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ラーセ防衛戦...3

遅れました。(汗汗)

一応、土曜日投稿守れました。(汗汗)

なるべく、隔週土曜日で頑張ります!

また、読んでいただけると、大変うれしいです。

拙い文章力ですが、引き続き書き続けますので、よろしくお願いします。


<城塞都市 ラーセ>


巨人族の住まう世界の果てヨツンヘイムと、人族の住まう大地ミッドガルド、その二つを別つ天然の壁ヒンダルフィヤ山脈。

巨人族の侵攻を防ぐ為にと築かれし北の最果ての都市は、下から見上げると首を痛めてしまう程に高く高く城壁が聳える。


「お、おい・・・」

「ああ、ああ(ごくっ...)」


城壁上には等間隔に尖塔が並び立ち、そこに詰める兵士達の視線の先には・・・大地を埋め尽くすかと思わせる程に、オウガー・ミーノータウロス・ゲーリュオーン・オルクス等様々な魔物が犇めき合い、まだ離れているのにその声が耳に届いてきていた。

更にその後方には遠目にも、その巨躯が分かる巨人族が---。


「「「ギョギョギョッ、ギャッギャッ!!」」」

「「「グボボボッ、グォォォォッ!!」」」


カラ~ンッ......。


「ひぃっ!」


乾いた音がやけに大きく、城壁に詰める兵士達の間で響いた。

絶望的な光景に呆けた兵士が、手から槍を取り落としてしまったのだ。


「お、脅かすなよっ!」

「す、すまん・・・」

「な、なあ? 俺達---」

「何だよ!」

「俺達、今からアレと---」


そんな兵士達が魔物の群れを見据え、これから訪れる事に思いを馳せる中、都市の中央に聳える城壁よりも、遥かに高い城の一室からその光景を見据える人物が---。


「して、そちから報告があったのがアレか・・・」

「はい。 閣下」

「ふぅ~」


深い息が吐かれ、一瞬その場に沈黙が訪れる。

暫しの間を置き、ギルドマスタが口を開く。


「さ、最善は、尽くします。 閣下の兵と共に---」

「ああ、分かってる」


手を上げギルドマスタの言葉を制し、ラーセ城主 エーヘンドルン辺境伯が言葉を続ける。


「当然、冒険者達だけを戦わせはせんし、この都市の全てをもって当たらねば、ただ滅ぼされるのを待つだけだ」

「・・・」

「何時訪れるとも分からん襲来に備え、兵だけでなく騎士団も訓練は怠っておらん。 だが、それでも・・・それでも尚アレを防ぐ事が、いや抗う事が出来るだろうか?」

「・・・・・・やらねば、なりません」

「そうだ、な・・・いや、つまらん事を言った。 自分の代であの光景を見、気圧され気弱になってたようだ」

「いえ、その様な---」

「将軍っ!」

「はっ!」

「兵の指揮を任せる。 既に打合せの時間は無いが、キルスタンと共に冒険者の配置を含め、各部隊長に急ぎ伝達し迎撃態勢を整えてくれ」

「畏まりました!」

「頼んだぞ。 私は城へ住民の避難誘導を---」


その時---。


『おごぁぉおおおおおおおおお―――――――――っ!!!!!!』


ピシッ! パリーンッ・・・・・・。


城全体を震わす程の咆哮が響き、その場に居た者はふらつき、耳を塞ぎ咆哮が治まるのを待った。

少しし治まった後の部屋の惨状は、窓ガラスが罅割れ、割れ砕かれ散らばっていた。


「いっ、一体何が・・・」


◆◇


城塞都市を前にし、悠々と配下と魔物の群れを見据え、その特徴的な単眼がギラギラと輝く。


「ぐろろろろろっ!」

「オボォッ、ラーディグズザマ゛!」

「いぎょいぎょだ! めどばえどばの、べざばりばびどぞぐどずびがぼ、だだぎづぶじでやでづぞっ!!」(訳:いよいよだ! 目の前のあの、目ざわりな人族の住処を、叩き潰してやれるぞっ!!)

