旅立ち...2
はじめまして、ifと申します。
人生初めての連載投稿です。
ある思いで書き始めた話ですが、面白いと思っていただければ幸いです。
仕事しながらなので、毎週土曜日に掲載します。(最初の一週間は、毎日掲載します)
よろしくお願いします。
ヒラヒラヒラ~~
守衛のニルに手を振りながら集落の中に入って行きつつ、秋拡が読み耽っていた蔵書の知識を引っ張り出しながら回を観察してみる。
森から出るときに左手に見えていた河川を、今度は右に見つつ集落に向かってて思ったけど、なんかイメージしてた感じとは、ちょっと違う感じなんだよな~~。
河川に沿って水車が見えていたので、あれは穀物を挽いたり、灌漑用水路に水を引き込んでるんだろう。
集落は中世の村(?)と言っていいんだろうか、入り口には物見櫓が立っていて、回りを簡素な堀と塀で囲んで盛土した、小高い平地に家屋が並んで立っているって感じだ。
で、その奥には更に高い丘の様な場所に、城(?)と言うか単に二階建ての建物が、同じように堀と塀に囲まれて立っている。 あれって、領主(?)か村長(?)が住んでるのかな?
う~ん、小規模な砦(?)みたいな感じだな~~。
そんなに広くは無いようで、今歩いてるのがメイン通りみたいだ。
左右に建物が立ち並んでいて、右手には奥から順に教会(?)らしき建物と、その隣に倉庫(?)だろうか大きめの建物、次に雑貨屋(?)だろうか、こじんまりとしてるが品物は軒先まであって、それなりに住人も立ち寄っているようだ。 どんな物があるか、後で立ち寄ってみよう。
で、雑貨屋の隣にあるのが宿屋なのかな? 軒先に斧と丸太の意匠が刻まれた看板(?)かな、がぶら下がっていたので此処が宿屋≪樵亭≫なんだろう。
2階建で、1階は酒場 兼 食堂(?)で、2階が宿屋ってことなんだろうか・・・まあ、ここはイメージ通りって感じかな?
一番手前に厩(?)かな、藁が敷かれていて、屋根と柵だけの簡易なものだ。
今はなにも居ないけど、多分そうだと思う・・・うん、多分・・・
左手には家屋が数十件立ち並んでいて、住人はこちら側に暮らしているようだ。
人口構成が良く分らないけど、本で読んだ中世の村の平均人口って、100~200人規模だって書いてたはずだから、ここは大体100人位が住んでる感じかな?
まあ、あんまりキョロキョロしてては怪しまれるんで、一先ず宿屋に立ち寄って休める場所を確保することにしよう。
近づいていくと恰幅のいい女の人が、此方に気付いて笑顔を向けてくれている。
「あいよっ! お客さんかい?」
「は、はぁ~。そうなんですが~」
「うん? なんだい、歯切れがよくないね~。 旅人ってわりには、荷物も無いようだし、追いはぎにでもあったのかい?」
「ははっ、まあそのような・・・」
「ふ~ん。で、金は持ってるのかい?」
訝しげに見られたので、ポケットの中を弄って、先程の硬貨を手の中に広げた。
「あっ、ああっ。それなら、ここに少しだけ・・・」
「ああ、ちゃんとあるじゃないか。 うちは1泊夕食付きで、大銅貨5枚だよ。お湯を使うんなら、追加で銅貨5枚だね」
手元の硬貨を確認してみると、銀貨5枚に大きめの銅貨が10数枚と小さい銅貨が数枚あった。
1泊食事付きで大銅貨5枚と言うと、転生前の感覚だと5,000円位、かな?
