第22話 科学班の再生怪人
迷いの森の依頼完了から2週間日後、休暇及びギルド端末の修理・買い替えを済ませたモットはドラコソ議員からの依頼確認の知らせを受けてサカキ、リリンダ、マルチダと共に本部のモトマチシティーに帰還した。
モット「ギルド端末は何とか無料アフターサービスで修理してもらって良かった」
サカキ「ありがとよモット君、新しい端末買ってくれて。ちなみには3代目だ」
リリンダ「僕のも買って頂いて感謝であります!」
モット「リリンダの端末は耐水・耐炎熱仕様だ。新人ギルメンの育成管理アプリも入れてもらっといた」
マルチダ「(私も欲しい。召喚獣管理機能付が…)」
本部に向かう途中、モットは実家の前まで来ると立ち止まった。
モット「リリンダ、マルチダ、ここが僕の家だ」
リリンダ「ここが司令官殿のご自宅でありますか、立派な屋敷でありますね!」
モット「ひい爺様の代から建てられている、何度か改装を加えたらしいけど」
マルチダ「門に描かれたドクロを飲み込んだスライムの絵は?」
リリンダ「この紋章どこかで見たような…」
モット「我がじゃしん家の家紋だ。ひい爺様の義勇軍のエンブレムでもあったんだ」
マルチダ「何故そんな姓を名乗っているんだ?」
モット「ひい爺様が前世の記憶とかで発狂して、爺ちゃんを身籠ったひい婆様を殺そうとした。ひい婆様はやむ負えずひい爺様を殺してしまった」
サカキ「前世の記憶!?(異世界病か)」
モット「ひい爺様の最後の言葉がじゃしん…だった。罪悪感を感じたひい婆様はその後じゃしん家を名乗った(まあ、僕の代で途絶えるけど)」
リリンダ「色々と大変な過去があったのでありますね。所で司令官殿のひいおじい様の義勇軍とは?」
モット「丸衛隊だ!」
リリンダ「あの第三次大戦中に猛威を振るったゲリラ組織!?」
リリンダ「養父のカタールさんが昔、彼らの捕虜になっていたと話してくれたであります」
モット「そんな繋がりがあったとは、何かの縁かもな」
マルチダ「そういえば私は何処に寝泊りするんだ?」
モット「家の隣の空き地に簡素な小屋を建てさせたからそこに住め。迷いの森の隠れ家が恋しければ、植物急成長魔法で再現させておく。常にスケルトンに見張らせているからおかしな真似はするな」
リリンダ「あのー、僕はどちらに住めば?」
モット「マルチダの荷物をここに置いたら本部に案内する。本部前に新設したレンガの塔を一つ与えよう」
リリンダ「レンガの塔でありますか?」
モット「幹部の居住を兼ねた見張り台や砲台設置用に幾つか建設させていたんだ。気に入らないなら周囲には新メンバー用の集合宿舎やテントもあるぞ」
リリンダ「マルチダ殿との待遇の差が…何だか悪いような気がするであります」
モット「いいやリリンダ、本部に着いてから任命する君の地位にふさわしい住居だ。好きなように使ってくれ」
サカキ「そういや、俺の荷物を部下達がレンガの砦に引っ越しさせたと言ってたが?」
モット「サカキの新住居は三階建てのレンガのギルド砦サイズだ。ビーストファイターズ達と使ってくれ」
モット達は巨大な石垣の基礎となったモット団本部へと向かった。本部の周囲には建設中も含めてレンガの塔や砦が取り囲むように建てられていた。これらは本部の防衛施設を兼ねたギルドメンバー用の宿舎で下級幹部や一般ギルドソルジャーにはテント等の組み立て式住居も立ち並んでいる。
モット「ダム建設から連れてきた元捕虜達のお陰でレンガの建物は順調に完成しているな、後は本部の石崖を土台にでっかい天守閣を建ててやるんだ!」
マルチダ「天守閣、城の一種か」
サカキ「天守閣!?俺の地元にもホリマチ城ってのがあったが第三次大戦で焼け落ちてしまったんだよな…ちなみに俺の一族は城主の庶家だ」
モット「(後はこの辺に熱吸収発電装置を…)」
モット団幹部戦士「お帰りなさいませギルドマスター!先ほどの連絡どうりにここにいる新人と訓練中の者を広場に集合させています」
モット「ご苦労」
モットのPTはミッドカットから連れてきた新メンバー達の前に出た。
モット「見習いギルドソルジャー及び新人の諸君、君達に教官を紹介する。元ベスタ兵のリリンダだ!」
