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第18話 廃工場の怪人

 抽選で受注権を得た依頼、それは廃工業地帯のある区画を管理する内容であった。また最近、廃工場で設備の火事場泥棒を働く集団が目撃されており、生死を問わず彼らの討伐をすれば、追加報酬があるとの事だった。

 受注の手続きを終えたモットはサカキ、消毒マン、ローズ(消臭ウーマン)、ニキータ、ポニョンを加えたメインPTと、その支援を行うギルドソルジャー6名からなるサポートPTの2組を編成して、ミッドカット西門を後にした。


モット「ミッドカット城壁外にある廃工業地帯は当局の管理下だ。区画によっては一般開放されていたり、ダンジョン演習にも貸し出されたりしているけど、基本は採集や著しい破壊は禁じられている」


サカキ「成程、その委託管理を俺達がやるんだな」


モット「たまにダンジョン用の廃工場から迷い込んでくる冒険者や学生もいるからね。彼らに適切な説明を行って許可された区画へ誘導するのも仕事だ」


ニキータ「寝泊りには管理者用の詰所と野営の道具一式が用意されているみたいですね」


ポニョン「隣接する有料貸出ダンジョンに出没するモンスターへの餌やりもあるのね」


モット「派手に戦闘したかったけど少し残念だな、数匹なら暇つぶしに狩っても良いと言われたけど」


消毒マン「それにしても大兄貴、オイラ達は来ても良かったのか?」


サカキ「大兄貴?」


ローズ「お兄ちゃんは所有者を兄弟のように慕うようにプログラムされているの」


モット「まあいい、君達は衛生面での活躍に期待できそうだな」


ギルドソルジャーA「マスター、ここが詰所のようです!」


猫耳兵A「御大将の御友人、ここには冒険者誘導用のプラカードがいっぱいありますニャ!」


サカキ「モット君の呼び名を統一した方がいいような…」


モット「出入り口になる場所はプラカード持って立っていないといけないのか。そうだ、コイツ等を使えば!」


 モットは呼び出したスケルトンに管理者の腕章をつけるとプラカードを持たせて立ち仕事をやらせた。


ニキータ「所で、ミッドカット支部は大丈夫なんでしょうか?」


モット「面接に来た奴らはみんな採用しろって言ってある」


ポニョン「そういえば先に履歴書を送った人達の中に年配者や引退冒険者もいたけど…」


モット「本部での配属になるが、見張りくらいには使えるだろ。引退者なら幹部候補生のスキル育成にも役立ってくれる」


サカキ「その分浮いた本部の若い人員を回せるな」


モット「そんな所だ、さてと仕事仕事」


 準備を整えたモット達は依頼で指定された区画の管理に取り掛かった。管理の仕事に慣れてきた翌日の昼下がり、モットは崩壊したある工場の廃材の中に負のオーラを感じた。


モット「なんだかここは様子がおかしい。スケルトン、ここの廃材を退かせろ」


 作業用の筋力補助グローブを装備したモットのスケルトン達は廃材を退かした。するとそこには斬撃で切り倒された壁や柱、腐臭のする隠し扉と地下へと続く階段を発見した。


サカキ「自然に廃工場が倒壊した訳ではないな、何者かが全部ぶった切って瓦礫に変えたようだ」


モット「サカキ、そんじゃそこらの剣士の仕業ではないよね?」


サカキ「ああ、こんな斬り方をするのはかなり熟練の魔法剣士、いや上級魔法騎士の仕業だ!」


ニキータ「何かの隠蔽工作なのは確かですね」


ポニョン「どうする、行ってみる?」


モット「ああ、管理を任されている限りな。消毒マン、ローズ、スケルトン、ついて来い。他は毒ガス等の安全確認ができるまで待機しろ」


サカキ「おう!」


モット「人間体解除!」


消毒マン「ひゃーっ!!大兄貴が骸骨に…」


ローズ「きっとマスターはこういう種族なのよ」


 モットはアンデッド化すると隠し扉の奥へと進んだ。途中消毒マンがこの場所は後から改装により作られた秘密基地のような施設だと断定した。そしてローズと共に最新のシステムコード内に侵入して、施設のシステムを復旧した。