細かい硬貨が手元にあった方が使い勝手が良いし、長居するわけでもないので銀貨1枚を手渡した。
「じゃあ、とりあえず1泊お願いします。 お湯は結構ですので・・・」
「あいよっ! じゃあお釣と、部屋は2階の一番奥を使っておくれ」
「こっちだから、付いといで」
促されるまま付いて行き、階段を上って一番奥の部屋に入る。
思ったよりは広いけど、窓際にベッドがあるだけで、収納は無い簡素な部屋だった。
ベッドは藁を敷いてシーツを掛けただけの、お世辞にも寝心地はいいとは言えない硬いものだ。
まあ、贅沢は言えない。 ジーとしての生活でも、似たようなものだったのだから・・・いや、此方のほうが全然マシか。
「どうだい? 気に入ったかい」
「え、ええっ。 十分ですよ」
「そうかい、そりゃあ良かった。 夕飯は日が暮れる前だから、それ位に降りてきてくれたら、すぐに用意するからね」
「ありがとうございます」
「あたしはここで宿屋をやってるアルルってんだ。何かあったら下まで声掛けてくれればいいから、それじゃ旅の疲れをゆっくりと癒しておくれ」
そう言うと女将は立ち去ろうとしたので・・・
「あっ、あの!」
「ん? なんだい?」
「旅慣れていないもので・・・その、行く先々の事が珍しくて、ですね。 ちょっと集落を、見て回っても問題は、無いでしょうかと・・・」
「ああっ、そんなことかい。 ん~、1人でうろつくとね~」
「ですよね~。 はははっ・・・」
「・・・んじゃ、あたしの子供に案内させよう。 当然、お代は貰うよ? ふふっ」
「ええ、ええっ。 是非! 是非、お願いします!」
「あいよっ。 お代は、銅貨5枚でいいよ。 じゃあ、連れてくるからね」
そう言って、女将は下に降りてった。
ふぅ~・・・
息を吐き出しつつベッドに腰掛、一先ず情報収集の伝を手に入れたことに安堵しつつ、早速案内をお願いするため階段下に降りていく。
「おや? もう行くのかい」
「え、ええ。 もう少し、待った方がいいですか?」
「いや、大丈夫だよ。 ロザン、ロザン!」
「なんだよ、母ちゃん~」
「ほらっ、さっき言った案内だよ。 ささっと、こっちに来て挨拶しな」
「っんだよ、面倒臭いな~。 薪割り終わったばっかだってのにぃ~」
「なに言ってんだい。 ほらほら」
「・・・え~と、この子が案内を?」
「そうだよ? ほら、挨拶しなって」
「ロザン、おいらはロザンってんだ。 よろしくな」
ブスっとしながら、7~8歳ぐらいだろうか、やんちゃそうな男の子が挨拶してくれた。
「あ、ああ。 俺はジークフリート、よろしくね?」
「ジーク、フリート? 長い名前だな。 ジークって呼んでいい?」
「ああ、ああっ! いいとも」
「じゃあ、ん」
「?」
「だ・か・らっ、ん」
手のひらを此方に出してきて何だろうと思ってると・・・
「お代だよ! お・だ・いっ!」
「ああ、ごめんごめん。 そうだったね」
苦笑しつつも、先程女将が言っていたお代の銅貨5枚を、その小さな手のひらに渡してあげる。
「にしししぃ~。 やったね~、久々の小遣いだ」
「こらっ、ロザン。 お客さんの前で」
「っんだよ~、いいじゃんか」
そんなやり取りを見つつ、ぼんやり自分の家族の事を思いだし・・・
「・・・・・・」
「・・・さん。お客さん、どうしたんだい?」
「えっ・・・」
「いや、ぼーっとして、涙目になってるからね。 何か嫌なことでも、思い出したのかい?」
「いやっ! いえいえ、微笑ましいなと思いましてね。 はははっ」
「ふ~ん。 そうかい・・・さあロザン! さっさっと行っといで、日が暮れちまうよ」
「分ってるよ。 さっ、ジーク行くよ~」
ロザンが外で、手招きしている。
「早く、早く~」
「ああ、今いくよ・・・」
さあ、不足しているこの世界の情報を、少しでも仕入に向かうとしますかねっ!
「で、何処を見て回りたいんだい?」
「う~ん、そうだな~。 特に決めては無いから、ロザンくん?が自由に案内してくれないかい」
「ふ~ん、分った。 じゃあ、ついて来て」
先を歩きながら、時折こっちを振り向き
「こっち、こっち~。 早く~」
と言いながら、先導をしてくれる。
まず最初は、宿屋の隣の家屋からみたいだ。
「えっね~。 ここは左が教会になってて、定期的にお祈りを捧げるんだ。右の建物は集会場で、大事な連絡の時に使う建物だよ」
集会場はなんとなく分るけど、教会か・・・”ナニカ”に関するものでもあるかな?