リリンダ「ええっ!?僕が教官でありますか?」
モット「今の僕等は軍事関係の知識や技量に乏しい。ギルド強化の為にも軍人である君に彼等を訓練してほしい」
リリンダ「僕は脱走兵でしかも異形な怪人でありますよ、階級は軍曹でありますが殆ど形だけの役職だったであります。そのような立派な地位には…」
モット「カタール准将から聞いた。あの人の養女でありながら必要最低限の生活費だけを受け取って1人で庶民同様の生活を送り、兵役の対象外の身分でありながら自分の意思で軍に志願した」
モット「士官学校でも優秀な軍人だったそうだな。それらを考慮して全ギルドソルジャーの教官に適任だと僕は思う」
リリンダ「こ、光栄であります!」
モット「必要に応じて僕のPTに誘うがそれ以外は教官として彼等を訓練してやってくれ、リリンダ中将!」
リリンダ「いきなり中将でありますか!?」
モット「ちなみにサカキは特務大将、マルチダは一等兵、ウオ君はモトマチシティー市長、ミニンは少佐、上級冒険職の幹部と怪人は戦闘力によって少尉から大佐だ!」
サカキ「お、俺が大将…」
ミニン「誰が少佐やって!?」
ウオヘイ「はははっ、私が市長とは光栄だ」
ミニンとウオヘイが本部から現れた。2人はモットが留守の間に怪人の研究開発を行っていたようだ。
モット「丁度いいとこに来たな、マルチダ、リリンダ、コイツは僕の同級生で下僕だ。科学班を任せている」
ミニン「まったく、勝手に本部を大規模改修させたり、新メンバー増やしまくったりして…」
モット「それはさておき、そろそろ例の研究を見せてくれないか?」
ミニン「その前にお嬢さん方に簡単な自己紹介を」
モット達はその場で簡単な自己紹介を行うと、ミニンに案内されて本部地下にある彼の研究施設へと向かった。
地下の研究施設には白衣とマスクを着用したミニン配下の科学班と数名の怪人が待ち受けていた。
モット「コイツ等は怪人か?」
ミニン「そうやで、モットさん達がいない間に自作した怪人の他に、この前送ってくれた魔物強化装置を復元して作り出した怪人もいるんだ」
モット「復元できてたのかアレ…」
ウオヘイ「ミッドカット支部にいる実体化プログラムの消毒マン君達のサポートのお陰だ。実は私も少し手伝った」
ミニン「さらに改良を加えて部位改造等のオプションも付け加えた。緊急用手術装置としても機能するんだよ」
ミニン「ベースとなる素体は人間を含む生き物、ロボット、魔法生物、こちらの制御可能となる条件さえクリアしていれば、一応何でもOKさ」
ウオヘイ「殆どが消毒マンが怪人製造に関しての情報を検索で得られた技術だ。私達はその技術にアレンジを加えてみた」
ミニン「それと私がモットさんの出した新メンバー募集に人体改造大好きなマッドサイエンティストも募集と付け加えといた。おかげで科学班の技術が向上したよ」
モット「そういや理系の冒険職の新メンバーが一気に入った時があったな」
サカキ「それで新怪人がこんなにいるのか」
リリンダ「僕達の仲間がこんなに…」
ウオヘイ「他の怪人はマジックファイターにジョブチェンジしたドロン君と依頼中だ」
ミニン「とりあえずここにいる私の配下から紹介しよう。科学班の再生怪人だよ~ん」
モット「倒された怪人か?」
ミニン「いいや、再生能力を持った科学班所属の怪人達だ」
ミニンは最初に刑務所タウンの脱走者で意気投合して自らの右腕となった怪人2人を紹介した。
フラスコ女「コードネームフラス子です。貴方様のお陰で自由の身となった上にほぼ不死身の肉体を得ました」
刃物の男「同じくメスリウスでございます。ミニン班長の元で人体を幾らでも切り刻んでよいとのことで…」
モット「ああ、凶悪殺人犯の区画にいたな」
ミニン「お次はジャッジメン徒のホムンクルスを飼いならして作った怪人だよ」
キノコ怪人「ジゼガゾベザガ!」
モット「これってモンスが召喚した!?」
ミニン「コイツはキノコ怪人。ジャッジメン徒にいたキノコのホムンクルスを改造した。言葉は何言っているか分からないけど、ホムンクルスの時からこちらへの敵意が無く仲間になりたそうにしていたんだ」
