思ったか?」
ウオヘイ「どうだ、トマホークブーメラン!」
モット「今だマルチダ、内部に攻撃魔法を転移させろ」
マルチダ「結界にひび割れさえあれば私の魔法も内部に送れる。フレアドーム!ポータルホール!」
モット「そして僕が結界のひび割れ部分を塞ぐ!」
こけし魔人「しまったでありんす、あーれー!」
結界内でマルチダの炎魔法が炸裂して内部のこけし魔人と木偶忍魔人は燃え尽きた。マルチダは結界から漏れた燃焼ガスをポータルホールで吸引して処理した。
貝殻法師「ぜえぜえ…」
炎が引くとその中から真珠層で全身を覆った貝殻法師が現れた。
モット「流石に燃えていないか」
ウオヘイ「しぶとい奴め!」
モット「エンチャント…喰らえー」
貝殻法師「属性付与か、馬鹿め。真珠層結界の術!」
モットは杖を大きく横に振って結界ごと貝殻法師の両手を砕いた。貝殻法師は両腕の再生を試みたが、モットが破損部位を錬成した岩石で覆って妨害した。
貝殻法師「おのれ、何故である?」
モット「攻撃魔法のは効かないと言ったな、僕は武器に微量の回復魔法を付与して殴ったんだ。普通に殴り掛かろうとすればまたカルシウム吸引を使ってくるからな」
マルチダはモットを作り出した炎熱の魔法球と入れ替えると、無防備となった貝殻法師を高温に熱した。数秒後その攻撃を消し去ると、今度はウオヘイが投げた冷気付与のトマホークを瞬間移動により直撃させた。
貝殻法師「しまった、今の我は高温!」
モット「熱した貝殻を急激に冷やせばどうなると思う?」
貝殻法師「くっ、完敗である。見事…」
貝殻法師は砕け散った。モットは素早く骨回収の壺を使ってその破片を吸い込んだ。
マルチダ「何に使うんだ?」
モット「コイツのカルシウム吸引とか言うスキルが使えそうだ。この破片を詠唱の触媒にでもできればと思ってな」
ウオヘイ「うまく連携が取れた。これもこの通信用耳当てのお陰だ」
カリア「流石はご主人様、お見事な戦闘指揮でありました」
モット「これで依頼を再開できるな!」
ウオヘイ「呪い、いや悪霊の親玉はいるのだろうか?」
???「ドウシテ、タカラヲネラウノ?」
モットのPTは忍者窃盗団の刺客を撃破することに成功した。そして依頼を再開しようとしたその時、財宝の方から強力な怨念と共に生気のない少女の声が響き渡った。モットが辺りを見渡すと後ろに10代くらいの少女の姿をした幽霊が立っていた。
少女「ドウシテ、ワタシタチノネムリヲジャマスルノ?」
モット「ここの上にある大きな橋の修繕にはお前達が邪魔なんだ。ついでにお宝は全部頂く!」
ウオヘイ「この子が親玉か?いや、会話ができるし悪霊思念体の気配がしない…」
少女「サセナイ、ココニハシサエデキナケレバダレモシナナカッタ。オヤモトモダチモ、ワタシダケサイゴマデイキノコッタ」
ウオヘイ「哀れな、私が浄化してやる。こんなことはもう止めるんだ」
少女「ユルサナイ、ワタシタチヲヤッツケテタカラヲウバイニキタヤツラ、ミンナゼンブミチズレニシテヤル!!」
幽霊の目と口が悪霊思念体特有の黒い穴へと変わった。次の瞬間、財宝の上に横たわる遺体に乗り移ると緑のローブのアンデッドへと変貌した。周囲には眷属と思われる悪霊思念体が湧いている。
モット「リッチの上位種ヘルか」
ウオヘイ「ターンアンデッド!」
ウオヘイ数発放ったターンアンデッドによって取り巻きの悪霊思念体は倒せたが、ヘルはビクともしていない。
ウオヘイ「何だ、どういうことだ!?」
モット「コイツ、複数の魂が折り重なっている。ターンアンデッドを喰らった瞬間に本体の魂は内側に逃げ込んで外側の魂を身代わりにしているんだ」
ウオヘイ「だったらレクイエムを使うしか、でもモット君が…」
モット「今ソレを使われると僕が浄化されちまう。ここは任せてくれ!」
少女「ワタシタチノジャマをスル、ミンナコロス」
モットはヘルに向かってさっき壺に吸い込んだ貝殻魔人の破片を振りかけて魔法を唱えた。
モット「(この粉を媒介に、カルシュウム化合物だけをイメージして…)喰らえ、カルシュウム吸引!」
少女「ウグググッ!」
モットのカルシュウム吸引が成功してヘルの体はやせ細っていった。依り代を削られたヘルに向かってモットは突進して素手で魂のコアを引き抜いた。
モット「残念だったなお嬢ちゃん。本体は頂いた!」
少女「ドウシテ、コンナコトスルノ…」
モット「弱肉強食だ。怨念で宝を守るアンデットもいれば、その魂を食らうアンデットもいるんだよ!」
モット「もぐもぐ、ウマイ!これは濃厚な魂の味だ!」
魂のコアを失った少女のヘルは爆発し、あたりに骨が散らばった。親玉がいなくなり残留思念や呪いもこれ以上発生しなくなっている。モットは光線ヒトデを除くPTメンバーに財宝を持てる範囲で分配するように命じると、残った財宝をアイテムBOXであずかった。
モット「呪いが残ってるのはアレに使うとして、他は迷惑料って事にしとくか…」
マルチダ「私はこの金のリングだけでいい…」
モット「欲のない奴だな。もぐもぐ、うっ!(さっきの魂が濃厚過ぎて最後まで食べきれない、回収用の壺に入れとくか)」
こうしてモットのPTはバト大橋の呪いの発生源を浄化することに成功して、海底洞窟の財宝を手に入れると依頼報告にバ浜へと戻った。
忍術魔人
忍者窃盗団の頭領が魔法(忍の気)と物で作りだした自立行動可能な傀儡怪人。注ぎ込まれた忍びの気によって、こんにゃく魔人や木偶忍魔人のように機械的になったり、練炭魔人やこけし魔人のような人格を有していたりする。基本的に全個体で特定の忍術を使えるが、全てが忍者というわけでなく、忍者を含む和風文化圏特有の武者や僧侶、貴族等の職業がモチーフとなっている。