私は誰?
一面真っ白なのに眩しくない、優しくて温かい変な空間が目の前に広がって居る。さっきまで私は何をしてたんだっけ?
「あの……」
可愛らしい声が後ろから聞こえた。
振り返ると、ピンクのドレスを身に纏い、綺麗な黄色の瞳に茶髪の可愛らしい女の子が居た。
「ホノカ様でしょうか?」
「えぇっと、そうだったっけ……貴方は誰?」
女の子はドレスの端をちょこんと持ちながら自己紹介をしてくれた。
「私は、セーツ・クライム。クライム侯爵家の長女です。」
「セーツ?」
セーツと名乗った女の子はコクンと頷いた。
「ねぇ、どうなってるのコレ?じゃなくて……えっと、どのようにられておられるのですか?あれなんか違う気がする」
「話しやすい話し方で大丈夫ですよ」
普段ちゃんとした敬語なんか使ってなかったから、そう言ってもらえると助かる。
「ありがとうセーツ、えっと……」
まずは何から聞くべき何だろう。
ここはどこ?私どうなってるの?わからない事だらけでパニックになりそうだ。
「まずは、謝らせて下さい。こんな事に巻き込んでしまって本当にごめんなさい。」
そう言いながらセーツは勢い良く頭をさげた。
「えっと……どういう事?」
「はい、まずは私の魔法の話からさせて下さい。」
セーツは丁寧に1つずつ説明してくれた。
セーツが住んで居る世界は魔法が存在していて、本来は14歳になるまで魔法を使うことが出来ないように、生まれた時教会でその子の魔法を封印する。
何で14歳までなのかと言うとその年で『シューレ学園』と言う学園に平民・貴族関係なく通い始め魔法について勉強し、魔法の暴走を阻止する為らしい。
本来なら14歳になるまで使えない魔法をセーツお嬢様は4歳の誕生日の日から、使えるよになった。使えるようになったと言うよりは、勝手に発動されるようになったと言った方が正しい。
最初はやたらリアルな夢を見ていると思っていたそうだ。だけど、1か月を過ぎた頃もしかしてと思った。それがセーツの『未来を見る魔法』だそうだ。
「未来を見る魔法?」
「はい、私が勝手にそう呼んで居るだけですし、大した事はないのですが……魔法の事は14歳まで何も分からないんです……」
「そっか……」
魔法・貴族・シューレ学園……
もしかしてとは思いけど、まだ確証が持てない。
「ねぇ、セーツはどんな未来を夢で見たの?」
「えっと、初めの頃は明日のおやつが何かとか、次の授業の質問が分かるとかその程度だったんです……」
授業の質問が分かるとか十分凄いと思うんだけど……でも、その先からは中々話そうとしてくれない。
「いい辛かったら、無理しなくて大丈夫だよ」
「い、いえ。大丈夫です。」
そう言うとセーツは深呼吸をし、両手でドレスを掴かみながらゆっくり話し始めた。
「5歳の誕生日前から、夢の内容は似たり寄ったりな物になっていったんです……」
セーツの手が震えている。そして今にも泣きそうな顔をしている。
「本当に無理しなくて大丈夫だよ、ね。」
私はセーツを抱きしめた。抱きつくなんてと思ったけど、私よりだいぶ年下の10歳位の女の子が震えながら目の前で泣いたから、体が勝手に動いてしまった。
「…ごめんなさい……でも、話さなきゃいけないんです。貴方を巻き込んでしまったから……」
「そっか……話そうとしてくれてありがとう。ゆっくり少しずつで大丈夫だよ。」
「ありがとうございます……」
思わず抱きしめてしまった私を嫌がる事なく、セーツはさらに私の腰に手を回してくれた。
「夢は私の婚約者が決まるところから始まるんです……」
セーツは泣きながら少しずつ話してくれた。
「10歳の誕生日を迎える1週間前の朝、お父様に婚約者が決まったと呼び出されるんです……」
「10歳で婚約…」
本当に子供の内に結婚するんだ…
漫画や小説の中だけの話だと思っていたけど本当にあったんだ……
「いえ、婚約は学園卒業後の予定なんです……生きていれば……」
「生きていれば?」
「はい……私は元々殿下の婚約者候補だったのですが、殿下の婚約者にはなれなかったんです。それで、私は殿下の侍従候補の方の婚約者になりました。」
セーツ・クライム、殿下に侍従候補…
やっぱりこれって……
「それで私は婚約者様のことを一方的に嫌い、周りの噂話を真に受け自分の殻に篭るのです……」
セーツの顔色がさっきよりも悪くなっている。もしかして…
「ねぇ…質問してもいい?」
「はい、大丈夫です」
「その殿下と侍従候補の子の名前って『スークリトー殿下』と『リアト様』だったりする?」
声の震えが止まらない。
「はい、そうです。思い出しましたか、ホノカ様?」
さっきまで下を向いていたセーツが顔を上げて私を見ている。
頭の中がグチャグチャになりそうだ……
間に合えば今日中にもう1ページ分更新出来るかもです。