プロローグ
「ゴグルジオォォォォォォッッ!!」
怨敵の名前を叫ぶ勇者の声を聞きながら私は思う。
あの人の目、とってもキラキラしてるな。きっとよからぬことを企んでいるに違いない、って。
一瞬の思考の後、勇者の剣が肉を貫く音が聞こえたそして、あの人の身体が動きを止め、崩れ落ちる。
私たちは負けたのだ。
自分で言うのも何だけど、私たちは強い。きっと強いって一言だけでは全然足りないくらいに。色んな種族から偶然に集まった最強クラスの仲間たち。
でも彼は負けた。たった一年前に覚醒したばかりの勇者に、完膚無きまでに。何百年、何千年って時を費やしてようやくたどり着けるこの領域。そこに、たったの1年で刃を届かせる。こういうのを反則って言うんだろうね。
なんて心の中で軽口をたたく。
普通だったら自分たちのボスが倒されたんだから次は自分の番だって身構えるんだろう。でも、全くそんなことするつもりにはなれなかった。だって、あの人の目が輝いていたから。
「愛しき我が仲間たちよ!聞こえるか!?」
ほら、何か言おうとしてる。
「私は光を見たぞ!とうの昔に無くなったと思っていた光だ!だから…次の物語を始めよう。あの光の正体を探すための物語だ!」
彼は膝をついたまま、それでも楽しそうにそう言い放つと、見たこともない魔法陣を空に描く。とんでもない量の魔力を吸い、どんどん大きく複雑になる魔法陣は一際強く輝いた後、音もなく爆ぜた。
その瞬間、数百年世界最強の存在として君臨していた私たちはこの世界から消えた。
「お母さん、あれ何?」
「なーに?珍しいお花でも……、っ!?アル、走りなさい!」
「え?何で?っ…痛いよ、引っ張らないでお母さん!」
ここはイールマリア。
国同士の争いこそ頻繁に行われるが、世界中で広く信仰される光神教の存在によりモラル意識が高く文明レベルから見るとかなり治安が良い。そんな比較的平和で美しい世界。
そんな世界に暮らす親子が見たのは、それまで何もなかったはずの場所に天高くそびえる青い塔。空の色とも海の色とも違う、触ると飲み込まれてしまいそうな青い塔。
そんな美しくも不気味な塔が顕現した瞬間をこの世界の多くの存在が観測した。その青い塔は見たもの全てに不吉を感じさせた。
しかし気付く者はいない。不気味さを感じさせるのは塔ではないことを。それを感じさせるのは塔に棲む11体の超常の存在達。ここではない別の世界に最強として数百年もの間、君臨し続けた存在達。
そんな彼らを、そしてその目的をまだ世界は知らない。
そして、世界がそれに気づいた頃にはあまりにも世界の様子は変わっていた。
初めまして、青白看板です。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
ネット小説は昔から好きで色んな作品を読んでいましたが読む専でした。
つい最近、ふと何か自分でも書きたくなり、元々は二次創作を書く予定だったのですが、書いているうちにこれオリジナルでよくないか?と思いオリジナルとして投稿しました。
1話はこの後投稿予定。
3話までは近日中に投稿予定です。
良ければ、是非続きも読んで欲しいです。
よろしくお願い致します。