虫男「我はゴキブラーだゴキ、ゴキゴキ虫をベースにエビ怪人の兄貴と同等の改造で作り出されたゴキ」
ヒトデ怪人5体「…」
ミニン「こっちの量産型怪人は光線ヒトデ、エビ怪人の蟹光線を再現する為に私が人造ヒトデとAIを組み合わせて作った生体砲台だ」
モット「蟹光線撃てるのか…」
ミニン「勿論、運用には科学班数名のアシストが必要だけどね」
ミニン「そういえばマルチダさんは人肉を食べるんだって?」
マルチダ「ああ、普通の食事もできるが、人の血肉を取らないと魔力が落ちてくる」
ミニン「それなら、失敗作の肉塊と人造血液を提供しよう」
マルチダ「悪いな、ついでにキメラにも食わせてやってくれ」
ゴキブラー「我も好物だ、分けてくれゴキ」
ミニンは培養した人肉と血液を用意した。マルチダはキメラを召喚して人肉を与えた。食事中のキメラは時々ゴキブラーと目が合い、ひきつっている。
モット「生か、せめて焼けよ…」
サカキ「ば、バイオでもオエーッ!」
リリンダ「サカキ上官殿大丈夫でありますか?」
次にミニンはモット達を消毒室に入れて謎のクリーンルームへと案内した。そこには人の入る大きさの円柱状の水槽がずらりと並んでおり、中にはスケルトンやオレンジ色の怪しい液体が入った。
モット「何だ?このドラム缶よりデカい試験管に入ったスケルトンは…」
サカキ「いったいコレは何だ?」
リリンダ「スケルトンが瓶詰めに!?」
モット「こっちのは血管と肉が付き始めている。もしかして兵士の培養!?」
ミニン「いかにも!私のインチキ臓器培養を人間に擬態できるモットさんのDNAで応用してと…」
ミニンの説明ではモットのDNAからコピーした人造細胞を含んだ培養液を作成して、魂を憑依させたスケルトンをその培養液が入った水槽に入れ、人造細胞が一定量付着したスケルトンに擬態魔法の術式と人体情報の信号を送ってスケルトンを人間に擬態させている原理らしい。
ミニン「微調整さえうまくいけば完成まであと一歩だよ」
モット「僕のクローンとは違うのか?」
ミニン「うーん、肌や毛の色素は同一になるけど、使うのはあくまでもモットさんの細胞のコピー、本物だとモットさんの変身次第で連動して骨に戻ったりするからね」
ミニン「それにスケルトン全体を人造細胞の肉で覆うのではなく、擬態魔法も併せて使うことで短期間で人体とほぼ同じ機能が得られるはずだ」
ミニン「半アンデッドと言ったら分かりやすいかな、ちなみに生殖機能は無いよ!」
モット「(マルチダに聞かれたら!?ってあっちで人肉を食っているか…)」
モット「ミニンちょっと2人で話したいことが…」
モットはミニンと培養カプセルの裏に行って凍ったポーション瓶を渡した。
モット「…コレを調べてくれ」
ミニン「ほほう、これは興味深いサンプルっすね」
モット「結果は僕だけに…絶対に誰にも言うなよ!」
ミニン「冒険者アカデミー時代の付き合いでしょ。そんな意地悪しませんよ」
ミニン「だけど、私がいいって言うまではアンデッド化はしないでね。コレも擬態魔法解除に連動して消えるから」
モット「ああ、コレのせいかずっとめまいがするんだ、しばらく人間体のままでいる…」
ミニン「直ぐに終わりますよ、結果は後程っと」
ミニンはクリーンルームの入り口にある培養液分析室へ行くと、モットから受け取った新しいDNAサンプルを顕微鏡に入れた。その様子を人肉を食べ終えたキメラが意味深に見つけていた。
スケルトン培養のクリーンルームから出ると、ウオヘイからドロン達が戻ってきたとの知らせがあった。新しい他の怪人を一目見ようとモット達は本部の広間へ向かった。
ドロン「モットの旦那、俺はマジックファイターになってきたぜ!」
モット「そうだ、早速ニキータ達の手伝いに回ってくれ」
ドロン「お、あの2人は重要な仕事を任されているって聞いているが何処にいるんだっけ?」
モット「出来たばかりのミッドカット支部で多勢に無勢となっている。そこの新入りに案内させるから三賢者PTで支部長を援護してやってくれ」
ドロン「了解したぜ。ついさっき終わらせたドラゴンの討伐じゃ物足りなかったんだ。じゃあな!」
ドロンは新入りギルドソルジャーと共に意気揚々と本部を飛び出していった。