モット「すごいな、さっきまで実体化してたのに…」


消毒マン「へっへっへ!コードさえあれば、オイラ達はどこにでも侵入できるし、壊れたシステムも修復できるんだ!」


ローズ「セキュリティが厳重な所は無理だけどね」


モット「ん、この先に送ったスケルトンが死体を感知した。気を付けろ!」


 モット達が施設内の広い空間に行くと、そこは惨劇が広がっていた。集められたと思われるこの施設にいた人間が全員斬り殺されており、一部の電灯以外の設備が全て破壊されつくしていた。


モット「これは…何かの口封じに始末されたみたいだな」


消毒マン「直しますか大兄貴?」


モット「そうだな、できる限り破損の少ない機械をって、これは!?」


 モットは見覚えのある機械を見つけた。それはエビ怪人を作った魔物強化装置の残骸だった。


モット「消毒マンはこれをできるだけ直してくれ、ローズはここの死臭の消臭を頼む」


ローズ「任せて、遺体発見現場の処理プロセスを実行するよ」


モット「僕は死体を殺人泥爆弾で処理しておく。こいつは!?」


 モットは死体の中から以前自分に魔物強化装置を売りつけたガラクタ売りらしき人物を発見した。その後、サカキ達をここに呼び寄せて、事情を説明した上でニキータに蘇生を頼んだ。


ポニョン「まさか、エビ怪人さんを作った機械がここにあったなんて…」


ニキータ「死亡者の魂を召喚確認、リバイブ!」


モット「少し吐き気がするが魂が見えるぞ(でも何だか美味しそうな気が…)」


 ニキータによる蘇生は成功した。ガラクタ売りの死体から腐敗部分が治るように消えて、鼓動や呼吸が始まった。


ガラクタ売り「ぐはっ!!」


モット「僕を覚えているか?エビで怪人を作った勇者だ!」


ガラクタ売り「あの時の…兄ちゃん!?」


 モットは簡単にエビ怪人を作った後の話をして、ガラクタ売りに説明を求めた。


ガラクタ売り「確かに騙してすまなかった。俺もマッパカンパニーを首になって妙な仕事をやるしかなかったんだ」


モット「怪人のデータ収集だっけか?」


ガラクタ売り「そうだ、旧型の魔物強化装置で怪人を作って冒険者達に売りつけて、戦闘や成長のデータを収集させていたんだ」


モット「アレで旧型だと?」


ガラクタ売り「雇い主の側で最新型の装置は既に完成しつつあったが、最新の強すぎる怪人でデータ収集する訳にもいかないので、旧型をこっちに回された」


ガラクタ売り「また、怪人達は倒されるか、一定の成長をすると体内のデータをこちらに転送するように細工してあった」


ガラクタ売り「そのデータを俺達は雇い主に渡せるように破損部分の修復や必要な部分だけを整理していたんだ」


モット「エビ怪のコアは破壊されたけどデータは?」


ガラクタ売り「実は一部転送されていた。怪人のコアは破損を受けると重要度の高いデータを衛星通信でこちらに送るように作られている」


モット「衛星ってあの宇宙に浮かぶドラム缶か、それを使って雇い主に渡したんだな?」


ガラクタ売り「蟹光線のコマンドで撃てる光線と冷気を帯びた光線の2つのスキルだったな、それ以外の情報は不要と判断して処分した」


サカキ「なるほどな、君達を殺してこの施設を破壊した奴らが雇い主だな」


ガラクタ売り「そうだ。突然雇い主の使いの者達から緊急連絡があると言われて、全員ここに集められた。そして、もう用済みと言われて雇い主直属の青い鎧の騎士達に…」


モット「一体誰なんだ雇い主とアンタ達を殺した奴は?」


ガラクタ売り「雇い主はピー…」


 次の瞬間、ガラクタ売りは吐血して倒れた。ニキータが回復魔法を使用したがもう生き返ることはなかった。ガラクタ売りの魂はロストした。その体を調べると内部に斬撃が仕込まれていた。


