旅立ち...1
はじめまして、ifと申します。
人生初めての連載投稿です。
ある思いで書き始めた話ですが、面白いと思っていただければ幸いです。
仕事しながらなので、毎週土曜日に掲載します。(最初の一週間は、毎日掲載します)
よろしくお願いします。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・っく」
「なんて・・・はぁ、うごき・・・はぁ、づら・・・はぁはぁ」
人族に姿かたちを変えたが、良かったのか悪かったのか、とにかく動き辛いのなんの・・・
「ふぅ~、やっと着いた---。 よっこらせっと」
近くの樹の根元に腰掛け、足を揉み解しながら休息をとった。
「うぅ---ん、緑が多いな~。 ジーが見ていたって、俺がジーなんだけど、異世界・・・なんだよな」
独りごちりながら、沢から見晴らしの良い場所に移動し、開けた所に棒を立てて影の方向を確認した。
「う~ん。 こっちが西で、後ろが南かぁ?」
地球と同じかは分らないが、影は左に向かっていたので、其方が西と判断し振り返った先、北よりは南と思いその方向に移動を開始する。
俄か知識のうえに、我ながら安直ではある・・・
道具も持たずに森の中を移動しているので、茂みや藪を迂回しながら進む、そのため歩みは非常に鈍重なものとなった。
「はぁ、はひゅっ・・・おっ!」
それでも歩き続けると、山道のようなものに出ることができた。
普段使いされている様子は無いが、恐らく猟師などが定期的に使っているので、踏み固められて道のようになっているのだろう・・・
「さて、どっちに進むか? 左か、右か・・・う~む」
行く当てがある訳でも無いので、どっちに向かっても良かったんだけど、これも西よりは東という安直さで、左へ歩を進めることにした。
先程と比較しても格段に歩きやすくなったが、まだ森を抜けるには時間が掛かりそうだし、日も暮れ始めたようで森の中も薄暗くなってきたので、一晩野宿ができそうな場所を探すことにし道を一旦外れる。
探し始めてそう時間を掛けずに、運良く割れた岩の間から水が染み出しいる場所を見つけた。
次は寝床とと探してみたが・・・・・・そんな都合よく近場で見つかるわけもなく。
一先ず水を確保できただけでも良しとし、食糧になる物が無いかを探すことにした。
・・・・・・・・・
なっ、何も見つけられない・・・唯一見つけたのはロスマリヌスだけとは・・・
ガサガサガサッ!
っ!?
視線の先には茂みから現れた兎が一羽、こちらには気付いていないようだが・・・道具が無い。
はぁ-、溜息が零れそうになった時・・・装身具が淡く光った。
『強欲』
『色欲』
頭に声が響いたと思った瞬間、指先が鋭利に尖ったと思うと、兎目掛けて切先を鞭のようにしならせ、遮蔽物を避けながら伸びていった。
それは正確に心臓を貫き、呆気なく兎を仕留めた。
「・・・・・・・・・」
気付くと更に足元にはナイフが転がっていて、仕留めた直後には指も元通りになっていた。
「・・・・・・・・・ご都合主義かっ!」
もう、今は考えるのはよそう・・・思考を放棄しつつ、兎を回収しつつ水場まで戻ることにした。
・・・寝床が無い以上は、一晩寝ずに過ごすしかない。
獣避けに火を熾すため、その材料を集めてくるが、中々乾いた枝や落ち葉は無く・・・それなりの量を集めた頃には、日も陰り森の中も暗闇に包まつつあった。
「はぁ~、今から火熾しか・・・」
ジーの知識にも、河野 秋拡の知識にも、その方法はあったのだが、とにかくそれが時間が掛かる方法なのだ・・・が、まだ光があるうちにしなければ!
集めてきた枝葉の中から、比較的乾いていて大きい枝に、ナイフで縦に溝を掘ったら、出た木屑は地面に触れない場所に残し、同じように乾いた小さい枝の先を、ナイフで若干尖らせて削る。
削った枝を掘った溝に、前後に勢いよく擦り続ける。
擦り続ける・・・続ける・・・続ける・・・続ける・・・続ける・・・・・・
・・・・・・・・・
暫らく繰り返すと、徐々に煙が出始め、溝に火種が生まれた!