サカキ「って事務や新人採用だよな?」
モット「ああ、新人募集はまだやっているからな、ドロンなら体力もありそうだし、ウチのギルドの戦闘力PRにも役に立つはずだ!」
ウオヘイ「では残りの新怪人メンバーを紹介するハヤトとカリアからだ」
顔に機械を埋め込んだ使用人姿の男女がモットの前に跪いた。
執事「お久しぶりです、ご主人様。私達を覚えていませんか?」
メイド「ご主人様のお家で家事を担当していたカップルです!」
モット「確かジャッジメン徒との戦闘後にマグマの直撃を受けて死にかけていたって聞いたが」
ハヤト「私達は蘇生魔法に失敗したせいで変な呪いにかかって昏睡状態になっていたのですが」
カリア「ミニン様と消毒マン様のお陰で何とか復活いたしました」
ミニン「この2人の全身の70%をサイボーグ化した上で消毒マンに作らせた昏睡状態から意思を予想してAIに変換するプログラムで改造人間として復活させることが出来たんだ」
モット「どうやっても起きないから、機械化してAIを入れたと。まあ、これで幸せならいいか…」
ハヤト「その通りです。今の私達はとても幸せです。カリアとは呪いやプログラムで繋がっていますし、どちらかが倒されても片方が無事なら再生できるんです!」
カリア「所属は科学班の再生怪人ですが、ご主人様の召使兼親衛隊としてお仕えいたします」
ミニン「怪人名はハヤトが執事ガーディアン、カリアがロイアルメイド。実はこの2人をクローン量産しようと考えましてね…」
サカキ「ミニンらしい趣味だ…」
ミニン「おっと、サカキさん。貴方の部下にこの2人も加えてやってくださいな」
続いてサカキの前には刑務所タウンから脱走したウサギ獣人の兄弟が現れた。
ウサギ獣人姉「アタイはバニー、両肩に機関銃を改造して取り付けたからバニーバレットって呼んでちょうだい!」
ウサギ獣人弟「ワシはラビット、リリンダ殿を参考に炎の魔法属性を強化したラビットファイアーじゃ」
バニーバレット「まあ、私は獣人だからアンタの配下に回されたんだけどね…」
ラビットファイアー「姉者がご無礼を、御大将…」
サカキ「成程、俺のビーストファイターズに加わりたいのか、いいぞ。ガンナー系獣人もいるし、ちょうど炎使いが欲しかった所だ!」
サカキ「お前達は俺の側近のソードマンペンギン、アリゲリアン、N阿弥陀仏の三獣将に面倒を見させよう」
モット「そこの赤い奴は刑務所タウンに混じっていた銃撃の得意なアンドロイドだったな」
女性型アンドロイド「私は元人間だシェラ!今は散弾銃と合成された美人怪人ショットシェラーだシェラ!」
ミニン「私がどう分析してもコイツはロボットなんだけどね…」
モット「まあいい、とりあえず今日は解散だ。僕は明日以降しばらく本部の事務に徹する。他の者は指示を出すまで待機、休養なり適当な依頼をこなすなり好きにしてくれ」
サカキ「了解だ!」
一同は解散した。翌日の昼、ミッドカットのドラコソ議員からの依頼報酬が届いた。それは中古の貨物飛行艇3隻と年老いた乗員60名、ミッドカット当局が違反行為を行ったギルドから没収した大量の武器弾薬、追放を言い渡された下級冒険者200名、首狩り荒野で大破したと思われる東の帝国の戦車の残骸、大量の消費期限間近の保存食糧だった。
モット「うーん…」
サカキ「何だか報酬に厄介払いも混じってないか?」
リリンダ「これって、僕が暴走時に破壊した戦車でありますよ…」
ミニン「ポンコツ飛行艇が3隻も、粗大ゴミか」
ウオヘイ「いくら報酬とはいえ、ガラクタの押しつけは御免被る」
整備士「若造、竹槍級飛行艇を舐めるでない。第三次大戦では金貨連邦陣営の主力飛行戦艦として東の帝国陣営とドンパチを繰り広げたのだ」
操舵士「左様、大戦が終結して武装の殆どが取り外された今でもこの半重力ユニットは朽ちることなく作動しておる。今では違法となったが大型超合金ロボを数機搭載してもびくともせんぞ」
船長「それにワシ等はミッドカット一の過激派飛行艇乗組員組合だ。メンバーの半数以上が第三次大戦を生き延びた戦士、戦争の事ならワシ等に任せろって」