ニキータ「ダメです。肉体は治っても魂が無ければ…」


サカキ「蘇生を受けて生き返っても、特定の言葉を発すると魂ごと内側をズタズタにしたみたいだ」


モット「口封じにしては大がかりだ。ピーだけじゃ分からないし」


サカキ「青い鎧の上級魔法騎士、まさかな…」


消毒マン「大兄貴、この装置を直そうとしたけど壊れすぎて無理だったよ。だけど、およその構造とプログラムの断片は記憶したよ」


モット「そうか、残りの装置やコンピューターからもありったけの情報をかき集めてくれ。後で誰にもばれないように本部へ転送する」


 モット達は数時間かけて謎の施設から得た情報を集めると、この施設を再び隠すことにした。また、比較的破損の少ない魔物強化装置を1セット体内に取り込んだ。


ポニョン「そんな大きな機械まで、アイテムBOXって便利ね」


モット「みんな外に出てくれ、内部を土砂で埋めつくす」


 モットは土砂を召喚して隠し扉と施設の内部を完全に埋めていった。


サカキ「これで何事も無かったようになったな」


モット「ああ、他にばれると色々と厄介になりそうだからな」


ニキータ「残ったデーター回収と魔物強化装置の残骸を持ち帰るのは良いのですか?」


モット「そもそもあの連中が非合法に作った施設だったからね。これでなかったことになるから問題ない。いいな?」


ポニョン「私はモットさんに同意するよ」


サカキ「俺も、何も見なかった!」


ニキータ「だったら良いのですが…」


ギルドソルジャーB「モット様!」


モット「何だ?」


ギルドソルジャーB「例の火事場泥棒が出ました。スケルトン達と交戦しています」


サカキ「次から次へと、ここは刺激が多いな。いいぞ!」


 管理区画で火事場泥棒出現の報告を受けたモットのPTは急いで現場へ急行した。そこにはモットとサカキが見覚えのあるあの集団がいた。


赤忍者A「お主がスケルトンの親玉だったとはな」


青忍者A「何という因果」


黄忍者A「一緒にいるのは…ベスタで仲間をひん剥いた変態猫耳野郎!」


赤忍者A「廃工場の売れそうな部品を盗んでおったら、とんだ邪魔をしてくれたな。今度という今度は…」


青忍者B「今回は一撃必殺の忍術魔人殿のお出ましだ!」


 モット達の辺りに謎の煙が満ちてきた。


サカキ「む、これは不完全燃焼の毒ガスだ。まずいぞ奴らはこの煙を操って俺達だけに浴びせられるみたいだ」


モット「消毒マン、ローズ、生身の仲間を守れ!」


ローズ「任せて、私の消臭ジェルには人体への有毒ガス吸収機能があるの」


忍者A「無駄だ、奇天烈な人形を従えているようだが、今回の我らを率いるこのお方にはかなうまい。練炭魔人殿!!」


練炭魔人「しゅーしゅー。一酸化炭素中毒の術でしゅー」


ポニョン「うわー、なんかやばそうな怪人が出た」


モット「何だかこの前の奴とは違って忍者達より地位が高そうだ」


黄忍者「練炭魔人様は先代の頭領が作り出し、知恵を授けられた重臣の忍術魔人」


練炭魔人「どこからでもかかってこい、しゅー」


モット「僕らが適当に雑魚忍者の相手をする。消毒マン、ローズ、実践テストだ。コイツ等をぶちのめせ!」


 サイバーロイド兄妹は練炭魔人と戦闘になった。


消毒マン&ローズ「アルコールバスター引火爆炎!!」


練炭魔人「効かぬっしゅー、火炎放射!」


消毒マン「無効属性、エネルギー分析完了、ラーニングカウンター!!」


モット「敵の怪人の技をコピーしたぞ」