「バババババッ! ザヨウデゴザイマズナ゛ッ!」


何やら会話らしきものを交わしつつ、傍に侍る巨人族が持つ檻籠へ手が伸びる。


「ひぃっ! 嫌だ!嫌だっ! やめっ、止めろ!」


そこに入れられているのは、今回の異変調査に赴いていた者達の、その一部・・・いや、今まで生かされていた者達が---。


「嫌だ嫌だ嫌だっ! たっ、たひゅけ、あがっ!(ぶちっ)」


首の骨を折られ、千切られた頭が足元に転がる。 吹き出す血もそのまま一口に---。


「んぐんぐんぐ、ぼり、くちゃくちゃ・・・げふぅ。 づぐづぐ、うるざぐでがなばん。 だばっでぐばででばよじぼのお゛、じがも゛ばずぐでがなばんば」(訳:んぐんぐんぐ、ぼり、くちゃくちゃ・・・げふぅ。 つくづく、煩くてかなわん。 黙って喰われれば良いものを、しかも不味くてかなわんわ)

「ドジュウヅガバエバジダボドデバ、オグジジアイバゼズボウジバゲゴザイバゼン」

「ぎょいば、ごどあどおざなぎぼのの゛、やばらがぎにぐでぐじなぼじだ」(訳:よいは、この後幼き者の、柔らかい肉で口直しだ)


檻籠に残された僅かばかりの者達は、次は自分達の番が何時来るかと、その顔を絶望の色に染め上げるのだった。


「なじをじでおづっ! ざっざど、ゆげいっ!」(訳:何をしているっ! さっさと、行けいっ!)

「ガジゴマジマジダッ! ユグゾオバエダッ!」


『おごぁぉおおおおおおおおお―――――――――っ!!!!!!』


「「「「ギィヤッ! ギィッギィッ!」」」」

「「「「ギャオッ! グボォッ!」」」」

「「「「ブモッフォッツ!」」」」


鬼眼の氏族長 『ラーディクス・デュル・ユミル』 の檄と咆哮の後、黒い濁流となって巨人族と魔物がラーセへと殺到して行く。


◆◇


弓兵と言うのは、良くも悪くも遠目が利く者が多い。 そう、捕まっていた者が喰われる光景、それを直視してしまい---。


「おうぇ・・・げほっげぼぉっ・・・・・・」

「お、おい。 どうしたんだ?」


遠目が利かない者は突然弓兵が、その場に吐き出した事に動揺を覚え、今目にした事を聞かされ兵士達は、その光景に絶望感を覚えた。 敗れれば、自分達に待つ運命に・・・だが、それは全てを飲み込まんと、見えない圧力を伴って自分達に向かって来ている。


「何をしておるかっ!」

「!!」

「第一、第二・・・第六、弓兵隊整列っ! 射程圏内に入り次第、奴らに矢のご馳走を喰わらせてやれっ! ただし、十分に引き付けてなっ!」

「「「はっ!」」」

「次にっ! 投石隊は---」


迫りくる圧力の中、城壁の守備を預かる部隊長はそれを・・・恐怖を跳ね除ける様に、兵士達に次々指示を出し防戦態勢を取らせる。 それは城壁の各所で同じ様に行われ、慌ただしく人の波の動きが起こるがそれは、理性を伴った規則正しい訓練された行動だった。


ラーセの城壁は、特異な形状をしている。 上から見れれば鏃を逆さにした様な、四面を中央が凹んだVの字型で囲い、城壁手前は深く大きな堀が掘られ、四方の城門内は二重構造になっている。

その為、迫りくる敵は左右を挟まれる形になり、進めば進むほど先端は狭まり、その密度を増す事になってしまう。 また、仮に城門を破り侵入できたちしても、二重構造にて容易に内部に侵攻することは出来ない。