枝を削った時の木屑を被せ、そっと息を吹きかけて火種を大きくする。
そーっと・・・そーっと・・・
「ふぅ~~・・・ふぅ~~・・・」
パチッ・・・パチッ・・・パチパチッ・・・
まだ弱い火種だが、煙を出しながらも、少しずつその勢いを強めてくる。
「ふぅ~~・・・ふぅ~~・・・」
予め組んでおいた石組みの中に、火種を置いて木屑を足しながら火元を大きくし、次に小さい枝や落ち葉である程度空間を空けながら、更に火種を大きくしていった。
順に投入する枝を太くし、持続的に燃焼して安定してきたところで、この炎を長持ちさせるために、大き目の枝を入れていく・・・これで、簡単に火が消えることは無いだろう。
さて、光源も得たので、先程の兎を捌くことにする。
まあ、ナイフがあるので解体自体は比較的簡単に済み、食糧を探していた時に見つけたロスマリヌスを、開いて枝に刺した肉に擦りつけ火元で炙っていく。
香りの強いロスマリヌスは、肉の臭みを消してくれるので、そのまま食べるよりかはありがたい。
ジュー・・・
肉の焼ける匂いが立ち込め、もうそろそろ良い頃合だ。
「はぐっ! あちゃちゃちゃっ、あちぃっ」
「はぁふ~、はふぅ~、ふぅ~・・・」
「ぅむっ、うんっ! 味気ないけど、今はこれで十分だ」
「・・・・・・」
燃え盛る炎を見ながら肉を齧り頰張りつつ、その炎の揺らめきの先に家族との、その平和なひと時を朧げに思い出していた。
つっ-------
自然と一滴の涙が零れたが、それを拭うことはしなかった。
「トサ、カサ、クゥ・・・・・・」
それ以上なにかを口にする事もなく、夜は炎の爆ぜる音以外は静かに深けていった。
・・・・・・・・・・・・
徐々に森の中が明るくなり始めた頃には、火の勢いも弱まりつつあり立ち上がり身体を解した。
「うぅ~~~っん。 んん~~~っ」
軽く伸びをしながら、火元に土を掛けて消していく。
まだ薄暗かったが、特に準備も必要ないので、そのまま歩き出し山道へ向かう。
昨日歩いた山道に戻ると、そのまま歩き始めたが、いつの間にかひた走っていた。
走り続けて日差しも高く昼頃に近づいたと思った時、森が開けてきたので速度を落としていき、出口は近いと思いつつ更に歩くと、目の前が開け日差しが降り注いだ。
一瞬目を閉じたが、手を翳し前を見渡した。
視界が戻るとそこは・・・左手にそこそこ大きな河川が流れていて、少し離れたところに畑が広がっており、まだ先ではあるが煮炊きする煙が見えるので、集落が近くにあると思うことができた。
森から一歩踏み出そうとした時・・・ふと思い、足を止めてしまった。
「あれ? 思わず人里に出ちゃったけど・・・こっから、どうすれば良いんだ?」
今更だが、何にも考えて無かった。
言葉は通じるんだろうか?
う~ん。 まずは、遠くから観察するかして、様子を見てから近づいてみようか・・・
そうこうしながら暫く考えていると、向こうから畑に向かってくる人影が見えた。
このまま此処に居るのも怪しまれるので、一旦森の中に隠れ様子を見てみることにした。
見ていると農夫のようで、何人かが連れ立って向かってきていた。
年配の男性が1人と、青年?の男性が2人の計3人。
畑には柵で囲まれていて、恐らく森からの獣避け対策なんだろう。
農業に従事したことが無いので、詳しく分らないけど・・・
観察していると右側から森を出れば、相手からは死角になっていて、容易に近づくことは出来そうなので、森の中を移動して近づいてみることにした。
近づくにつれ、相手の話し声が聴こえるまでになった。
「あぁ~っ、今日もまた畑を耕すのか~」
「おいっ、無駄口たたく暇があったら、手を動かせ、鍬で耕せ!ったく」
「へいへい、おっとうの言う通りに~。はぁ~、にいちゃは、良いよな~」
「藪から棒に何だ?」
「だってさ~、とうちゃんの後継いで、畑は残るし嫁さんは居るし。おらっちは、次男坊で今だ独身だで、そろそろ家追ん出されるし」
「ふふっ。だからとうちゃんも、おめえが心配で言うんじゃねえか?」
「ってるけどよ~。毎日毎日、畑耕して作物作って、税を納める。代わり映えしないべ?」
「だど、そのお陰で飯も食えて、慎ましくも生活できてるじゃねか」
「あぁぁぁっ! いっその事、冒険者にでもなるっかな~」
「馬鹿なこと言ってないで、夕方までに此処を終わらせんとな」
「へぇ~い・・・」
ふむ、話を聞く限りは、内容は理解できているな。
と言う事は、会話や意思疎通は普通に出来るということで、この容姿なら怪しまれること無く紛れることは可能だな。
よしっ! このまま此処に居て見つかると、厄介なことに成りかねないし、さっさと移動して集落に向かってみよう。
見つからないようにその場を離れ、遠回りにはなるが森づたいに大きく右に迂回して、集落の外側から正面の入り口から近づいて行くことにした。
日が傾く前に集落に続く主要道に出て、旅人に見えるようにゆっくり向かって行くと、入り口には守衛(?)のような人物が立ち、近づくと此方に近づいてきてくれた。
「おい! 何者だ? 荷物も持ってねえし、旅人?って訳でもなさそうだ。 おめえ何者だ?」
!?