ローズ「私達は普段周囲の物質からアルコールを作り出して戦うけど、特定の属性から攻撃を受けた時に、一度だけその属性攻撃をコピーしてカウンターを放てるのよ」


練炭魔人「馬鹿めしゅー、炎の属性を持つワシに炎や可燃性の物質は効かぬしゅー」


モット「それならポニョン、2人に水魔法を!」


青忍者A「させぬ、沈黙の手裏剣!」


ポニョン「しまったわ!」


サカキ「ならば俺が、ウォーターカッター!」


黄忍者A「させない、雷鳴切り!」


サカキ「うっ!属性相性が…」


モット「ここであまり派手に暴れられない。(しばらく戦いが続くようだったら忍者達に恨みがは無いが殺人泥爆弾を…)」


練炭魔人「邪魔者を一気に毒ガスと火炎で包み込むしゅー、忍法チャージの術!」


 練炭魔人は大技を放つ為に、炎の魔力を集積した。すると、それに釣られて生きた気体のような謎の物体が吸い寄せられた。


赤忍者A「何ぞあれは物の怪か?」


青忍者A「こんな技は無かったはず」


黄忍者A「煙から人の手足のようなものが!?」


練炭魔人「炎の魔力を感じるしゅー、何だか分からぬが取り込んでやるしゅー」


モット「あの妙な煙、忍者達の技ではないのか!?」


練炭魔人「喰らえ大技、毒煙噴射引火の術ぅっ!!」


赤忍者「どうなされた練炭魔人殿?」


練炭魔人「ぶぶぶぶっぶっしゅーっ!!」


 練炭魔人は突然水を吐いた。


モット「何だか分からないが消毒マン、ローズ、その水をラーニングして撃て!」


消毒マン&ローズ「ウォーターショット!!」


練炭魔人「さっき取り込んだ煙からの水と外からの水しゅー、こりゃたまらんしゅー!!」


 練炭魔人は発生した水蒸気に耐えられずに爆発した。忍者達もその爆風で吹き飛ばされ、あっさり逃げ出した。


赤忍者A「くそー、火事場泥棒の達人である練炭魔人殿がやられた」


青忍者A「また負けた、頭領に叱られる」


黄忍者A「触手でのお仕置きはもうごめんよ!」


モット「よくやった消毒マン、ローズ。それにしてもあの煙は何だったんだ…」


サカキ「待てモット君、まだあの煙は消えてない」


消毒マン「謎の煙、いや気体から生命反応アリ!」


ローズ「炎と水の属性検出!」


 謎の気体は人の形になったと思うと、どこからともなく鎌を出して近くにいた消毒マンとローズを切り裂いた。サイバーロイド兄妹の体は光が散るように消えていった。


サカキ「うわっ、2人がやられた!」


モット「生命体からの物理は効くんだったな、それにしてもあの姿!」


 謎の気体が正体を現したその顔はベスタで見かけた属性怪人と同じドクロのマスクが付けられ、胴体は水素タンク、手足は左右で炎と水を帯びた部分に分かれ、頭部にはバケツを被っている。


モット「間違いない、ベスタ軍総統派の作った属性合成怪人だ!!」


サカキ「見た感じ2つの属性を持っている。まさか、コイツが制御できずに暴走した結果、帝国の1個大隊を皆殺しに…」


ニキータ「成程、炎と水を併せ持ち、しかもガス状に変化できる属性合成怪人。帝国のゾルダー達がバラバラな死に方をしていた訳です」


ポニョン「あり得ないわ、2つの属性の体を持つなんて、しかも炎に水は弱点よ」


モット「とりあえずこのバケツ怪人に応戦する(やられた消毒マン達には悪いが、レアな怪人は子分にしたい…)」


バケツ怪人「…」


 バケツ怪人は鎌に炎の力をエンチャントするとサカキに攻撃を仕掛けてきた。サカキはウォーターカッターで応戦したが、バケツ怪人は鎌の属性を水に変えてサカキの刀をすり抜けるとその体を切りつけようとした。


