ラーセ防衛戦...8
あけましておめでとうございます!
なるべく、隔週土曜日で頑張ります!
今年度も、読んでいただけると、大変うれしいです。
拙い文章力ですが、引き続き書き続けますので、よろしくお願いします。
あっ!・・・一月はちょっと、不定期掲載となりまふ・・・・・・すみません(汗汗)
ガラガラガラガラガラ・・・・・・・・・
「はぁはぁ、ラーセの街は・・・まだ無事、か」
荷車を引き疾走する先にラーセの街が見えて来たが、視界の先では黒い波の様に街の北側に魔物が群がり、城壁にも城壁の上にも少なくない被害が起こっているのが見て取れ・・・って、真っ直ぐ向かう先の東門はまあ、北門に続き魔物が群がり始め当然閉じられてるな。
ふぅ、遠回りだが仕方ないな、南側に向かうしかない・・か。 この二人をあそこに置き去りにしてたら、多分死なれてただろうし、それよりか安全?な街中に放置・・てか連れ込んどかないと---。
「ヴィ達が気になるし、ちゃっちゃと運ぶかな」
仕方が無いから南門側に回り込もうと進むと、遠くに疎らになりつつも人の列が連なっているのが見え・・あちゃ~、こっちから入るのは無理、か・・・どうするべきかな?
「ん~、仕方ない。 あそこを越えるか?」
まるで何事でもないかの様に軽く呟くと、明らかに体格差がある二人を両脇に抱える様にし、次の瞬間には高く高く聳える城壁を眼下に据えたと思うと、今は街中へと降り立った一つの影---。
平時であればこの光景は城壁を警備する兵士にとって、警戒すべき事だったのだがこの時城壁上の全ての視線は、北側から徐々に東西に侵攻する魔物に向けられていた為、その小さな点に誰も気づかなかったのは状況が状況だからだろう。
「さて、無事入れたけど、何処が安全かな? う~ん、皆逃げてるだろうから、宿屋は却下として・・・ギルド、か?」
選択しがある訳ではないので、恐らくまだ誰か居るだろうギルドに向かうと・・・城壁の向こう側から煙? 何だ?気になるが、一先ず二人を預ける方が先だ。
「あの~~」
「(バタバタバタ)」
「あ、あの~~!」
「えっ? あ、え!? 貴方は!」
「あ、はい。 ・・・その~、この二人を---」
「え? なっ!?ど、どど、どうしたんですか!」
「いえ、ですから---」
結局このやり取りを暫く続け、防衛支援に忙しいギルド職員に、二人を預けてその場を後にするのに、大分時間を浪費してしまったのは、まあ仕方が無い事だと思うしかないな。 はははっ・・・・・・はぁ。
で、ギルドに入る前に気になった城壁向こうの煙・・あれが何か気になったので、近場の城壁の上に上がってみると、眼下に広がる城壁下の堀の各所で、炎の壁が現れ魔物を包んでいる?
てか、あれじゃ街側にも被害がでるだろうに・・・って、まあそれだけ追い詰められてると言う事か。
「むぅ・・まだまだ街は健在ってか、厳しい状況なのは間違いないな。 しまったな二人を預けずに、ヴィ達を探して預けた方が良かったか? いや、探してる時間も無いし、残って居る可能性も無いな。 まず、街の外へ脱出してるだろうし・・まあ今はそれはいいか、な?」
それにしても眼下に広がる魔物の数が、多い・・・と言うか鬱陶しいな---。
「揮え・・・苦罰によって、その身を清めよ・・・・・・煉獄の壁≪プールガートーリウム アウテム パリエース≫」
囁く様な声音で静かに言葉が紡がれ、右手が挙げられ掌が---。
『カッ!! ドッッゴォォォオオオオオオオオオオオオ・・・・・・・・・・・・ン!!!!』
『キィィィィイイイイン・・・ゴォォォォオオオオオオ・・・・・・』
ラーセの街へと蠢く魔物の群れの中に、突然眩い閃光と耳を劈く轟音が鳴り響き、炎の壁がその高熱の舌で魔物と共に、辺り一帯を舐め広がっていく。
