第2話 初めての怪人
ギルドメンバー達と別れたモットは、学生の時から下宿している貸部屋に戻り、必要な荷物をまとめた。
ここの家賃は既に1年分払っており、引っ越しの手配もしていないので、またここに来ることもあるだろうと思いそのままにしておくことにした。そして翌朝、冒険者組合安定所宛てのへギルド脱退の書類を持ち出発した。
故郷への帰省には空間転送や飛行艇が速く安価であるが、ミッドカット南東の都市国家ハイリパインにギルドメンバーに使えそうな同級生が住んでいるので、無理やり勧誘するためにマシロタウンからの船のルートに決めていた。
モット「(そういえばアイツ、なんだかやばいことになったと言っていたけど生きてるかな?最後に会った時にはバイオ臓器工場でうまくやれていたみたいだったけど)」
モットがミッドカットの東ゲートを通過して船乗り場のあるマシロタウンへの入り口に到着すると時刻は正午だった。
辺りを見渡すと何やら怪しいガラクタの山を売っている男がいた。モットはそのガラクタの中に一際目立つ扉のついた大きなタンクのような装置に興味を持った。
ガラクタ売り「お客さんお目が高い。ソイツは魔物強化装置だ」
ガラクタ売りの話では、その装置はモンスター等の生物を人間型に変身させ下僕として働かせることができるらしい。
ある軍事国家と提携した企業が試作したが、何らかの事情で民間に払い下げられたらしく、聞くところによると最近ミッドカットの路上でよく見る着ぐるみのようなマスコットモンスターはこの装置で生み出された代物らしい。
モット「でも安全かどうかわからないなぁ」
ガラクタ売り「何なら試してみるといい、さっき来たお客さんは市場で買った魚を半魚人みたいにして剣術の練習台にしていったよ」
ガラクタ売り「これで人型になったモンスターや動物はAI魔法で喋れるし、主人には絶対服従する。死んだやつでもOKだ」
モット「うまく使えば実家での労働力やギルドメンバーになるかもしれないな」
怪しい装置の購入を決めたモットはガラクタ売りの男に装置の使い方の実演を頼んだ。どれを人型にしてみるか考えたモットはバッグの中からイエロースライムの封印カプセルを取り出そうとしたが危険と思い、下宿先から持ってきた小型アクアリュウムで飼育しているエビで試すことにした。
ガラクタ売りはエビを取り出し装置に入れると外付けのコンピュータを操作した。
モットを主人と思わせるプログラムを施して、万が一に備え強化対象への支配強化として自滅魔法を組み込んで、装置を起動させた。数分後、装置の扉が開いて生臭い煙と共に人型のエビが現れた。
モット「よし、エビ怪人と名付けよう!」
エビ怪人「エビエビーン!!」
ガラクタ売りは慣れた手つきで分解した魔物強化装置を梱包してモットの実家への発送準備を整えた。品目がモンスターフィギュア出力機と偽装されていたのが気がかりだったが、2~3週間後に確実に届くのでモットは承諾した。
エビ怪人はガラクタ売りの言っていた通りに言葉を話せモットの言うことを聞く、一定の常識も刷り込まれているようだった。
モット「子分の証に僕のベルトの予備をやろう。これから作るギルドのエンブレム入りだ」
モット「エビ装備をフルコンプした冒険者って設定でついてこい」
エビ怪人「了解エビ」
新たな仲間エビ怪人をPTに加えたモットはハイリパインへ向かう渡し船に乗り込んだ。
ガラクタ売り「(怪人と付けられてヒヤッとしたが、あの勇者ならいい戦闘データが取れそうだ)」
ハイリパインへ向かう船内、モットはエビ怪人にこれからの計画を話していた。
モット「さっき話したように僕はギルドをつくろうと思っている。君以外にも仲間が必要だ。ハイリパインには冒険者アカデミー時代の子分が一人いるので、そいつを勧誘しに行くんだよ」
エビ怪人「そうですかエビ、仲間が増えるといいですエビ」
しばらくして船はハイリパインの港へ入った。モットとエビ怪人は旧友の宿舎へ向かった。