モット「危ないサカキ!」


 モットはサカキを突き飛ばしてバケツ怪人の鎌に両断されたが、直ぐに骨の体を繋ぎ直してバケツ怪人の手足を掴んだ。


モット「今だ、コイツに効く弱点属性を撃て!(やはり倒すのは惜しい)」


サカキ「炎だから水だけど、コイツは水も持っている、いや植物か…」


ポニョン「サカキさん電気を試してみて、私は氷を使うから」


サカキ「さっきはありがとう、そして許せモット君、雷鳴斬り!」


ポニョン「ちょっと冷たいわよ、ホーミングアイス!」


 しかし、バケツ怪人は2ガス状になることで、モットの拘束を振りほどいて脱出した。


モット「くっそ、すばしっこいな(ますます子分にしてやりたい)」


ニキータ「説得はどうでしょう?」


サカキ「急に何故だ?」


ニキータ「この怪人は軍の実験で作り出されて暴走しているだけです。先日のような殺戮は行いましたが、悪意のオーラは感じません」


ポニョン「そうね、結果的に私達を助けてくれたから」


モット「そうだな、この怪人は倒さずに説得するぞ(しめしめ)」


サカキ「モット君が決めたことなら、俺から一か八かで呼びかけてみるぞ」


サカキ「俺達は敵じゃない攻撃しないでくれ!」


モット「君はベスタ軍の脱走者、帝国ゾルダーも殺した。敵の敵は味方だ!」


バケツ怪人「僕ヲ…虐メル…皆テキ、フレアドーム…」


モット「ダメだ、みんな避けろ。範囲魔法だ!」


 何バケツ怪人の攻撃をモットとスケルトン以外の全員が躱した。


モット「(スケルトンはともかく、ここにいる仲間がコイツにやられでもしたら、僕に蘇生魔法は使えないし、僕が回復魔法使用中にダメージを受けかねない)」


モット「ポニョン、氷の壁でニキータを守れ、他の仲間は一時退散だ。サカキは僕とコイツの攻撃を引き付けてくれ」


サカキ「分かったぜ!」


バケツ怪人「アクアウエーブ…」


 バケツ怪人の魔法で地面から水が召喚された。


バケツ怪人「瞬間沸騰…」


サカキ「あっち!!」


モット「水を操って対象を飲み込んで熱湯に変える、帝国ゾルダーを茹で殺した合わせ技か(欲しいこの怪人)」


モット「サカキ、動くな、ロックポール」


サカキ「足をすまねえ、モット君は大丈夫か?」


モット「ああ、何とか熱湯位ならアンデット化した僕にはいい湯加減だ」


バケツ怪人「蒸気ストーム…」


 バケツ怪人はモットを覆った熱湯を蒸気に変えてニキータとポニョンに向かって飛ばした。


ポニョン「舐めないで、アイスバーン!」


ニキータ「モットさん避けてくださいね、シャイニングバン!」


モット「何とか攻撃を防いだみたいだけど、このまま誰か1人でも倒れたらPTは崩壊する(コイツを捕獲できる何かがあれば…)」 


バケツ怪人「モドリタイ…」


モット「ん?何か言っている」


バケツ怪人「僕ハ…人間ニ…モドリタイ…」


モット「もしかして、さっきのアレをうまく使えれば!」


 モットは体内に取り込んでいた魔物強化装置のカプセル部分を取り出すと足元に転がしてこう叫んだ。


モット「コレは怪人から人間に戻れる装置だぞ、入ってみろ!!」


バケツ怪人「本当ニ…」


モット「見せてやるちょっと待て!」


 モットはカプセルの中に頭部を突っ込むとその瞬間に自分の頭部だけを人間体に変えてバケツ怪人に見せた。


バケツ怪人「僕ニソレチョウダイ!」


モット「いいぞ入ってみろ!」


 バケツ怪人はガス状になってカプセルの中に入った。


モット「今だ!氷属性の攻撃だ!」


サカキ「氷点突き!」


ポニョン「ブリザード!」


バケツ怪人「ウグァアアアア!」


 バケツ怪人はカプセルごと凍り付いた。


モット「死んではいないな?」


ニキータ「確認します」


バケツ怪人「寒イ、動ケナイ…」


モット「大丈夫そうだ、キュアを使え!」


 ニキータはバケツ怪人が平常心を取り戻せるように何回かに分けて治療魔法を施した。するとバケツ怪人は落ち着いて会話が可能になった。念の為にポニョンが発射寸前の氷魔法の杖を向けたうえで、氷から解放してやった。