後に残されるのは焼け残った草の根方を、煙が水底に動く影のように低く這う光景と、視線の先には無残にも黒く焼け焦げた大小複数の彫像が---。
目の前に広がる空間では喧騒が消え、ただ炎が燻り燃える音と、草木から立ち上る水蒸気の音だけが聴こえ、他には何の音も聴こえては・・・いや、僅かに一命を取り留めた魔物が、苦悶の表情を浮かべその場で呻いている。
「ギィ・・・ギィィィ・・・・・・」
「・・ブォ・モォ・・・」
急な温度変化によって突風が巻き上がり、魔物の断末魔と肉の焼ける臭いや、血その他の匂いが入り混じりったモノが、城壁の上にまで届き常人なら吐き気を催してしまう異臭が---。
「ふむ・・聞くに堪えない声に、嗅ぐに堪えない臭いだな。 それに、まだ目障りだな。 ふぅ~~~、静かな安らぎもて、静寂の園へと導かん・・・・・・氷結の息吹≪コンゲラーティオー アウテム スピリートゥム≫」
また言葉が紡がれ、今度は左手が---。
『ヒュゥゥゥ・・・ピキピキッ、パキッ! パキパキ・・・・・・・・・』
凍てつく風の流れが辺りを優しく、そう・・・優しく撫で先へ先へと広がり、生きる事を許されない静寂が包み込み、魔物達は息を吸込めば肺が・・身体の内側が凍り、後には白い氷像となって連なっていく。
「ふぅ・・・これで少し、静かになった、か?」
そう嘯く視線の先では、起こった事を理解出来ない・・いや、訳が分からず、動きを、声を、思考を、その全てを止め、ただただその場に立ち尽くす魔物達が---。
「ば、ばんだ?! ばにが・・・!?ばんだごでば、どぶぎぶ---」
(訳:な、何だ?! 何が・・・!? 何だ此れは、如何言う---」
そんな静寂を破る様に、呟きとも取れない大声が響き---。
「はぁ~・・煩いな」
まだまだ離れているにも関わらず、城壁の上にまで響く声のする先を見据えると、その一つの影は眼下に降り立ち其処へ向かい疾走し---。
「おい」
「・・・」
「おい。 少し、黙れないのか? ラーディクス?」
「ばっ!? ばにぼのばっ!」
(訳:なっ!? 何者だっ!」
目の前の出来事に気を取られ、声を掛けられるまで・・・直ぐ、直ぐ側に居る事に気づかなかった。
其処には・・・狼? 矮小な、一匹の狼が・・何故この場に?
「相変わらず、聞き辛い声だな。 何者だと問われても、古より共に在る者ではない、か?」
「びにじべぼびばど?」
(訳:古よりだと?)
「ああっ!この姿ではその少ない脳味噌で、分かれと言う方が無理だったか」
この狼は、何を言っているのだ?
ん? いや、狼・・なの、か? 先程はそう見えたが、今は人族?そうだ! 青い髪色の人族ではないか!
「こうすれば、思い出すか? 希望・期待」
『我らが主よ』
次の瞬間、其処には青い毛並みの狼がただ1匹。
今居る場所でなければ、その姿に多くの者が、モノが、魅了されてただろう。
その瞳は見る角度で、茶にも、青にも見え、瞳の奥底からは凍てつく様な力の本流が・・いや、全てを包み込む慈愛の温もりが---。
「ばっ、ばだだっ!? ぞ、ぞどずがだだば、ば・・ばじでだぎ」
(訳:ばっ、馬鹿なっ!? そ、その姿は、あ・・在りえない」
「ほう、覚えていてくれたか。 嬉しい、ぞ?(苦笑)」
鬼眼の氏族長『ラーディクス・デュル・ユミル』は、目の前の存在に驚きを隠せないでいた。
アレは・・あの存在は、今だ足枷に繋がれているはず・・・そう、此処に居るはずが無いのだから---。
「さあ、自らが仕出かした事の・・いや俺の、少なくない大切な者を・・・(ぎりっ)」
「ば、ばんどごど---」
(訳:な、何の事---)
「煩いと言っただろ? これからは・・・償いの時間だ」
「(ぞくっ!)」
静かに告げる様、言葉が吐かれる。
◆◇
時は少し戻り。
「くっ・・くくくくっ、あ~っはははははっ! はははっ、ぐっ・・ぐぅぅぅっ、ぐあああぁぁぁぁっ!!!」