しまった------------------------------------------っ!
そう言えばそうだった・・・荷物ひとつ持たない旅人って何だよ!
意気揚々と旅人を装って近いて・・・
河野 秋拡 若干ヒッキーが災いした-----------------------っ!
ジーは旅に出たこと無いんだから、そこはお前が気付けよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!
って、両方自分だけどっ!
不味い、不味いぞ・・・どうする、どう応えれば良い・・・
守衛(?)の前で、盛大にキョドってしまった。
「うん? どうしたおめえ? そんな慌てて、荷物無くしたんか? ん?」
天の助け、キター---------------------------------------っ!
「そっ、そうなんですよっ! その先で獣に追い立てられて、慌てて逃げる際に荷物全部投げ捨てちゃいまして・・・はははっ」
「うん? そうりゃ、災難だったな~。 たまに森から灰色狼なんかも、街道に出てきて人襲っから、それに当たっちまったかもな~」
「えっ? えっ、ええっ。 ええ、そうなんですよ! ははっ・・・」
「っま、その身なりなら、危険人物って訳でも無さそうだし、何も無い村だどゆっくりしてけや。 宿屋は右手に見える、≪樵亭≫しか無いけどな。ははっ」
「あっ、ああ。 ありがとうございます。」
「いいって事よ。ははははっ」
「ははっ、あはははははっ。では、失礼して行きますね?」
「ああっ、あっ! そうだった」
「はいっ! なっ、なんでしょうか~?」
「身元確認もしないといけねえが、荷物失くしちまったんなら、身分証何かも失くししまったんだよな?」
「・・・」
「しゃあねえ、確認する決まりだど・・・なめえ。 一応、なめえ聞いとくわ」
「名前・・・ですか?」
「んだ」
名前、名前、名前・・・う~ん。
ジーがこの世界での名前だけど、秋拡って言うか? てか、この世界って姓名の概念って、どうなってるか未だ知らないし・・・
ジーだと短すぎるだろうしな~~。
名、名、名か~・・・う~ん。
難しく考えては駄目だ! ここはシンプルにっ!
・・・父さんの「フー」と母さんの「リィ」、妹の「クゥ」と自分「ジー」の4人家族。
「お・・・」
「お?」
「俺の名前は、ジー、クゥ、フー、リィー・・・そう! ジークフリートです!」
「あっ、ああ。 ジークフリートね。 良い名前だなや、おらはニルつうだ。 滞在中は、悪さするでねど?」
「あっ、ありがとうございます。 ははっ、分ってますよ。 では」
「それと、荷物無くしたんだべ? 金は持っとるだか?」
金? 金、金、金・・・あああっ!
そんなもん、持ってるわけがない。
滞在するにしても、何するにしても、元手が全く無い・・・どうしよう?
・・・装身具が淡く光った。
『強欲』
チャラッ!
ん? ポケットが、急に重くなって・・・!?
ポケットに手を突っ込んで、中のものを取り出して確認する。
手のひらには、硬貨が数枚あった。
銀貨?と銅貨?なのかなこれ?
「ああ、持っとるな。 良かったなや、無くしたのが荷物だけで」
「まあ、そんだけあれば、数日は滞在できるだで」
「身分証はこの村では発行出来んだで、大きい町寄ったら再発行しとくんだぞ?」
「・・・・・・」
「どした? まあ、気いつけてな」
無事?なのか、この集落に入ることは出来た。
歩きながら心の中で・・・・・・・・・
ご都合主義かっーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!
と、心で叫びつつ、今晩にでも権能について、確認しよう等と考えながらも、ここからは、不足しているこの世界の情報を、少しでも多く仕入ることに専念するんだ。
さあ! 行くぞ!!
To be continued...