「え~っと、教会はどんな神様に、お祈りを捧げているんだい? 沢山の神様がいるのかい?」
「え~、わっかんないけど、みんな作物がよく実りますようにとか、豊作でしたってお礼のお祈りを捧げているよ」
「ふ~ん、そうか~・・・」
う~ん、子供には詳しくは分らないよな~・・・一神教なんだろうか?
”ナニカ”に関係しているとは、今の段階では何とも言えないよな~・・・
「じゃあ、司祭様(?)とかは、いらっしゃるのかな?」
「え~っと、司祭様は定期的なお祈りの時と、季節ごとのお祝いの時に来るだけで、普段は誰も居ないからみんなで、教会の清掃とか補修はしてるんだよ」
「そっか、普段は居ないのか・・・じゃあ、怪我の時とかは、どうしてるんだい? 司祭様とかが、治療してくれるんじゃないのかい?」
「なんで司祭様が、怪我とかの治療するんだ? 怪我とかは薬師のピルラ爺さんが、薬草とか調合してくれるんだ。 ジークは、何を言ってるんだ?」
「ああっ、ごめんごめん。 俺の故郷では、司祭様が治療してくれたんだよ。それで、ね」
「ふ~ん、そっか・・・じゃあ、次に行くぞ」
「ああ、よろしく頼むよ」
司祭が居ればこの世界の神に関して、何か聞くことが出来ると思ったんだけど、居ないんじゃしかたないよな~・・・もっと、大きい所に行った際にだな。
医療に関しても教会主導って訳でもないんだな・・・転生前の知識だと教会は限られた知識層の一つで、治療等の奉仕活動もお布施とってやってたはずなんだけど・・・
考えながら歩いていると、目の前でロザンが大きく手を振っている。
ゆっくり歩いていたから、早く来いということなんだろう。
「・・・で、この広場がお祭りの時に舞台を組んで、その周りをみんなで踊ったりして騒ぐんだ」
「で、広場の先に見えるのが、領主様の館への入り口なんだ。 ほら、あそこの高くなった場所に、背の高い立派な館があるだろ? あれだよ」
あれが領主の館(?)、集落に句かってる時にも見えてたけど、近づいて見るとやっぱり2階建ての、普通の建物って言うかなんと言うか・・・ぼーっと見ていると・・・
「・・・お~い! ジークっ! さっきから、何ぼーとしてんだよ」
「ん。 ああっ、何度もごめんよ」
「っんとだよ。 さあ、次に行くよ」
その後は、左の住宅(?)地域を抜けつつ、その先に広がる放牧地を回って、日暮れ前に宿屋まで帰ってきた。
住宅地域は日暮れ前までは、畑に出た男性陣も帰ってこないので、基本ご婦人方と子供たちのみで、特に見るべきことも聞くことの無く、ただ余所者の若い男性ということで、好奇の目に晒されただけだった。
他には、集落の奥まった所に放牧地があるのに、ちょっとした驚きがあったんだけど、聞くと普段から森へは頻繁に出入りしていて、建材や薪・果実や木の実を採集したりする際に、一緒に放牧を行っているんだそうだ。 で、放牧期間が終わる冬頃には、ここで飼育するために在るんだそうだ。 また、養蜂も行っているとかで、メルは唯一の甘味料としてや、料理・治療にも用いられているとも聞けた。
「さってと、最後は雑貨屋だな」
何やらロザンがうきうきしているが、最後は立ち寄ろうと思っていた雑貨店か・・・
「なんか、嬉しそうだな?」
「小遣いが手に入ったし、何か買えるのはそりゃ嬉しいさ」
まあ子供だし、そう言うものか・・・娯楽も無さそうだしな。
さて、中を覗いてみるか・・・
「ごめんください」
「ん? ああ、いらっしゃい。 何か、ご入用ですか?」
恰幅のいい小父さんがが出てくるかと思ったら、痩せぎすな感じの男性が出てきて応対してくれるようだ。
To be continued...