突然苦しみ始めるジーク・・・その全身は黒い痣に覆われ・・・・・・。
『ぷ~~くすっ! くくっ、くくくっ』
『あはっ、あ~~~はははははははははっ!』
『さあ、この父に、この父の為に、今こそ---』
ナニカが嘯く中---。
『久しいな。 我が義兄弟よ』
『!?』
『『我らに仇なす者。 質問に答えよ』』
『鎮まらんか! 小神共よ!』
『『・・・御身の赴くままに』』
『・・・』
『さて、我が義兄弟よ』
『・・・』
『何だ? 我を忘れたか?』
『くくっ・・・くくくっ・・・あははは! わす、忘れた? 忘れた、だと?』
『忘れる訳無いだろうがっ!』
『今だ、巨大な岩に息子の腸で縛られ、こんな洞穴に幽閉されている!』
『それだけに止まらず、蛇の毒液が滴り落ち、日々苦痛に苛まれる!』
『それは、其方が招いた事であろう』
『煩い!煩い!煩いっ!! 俺様が行った事は、お前達の犯した罪に比べれば、些細な事でしかないではないか! それを、それおぉぉっ!!』
『彼の者と見えた際、其方の目論見の一部と分かり、常に見ておったが・・・相分かった』
『彼の者には、其方と関わらせはせん!』
『何だと?! そんな事、出来わせん! いや、させんぞぉ!!』
『其方には、何も出来わせんよ。 彼の者には我が力・・・いや、我が神族の力を与えておる』
『何っ?』
『・・・・・・そうか。 干渉出来なかったのは、お前が・・お前らがぁぁぁっ!!』
男とも女とも取れる声が、折り重なる様に唱和する。
『『世界樹の枝葉に乗せ、世に曙を齎す楯となり、世を穿つ刃とならん』』
『『彼の者が身に纏うは、祝祭の装身具』』
『『彼の者に幸多からん』』
『『眷属を従え運命に抗わん』』
『『理をもて理を破らん』』
『『その身に宿せし力、終焉と原初≪フィーニス エト プライモーディアル≫』
『『それは、終わりと始まり』』
『『彼の者が心から愛し、慈しみ、許し、赦し、供に歩む。 その者達に力を与え、その数だけ、世代を超え未来に紡ぐ』
『『そして、力は力を隔てなく分け与える』』
『『その悉くに、抗って見せん』』
『其方が蠢動しようとも、我らは滅び逝く存在よ。 抗う事無く、その時を迎えようぞ』
『さあ、居るべき場所へ戻れ』
『ぐぅぅぅあああああああああああああ・・・・・・・・・・・・』
静かにそう告げられ、ナニカが苦悶の叫びを上げ---。
「ぐぅぅぅあああああああああああああ・・・・・・・・・・・・」
何かに呼応するかの様に、一際大きく叫び声を上げるジーク。
ブブッ・・ブルブルブルブル・・・・・。
叫び声に応じて装身具が振動し---。
ガタガタガタガタ・・・・・・・・・・・・カチャッ。
今度は何かが嵌った様な音がし、足首装身具、耳装身具、手首装身具、環状装身具其々が、淡く光り身を包み広がるのと併せ、その身を侵食していた黒い痣が身体から消えていき、それと共に淡い光も落ち着いていくと---。
「くぁっ! はぁはぁはぁはぁ・・・・・・」
「い、一体・・何、が」
『抗う者よ』
「?!」
『抗う者よ』
「こ、この声・・貴方は!」
『よい。 しかし、其方の力は・・少し変容したようだ』
『共に歩む者を見出した、か』
「お、俺は一体・・何が? 何が起こったのです?!」
『其方は何も、気にする事は無い。それは、此方で対処するゆえ』
「え? 何を---」
『予定外ゆえ、我の干渉も此処までだ』
『次に見える際に---』
「ま、待ってくれ・・・って、一体何が起こったんだよ」
辺りを見回すと散々たる有様が・・・、足元には剣が突き立った巨人族の頭に、魔物の死骸が散乱しまくっている。 えっと・・・これ俺が、殺ったんだよ、な? あ~~、どう説明しよう・・・はぁ~~~。
取りあえず二人の所に戻って、ラーセを目指さないといけないし、ヴィ達・・・無事街に辿り着いてるだろうか?
To be continued...