リリンダ「カタール准将より年輩の方もいるでありますね、興味深いであります」
モット「確かに飛行艇には優秀な乗務員を付けるって書いてあったな」
整備士「俺達はただ当局と交渉したまでよ」
年老いた乗員達の話によると彼等は雇用主のミッドカット運営飛行艇公社や各企業の飛行艇に長年勤めていたが、年齢を理由に不当な扱いを受けることが多くなり、特に退職を強いられる様に嫌気がさして同じ境遇の乗員達で組合を作って過激な団体交渉を決行した。それによって当局から完全に犯罪者扱いを受けて実刑と引き換えにモット団に追放されてきたそうだった。
モット「つまり流刑だな」
サカキ「確かに、送られてきた冒険職連中は刑務所タウンに引き渡される予定だったみたいだぜ」
モット「僕が潰したからこっちによこしたのか。とりあえず貰っとくだけもらっとくか」
操舵士「そうこなくっちゃ、ギルドマスターの小僧」
整備士「給料は安くていいから俺達を死ぬまで飛行艇に乗せてくれ、何なら戦闘艦に改造してやる」
モット「分かった。必要な物資は用意できそうだから早速ウチの整備班達と取り掛かってくれ、戦車の修理もついでに頼む」
整備士「帝国の戦車か、武装は簡易化するが修復は可能だ」
モット「できれば対人武装はそのままで」
船長「それにしても旅客用の飛行艇を数隻占拠して上空から当局のタワーに棘鉄球を落としかけただけで追放ってのもあんまりだろ?」
ミニン「いや、やり過ぎだ爺共」
整備士「あと一歩のところで、ミッドカットのバリアに防がれてお縄となったが、若い奴らのへなちょこギルドバトルよりは楽しかったぞ」
ウオヘイ「こんな過激派を住まわせる訳には…」
モット「過激だろうと、年老いていようとも戦力強化には役に立つ。それに最大の防御は攻撃性に限る」
操舵士「小僧、話が分かるではないか」
モット「次は追放された冒険者か、そこの6人いったい何をやった?」
追放巫女「PT内での置き引き」
追放魔法使い「禁術スクロールの転売」
追放盗賊「クラフトエリア内での荒らし、爆発物設置」
追放錬金術師「偽金による回転式無作為装備販売機の不正使用」
追放神官「淫魔店の無銭長期居座り…」
追放アサシン「大手ギルド事務所内へ侵入して、偽アナウンスでの悪戯、かぼちゃ鍋パーティー」
モット「何だ、大した罪じゃないな、僕なんか学生時代に閉じ込められたVRゲーム内で自害すれば出られるってデマ流して大勢の死人を…」
追放者一同「えっ!?」
モット「おっと、今のは無しな!」
追放者一同「ざわざわ…」
モット「それでは改めて、ミッドカットを追放された冒険者諸君、怪人ギルドモット団へようこそ。ここではどんな奴でも味方になれば歓迎だ(僕の手駒になればな)」
モット「追放冒険者は各冒険基本職の幹部から説明と実力検査を受けてこい。本部の登録窓口に報告後、能力に応じて階級と住居を支給する」
モット「一定基準に満たない者はギルドソルジャーとしてリリンダの元で訓練を受けてもらう。心して挑め」
モットは話を終えると本部で事務作業に戻った。
モット「先ずは振り込まれた報酬金から迷いの森探索の経費を差し引いてと、採掘した希少鉱石の売上金もあったな…」
モット「次は強化改装中の本部での要望だな」
設備備品担当「ギルドマスター、その件でメンバー達からトイレを増やして欲しいとの要望が多数来ております」
モット「今度暇なときに便器を錬成しておくか」
数時間後、モットは依頼関連の報告書に目を通した。
モット「ん?3組のPTがロストで依頼失敗ってあるぞ。一方はギルド内での依頼で2組ロスト、もう一方はバ浜か」
モット「依頼報告担当、この依頼内容について詳細を調べておけ」
依頼報告担当「了解しました」
ミニン「モットさんー!」
モット「何だ?」
ミニン「例のアレの検査結果ですが…」
ミニンの報告を受けたモットは少し落ち込んだ。
モット「モンスの奴が言ってたから分かっていたことだけど…」
ミニン「非ウイルス性ゾンビのアレを観察したことはあったけど、同様に不能状態だったね」
モット「つまり中途半端に生きているアンデッドには無理ってことか」