「くっ、来るぞ・・・」

「当たり前だ! 遠ざかる訳ないだろ」

「よぉ~っし! 我が部隊が一番矢だ・・・・・・今だっ! 放てぇ――――――っ」


城壁の先端部分に当たる所から、先頭集団に向けて雨の様な矢が降り注ぐ。


◆◇


宿屋の一室---。


「う~ん・・・じ、ジーク・・・・・・ま、待って! 待ってよっ! い、行かないで、行かないでぇっ!!!」


『ゴーン!ゴーン!ゴーン・・・・・・』


「はっ! え、なっ、何っ?!」


夜も明けきらない早朝の街中に、鐘の音が響き渡る音で目が覚めた。

ううん、でも他に何か見ていたような・・・。

ベッドから起き出し部屋の窓を開け外を覗き見ると、同じように街の人々が不安げに辺りを見回し、そこへ慌ただしく城壁へ向かう一団が。

その光景を見すぐ部屋を出ると、同じ様にアイノ達も部屋を出てきていた。


「ア、アイノ、あの鐘の音って---」

「来たみたいだねぇ~」

「来たって・・・きょ、巨人族、よね?」

「それ以外に、何が来るって言うんさねぇ」

「そ、そう、よね・・・」


先程の鐘の音は、巨人族の襲来を告げる音・・・つ、遂に来たのね。


「さっ、あんた達、準備は出来れるねぇ?」

「ああ、大丈夫だぞ」

「はぁ・・・オーロフ。 あんたには、聞いてないさねぇ」

「何だとっ! 聞かれたから---」

「はいはい、昨日今日の付き合いじゃないさねぇ。 朝からそんだけ元気なら、何も心配要らないさねぇ」

「で、ヴィ、ターニャ、コゥ。 準備は?」

「う、うん。 だ、大丈夫よ」

「は、い・・・」

「う、ううん。 い、いいよ・・・」


元々ラーセを脱出すると聞いていた為、荷物は何時でも持ち出せるように帰還してから、装備品は常に身に着けた状態にしていた。 そう、ブレナン達が、ジークが帰って着たら直ぐに発てるように・・・でも、帰ってくる前にラーセから脱出する事になってしまった。


「よしっ! じゃあ、奴らの進行方向とは、反対の門へ・・・急ぐよ?」


アイノはそう言うと、部屋を後にし外へと駆けだした。 今でも襲撃に備えて閉ざされているが、街の外へ退避する人々も居る為、まだ出入りに関しては制限されてはいなかった。 だが、襲撃が始まった今、早く行かなければ城門は閉じられ、街から出られなくなってしまう。


◆◇


時は少し遡り・・・森を走り続けるブレナン、スヴェン、ジークの一行。

後ろから迫る巨人族達を避ける為、大きく東へと迂回した事で時間を取られ、今だ街道まで出られずにいた。 そうしている間に視線を上げれば、徐々に空は白み夜が明け始めていた。

上手く避ける事が出来たのか巨人族に追われる事も無く、あと少しで街道へと抜けられ後はラーセへ向け西進し、襲撃される前にアイノ達と合流しサロに向けて脱出するのみ。

街の者達には悪いが自分達が加わった所で、何も力になれる事は無くただ死期を早めるだけの、自殺志願者になるつもりは毛頭なかった。 この襲撃が此処だけで終わる訳は無く、それが問題の先送りでしかなかったとしても・・・。


そしてついに木々の隙間から街道が見え、夜通し移動した事から少し休息をと足を止めた。

座って休息を取る訳にはいかない為、木に寄りかかって携帯食や水を飲みつつ---。


「・・・ん?」

「ジーク、どうした?」

「しっ!」


それ程長時間休息を取っていたつもりも無いし、警戒を怠っていたつもりも無かったのだが、疲労から知らず緩んでいたようだ。 自分達が走って来た方向から、複数の気配が迫って来るのに気付くのが遅れた。


「ブレナン! 来たっ!」

「なっ! おいおい、こんな所で---」

「どうする?」

「此処では不味い。 街道迄出て、森から出て来た所を迎撃するぞ!」

「分かった」


街道迄出た俺達は、ブレナン、俺、スヴェンの順で隊形を組み、出て来た所を迎え撃つ態勢を整える。

そして、目の前に現れたのは、ゴブリン、オルクス、オウガーの一団。


「ったく、団体さんでお出ましか。 ひい、ふう、みい・・・はぁ~、20体はゆうに超えてるな。 まあ一人当たり、6、7体相手にすればって、この数のご婦人なら、大歓迎なんだがなぁ」


「「「ギュギャギャギャギャッ!!」」」

「「「ゴフォフォフォフォッ!」」」


「来るぞっ! スヴェン範囲攻撃で、先頭集団の足を止めろ! ジークと俺で、怯んだ所を刈り取っていく! 良いな、ジーク!」

「分かった。 合わせる・・・」


メキャ、パキパキッ!


その時、一体の巨人族が木々を掻き分け、魔物達の後方に現れたのだった。


「おいおいおい、俺のモテ期は此処で到来かよ・・・」


To be continued...

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