バケツ怪人「僕をどうするつもりでありますか?」


モット「君を我々のギルドにスカウトしたい。君はベスタからの脱走兵のようだが今のベスタは…」


 モットはベスタであった一連の出来事を話した。


バケツ怪人「カタールさんがそんなことを…」


サカキ「君はカタール派なのか?」


バケツ怪人「カタールさんは僕の養父であります。数回しか会ったことしかないけど、僕を引き取ってくれて生活費を出してくれたのであります」


サカキ「待てよ、それって実験場の爆発で死んだリリンダ」


バケツ怪人「僕がそのリリンダであります。あの日、僕を虐めていた同期の3人と一緒に実験場の合成装置がある部屋に連行されたであります」


リリンダ「それまで虐めていた理由を実験の為だといきなり言われて、動揺した僕は怪しい機械に押し込まれたであります」


リリンダ「僕が抵抗して暴れたら、水の入ったバケツで殴られて、その勢いで機械のカプセルに入ってしまい、投げ込まれた水素ボンベも一緒に合成されたであります」


モット「それで混乱したまま研究施設を吹っ飛ばして首狩り荒野まで逃げ込んでいたのか」


リリンダ「帝国の人達を僕が殺してしまったでありますか?」


サカキ「見事に全滅させてくれた。お陰でカタール准将や俺達が逃亡できたんだ」


リリンダ「僕は…人殺しの化け物であります!こんな姿でもう生きてはいけないであります。どうか、僕が人間の心を保っているうちに…」


モット「早まるな、僕も人殺しの化け物だ!」


リリンダ「!?」


モット「その姿を気にするなら僕を見ろ、魔物血族者でアンデットだ。君と同じ異型の姿をしているだろ?」


リリンダ「貴方は一体何でありますか?」


モット「怪人ギルドモット団ギルドマスターモット・A・じゃしんだ!」


リリンダ「アンデットが人間のギルドを…」


モット「僕のギルドには種族や容姿関係なく多くの仲間がいる、怪人もだ。君の居場所を用意しよう」


リリンダ「でも、貴方は人間に化けられるけど僕は違うのでありますよ」


モット「姿が気になるのなら、人間に化けられる擬態魔法を教える。ニキータとポニョンも手伝ってくれるな?」


ニキータ「了解です!」


ポニョン「いいわよ、でも代わりにさっきの合わせ技教えてちょうだい」


???「オイラ達もお役に立てれば!」


モット「消毒マン!?生きていたのか」


ローズ「私もいるわよ!」


消毒マン「実は戦闘前に大兄貴のギルド端末内にバックアップを取って置いたんだ」


消毒マン「後はリリンダちゃんにやられた瞬間にギルド端末に自分の断片を潜り込ませて復元作業を行っていたんだ」


 再生が終わったサイバーロイド兄妹はモットのギルド端末から飛び出してきた。


リリンダ「プログラムが実体化!?」


モット「さあ、どうする?」


リリンダ「このリリンダ・クリータ・カムイ軍曹、新たな司令官殿にお仕えします」


モット「あのカムイの一族だったのか!?」


リリンダ「とは言っても僕は分家の末端でありますよ」


 こうしてベスタ軍の怪人かつ脱走兵リリンダが512人目の新メンバーに加わった。リリンダはモット団の依頼を共に手伝い、終了するまでの間に人間体への擬態魔法を習得して元の姿に戻ることが出来た。また、怪人体はバケツビビンバとしてモットから命名を受けて、しばらくモットのPT要因として行動を共にすることにした。


サカキ「所でリリンダはミッドカットでの顔出し生活は大丈夫か?」


モット「大丈夫だよ、反乱鎮圧後のベスタの情報を消毒マンたちに調べさせたら、死亡扱いになっていた」


ニキータ「それにミッドカットとベスタの中は険悪です。1番大道路に進軍しようとしたベスタ軍にミッドカットの元老員議員が直接抗議に出向いて阻止させたとか」


ポニョン「当局は総統派に追われた亡命者を受け入れるって言っているわね」


リリンダ「何とか僕もモット団でやっていけそうでありますね」


支部長「大変ですモット様、とんでもない人物からアポが…」


モット「誰だって?」


 クエストを終えて数日後、新メンバーの数が896人を超えたある日、モット団のミッドカット支部に元老院でも名前の知れた大物の人物が面談を申し込んできた。

バケツビビンバ(人間体:リリンダ)

性別:♀ 年齢:19 職業 脱走兵(元軍曹)

得意属性 炎、水

弱点属性 氷

得意武器 鎌、弓

 モットの新たなる配下。悪逆卑劣な独裁国家の人体実験により誕生した属性合成怪人。素体のリリンダが無理やり装置に押し込まれた際にバケツや水素ボンベが混入したことによって、炎と水の2種の属性が混在する怪人となった。

 炎魔法と水魔法を同時に使用することが可能で、高温の蒸気等の合わせ技で周囲の敵を苦しめるのが得意。また、肉体を一定時間ガス状に変化させることもでき、防御・回避や狭い場所への侵入に用いることも可能。

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