ミニン「出来たとしても魂が宿らないからねえ、後から憑依させるって手もあるにはあるが、一度死体から抽出したアレに蘇生魔法を使ったほうが早いという…」
モット「死体になればできるのか、しかし僕は擬態だからな」
ミニン「口直しに良い知らせの方も、実はモットさんのアレからスケルトン培養にヒントを得たんだよ」
モット「何?」
ミニン「擬態培養のスケルトン達には生への執着が足りていなかった。生まれてきたいとかもう一度生き返りたいとかと言う願望だね」
モット「よく分からないが応用できるんだな」
ミニン「擬態でも向かう所には向かおうとしていたので、その原理を培養液に組み込むことが出来れば完成も間近だよん」
モット「分かった。後は何が必要だ?」
ミニン「今はありったけのスケルトンと人造でもいいから魂が欲しい」
モット「よし、できるだけ科学班に回そう」
ミニン「スケルトン作成と魂憑依は黒巫女同盟にやらせるから、モットさんには人骨と魂の回収をやって欲しいな…」
モット「任せとけ!」
ミニン「回収用の圧縮壺だよ、白いのが人骨、茶色いのが魂。敵対者の魂でも後で記憶リセットと洗脳をやっておくから気にせずに集めておくれよ」
モットはミニンから人骨と魂回収用の入れ物を渡された。
依頼担当「ギルドマスターお話し中失礼します。先ほどのPT全滅依頼の詳細が判明いたしました。こちらです」
モット「えーと、何々、犬死山の調査依頼と、バト大橋の心霊スポット及び海底財宝の都市伝説調査依頼だって!?」
ミニン「心霊スポットとはちょうどいいタイミングだ。この世の未練、生に執着した魂を回収するチャンスだよ」
モット「うーん、バト大橋付近はこの前に行ったから後にしよう。先にギルド内での失敗依頼をマスターとして消化しておくか。依頼主はウオ君で場所は犬死山みたいだし…」
ミニン「そんなー」
モットはギルド内でPT2組をロストさせた依頼の後始末をすることにして、書類整理を適当に終わらせた。
フラス子
性別:♀ 年齢・本名不明
ミニンの助手、モットの襲撃によって刑務所タウンから脱獄した。元理系学生で人体を爆弾に変える劇薬をばら撒いた罪で有罪判決を受けている。実験器具のうちフラスコが大好きで、ミニンによる合成改造によって割れても再生できるガラスの頭部を手に入れた。
メスリウス
性別:♂ 年齢・本名不明
ミニンの助手、フラス子同様に刑務所タウンから脱獄している。元研修医で対象を追尾して切り刻む魔法のメスで医療機関を血まみれにした罪で起訴されていた。ウオヘイによる結合錬成改造で両手の爪をメスに変え誘導兵器とし発射できる。また頭部にある巨大なメスの刃は自己修復合金であり、金属を摂取することで再生できる。
キノコ怪人
性別:不明 年齢22
ミニン配下、元はジャッジメン徒を率いたモンスが召喚したキノコのホムンクルス。実はモンスその兄マモーが子供の頃に初めて作ったホムンクルスであり、無垢な子供の精神を宿している為、攻撃的ではなかった。ミニンに回収され怪人となってからは回復担当を任されている。一応人間の言葉は理解できるが意味不明な言葉を話している。
ゴキブラー
性別:♂ 年齢1
ミニン配下、モットが送り届けた魔物強化装置を復元した際のテストにゴキゴキ虫から作り出した怪人。エビ怪人とほぼ同じメカニズムを持つがデータ収集等の隠し機能は除去されている。人体に有害な環境への耐性が非常に高く、ある程度の毒や放射線などにも耐えられる。解毒剤や抗体等を体内で生成できる。
光線ヒトデ
性別:不明
ミニン配下の試作量産型怪人(移動砲台)、エビ怪人の蟹光線を再現する為に作り出されており、貫通力の高い光線を発射することができるが、AIも含め自立行動は未完成の為に科学班による操作とアシストが必要になっている。理論上巨大化状態での光線発射が可能。
科学班
ミニン配下の一般助手。全員白衣で防毒マスクを着用している。実験体の暴走に備えて武器は投擲用神経毒ポーション、スタンロッド、火炎・冷気噴射機で必要に応じて大型の防護シールドも使用する。また、人造肉を移植したスケルトンをサイボーグ化して単純作業をやらせているドローン助手もおり、それらは区別の為に白衣に赤い2本線が入っている。