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DEEP THE GREEN  作者: 楓 海
6/8

もう一度だけ

 読んで戴けたら嬉しいです。

 

 その日エディーが学校から帰ると、ニーナは出掛ける支度にせわしなく働いていた。


「あら、エディーお帰りなさい

 あなた大丈夫?

 最近顔色が悪いわよ

 読書もいいけど気を付けてね

 発作起こすと酷いんだから」


 支度を終え、ソファーに座って雑誌を読んでいたジェシカが言った。


「あらママ、わたしはストレスの方が心配だわ

 最近エディーったら変なのよ

 気持ち悪いの

 独り言が多くなったし、その独り言で突然ゲラゲラ笑い出すし」


 ジェシカは立ち上がりエディーに向き直って言った。


「わたしの部屋が隣だって事忘れてない?

 この間なんか窓から木に向かってがなってたでしょう

 わたしが思うにそれって恋によるストレスじゃないかしら

 早いとこ告白しちゃえば、ジーニーに

 早くしないと他の人に取られちゃうかもよぉ~」


「大きなお世話だよ」


 エディーはジェシカに向けて舌を出した。


 ニーナが言う。


「処でエディー、あなた本当に今夜のアンディー伯父さんの誕生パーティーに行かない気なの?

 きっと伯父さんがっかりするわよ」


 エディーは申し訳なさそうに言った。


「ごめんなさい、伯父さんには宜しく伝えて

 明日までの宿題が間に合わないんだ」


 自分の部屋に戻り、一週間も音沙汰無しのグリーンに痺れを切らしていたエディーは窓を開くと菩提樹に向かってがなった。


「グリーン、聞こえてるよね!

 今夜来なかったら絶交だぞお!! 」


 菩提樹はそよぐ風に葉を揺らした。


 ちょうど宿題を終える頃にエディーの背後からグリーンが声を掛けた。


「宿題は終わった?

 絶交されちゃ敵わないからね」


 エディーが振り返るとグリーンはベッドに座っている。


「もしかして、さっきからそこに居たの? 」


 グリーンは小首を傾げ言った。


「僕が来てから君は百三十七回、その万年筆を親指の上で回転させた」


 エディーは呆れて言った。


「数えてたの!?

 なんて、暇なことを.......」


「そお?

 僕は楽しかったよ」


 グリーンは笑った。


 初めに逢った頃はぎこちなかったグリーンの表情も、この頃は随分豊かになって来た。


「時々、キミって理解に苦しむよ」


 エディーはレポート用紙をまとめるとグリップに挟んだ。


 グリーンは腕を組み、肩を竦めてエディーを見詰めた。


「ねえ、エディー.......

 随分前だけど新興宗教信者たちの集団自殺があったんだけど憶えてる? 」


 エディーは資料の本を片付けながら言った。


「ああ、パパがそんな事を言ってるの聞いた事あるよ

 それが何か? 」


 グリーンは目を伏せ黙った。


 エディーはそんなグリーンを見て率直な言葉を言った。


「どうしたの?

 今日はちょっと変だよ」


 グリーンは立ち上がりエディーを見ずに言った。


「エディー...........

 今のままの君が好きだよ

 将来童話作家になる為に一生懸命勉強している君も、ジーニーに恋してる君も、ドジで優柔不断な処もあるけど、誰かの心を傷付けてしまうのを一番に恐れている優しい君も......


 そういう君が君としているべき正しい姿だから

 だから君らしい君でいる事が君にとっても他の誰にとっても、一番倖福で正しい事なんだ


 だけど君らしくない君は知りたくないし、見たくない」


 エディーはグリーンに向き直った。


「どうしたの、急に........」


「僕は君の誠実な処も好きだ

 けれど...........」


「けれど........? 」


「エディー、お願いがあるんだ

 もう一度だけ..............」 


 エディーはグリーンの言葉を待った。


 グリーンは苦悩に満ちた表情を浮かべ、目を閉じ眉間に皺を寄せて、思い切ったように言った。


「もう一度だけ、僕のキスを受け入れて」


 エディーはグリーンから顔を背け、静かに言った。


「キミがボクに何を伝えたがっているのかは、残念だけどボクには解らない

 だけどそれでキミがひどく困惑しているのは解るよ


 ただ思い出して欲しいな

 約束してくれた筈だよ、二度とボクを困らせる事はしないって

 

 そしてボクはキミに言ったんだ、ジーニー以外の人とはキスできない」


 グリーンは俯き目を伏せ言った。


「君の意思を無視すれば、君から抵抗力を奪う事など今の僕には簡単なことだよ」

 

 グリーンは挑発するような目をエディーに向けた。


「グリーン!! 」


 エディーは立ち上がりグリーンを睨み付ける。


 目を閉じ、グリーンはエディーから背を向ける。


「僕は君の前では無力さ

 解ってるだろ?

 そんな事できやしないよ.........

 例えそれが君を救う為でも.........」


 エディーは初めてグリーンと逢った時の事を思い出していた。


「どうしてそんなにキスに(こだわ)るの?

 ボクの視力が回復したのは、キミのキスを受けてからだ

 もう一度質問するよ

 ボクの前に現れた本当の目的はなんなの? 」


 グリーンは背を向けたまま項垂れる。


「僕には運命を変える力は無いのかもしれない......」







 読んで戴き有り難うございました。


 突然ですが、夏ですね。

 夏と言えば幽霊。

 幽霊と言えば髪の毛。

 不気味ですよね、髪の毛の塊なんか落ちてたり、垂れ下がっていたりすると。

 思うのですが、あの髪の毛は幽霊の自前なのでしょうかね❔

 と云う事は、幽霊の悩みは十円禿げじゃないかと思うんですよ。

 皆様はどう思います❔



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― 新着の感想 ―
[良い点] おはようございます。 何か、未来を示唆させる雰囲気ですね。 エディの身に何か、良くない事が起きるのかな?
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