慟哭...2
はじめまして、ifと申します。
人生初めての連載投稿です。
ある思いで書き始めた話ですが、面白いと思っていただければ幸いです。
仕事しながらなので、毎週土曜日に掲載します。(最初の一週間は、毎日掲載します)
よろしくお願いします。
シュ-----・・・・・・
噴出す血の勢いは徐々に弱くなり、辺りには一種異様な静寂が訪れた。
・・・・・・・・・・・・
なっ、何なんだ? 何が起こって、た・・・るんだ?
混乱する意識の中、気付けば身体の自由は戻っており、震える血濡れの両手を眺め見ていた。
ポタッ・・・ポタッ・・・ポタッ・・・
一体、自分の身体に何が起こって・・・これが、”ナニカ”の言っていた”力”だと言うのか!?
「アアッ、アアアッ、アアァァァァァ・・・・・・・・・・・・」
ただただ、状況に思考が追いつかず、呆然と立ち尽くす中、声にならない声を上げた。
そして・・・あの声が頭に響いた。
『ケタケタケタケタケタッ! ごめんごめん、あははははっ』
『くくくっ、暫らく連絡しないつもりだったけど、一点伝え抜かったと言うか渡し忘れてたよ』
『ごめんね~。 あははははっ』
『チラッと見たけど、権能がちょ~~~っと、暴走しちゃったみたいだね~』
『あはっ、長くは繋げないから、要件だけちゃっちゃと済まそっ!』
『それらを扱うする為の、装身具を君に送っとくね~』
『ああっ、お礼なんていいの、いいの! 僕からの気持ちだから、ほんじゃっね~~~・・・』
「ナッ、チョマッ・・・」
此方から話すことも出来ず、唐突に、”ナニカ”の存在感が僅かに感じられ、声が聞こえてきたと思ったら、また唐突に、声が遠ざかっていき、その存在感も希薄に薄れていった。
一拍の間の後に気付くと、足元に乱雑に装身具が転がっていた。
怪しい気配は一切無く、華美な装飾も無い、良く言えば簡素、悪く言えば地味な、そんな物が計7つも。
それを眺めつつも屈み手の中に拾い集め、改めて立ち上がりつつ周りを見渡した。
まずはこの場所から、立ち去ろう・・・重くなった気持ちを引き摺りながら、血と臓物が飛び散り、血臭と汚物が交じる臭気が漂う、この異様な光景の場を後にし、沢へと戻りその血に濡れた身体を、水に沈め洗い流していった。
・・・一時でも忘れようと・・・
サァ--------バシャッ! ポチャンッ・・・
ヒュゥッ------サワサワサワ------
・・・ケン、ケーン
ピーヒョロロロ・・・
水の流れる音、そよ風に揺れる木の葉、雉や鳶が鳴いている・・・
ザバァッ、バシャッ・・・パシャパシャッ・・・
自然の息吹を遠くに感じながら、暫しゆっくりとした時間を過ごし、沢から上がり滴る水もそのまま、先程の装身具を一つ一つ手にとって見てみる事にした。
今までこんな物は見たことも無かったが、手に持ち触った瞬間に情報が頭に流れてきた・・・『強欲』
足首装身具、耳装身具、手首装身具、環状装身具
其々には1箇所だけ、闇紫色の宝石が光っていた。
宝石の中には7つの紋章が交互に、現れては消え、現れては消えを、繰り返していた。
”ナニカ”の言っていることを信じた訳では無いが、先程の様なことが意思に関係なく起こられたら、次は耐えられる自信も無い・・・そう思い恐る恐る身に付けていった。
指輪以外は対になっていて、特に何事も起こることは無く、すんなりと身に付けることが出来、サイズも丁度いい感じだった。
すると、其々が淡く光を放ち始め・・・権能の情報が流れてきた。
『傲慢』
1番目の権能にして、陽と闇を背景に、何かを掴もうとする手が、天に向かって伸ばされた紋章が光る。
始まりの権能にして、終わりの権能。 優れ恵たるが故に、他者を認められず堕ちたる者。
固有能力 : 光と影を操ること。 影を伸ばしたり広げたりと、変幻自在に形を変え、また強度も自由に変えられる。 更に目視できる範囲であれば、影の中を自由に移動することも可能。
『嫉妬』
2番目の権能にして、炎で燃え盛る竜の体に、王冠を乗せた7つの竜の頭と、10本の角を持つ紋章が光る。
全てを妬み、欲し、苦しみや、試練をもたらし、滅ぼそうとする。
固有能力 : 『暴食』が食べた物・者の、外見を真似て自在に変えられる。 人や獣・魔物のみならず、身体の一部分だけを変化させることも可能だが、無機物には変化することは出来ない。
『憤怒』
3番目の権能にして、荒れ狂う海と稲妻を従えた、巨大な蛇の紋章が光る。
鋼の表皮は、あらゆる武器をはね返し、その眼の奥底では全てを燃やし尽くす、黒い炎が燃え盛る。
その戦闘能力は多大で、権能最恐を誇る。
固有能力は、その圧倒的な戦闘能力であり、身体能力を強化することで、動きを見切る動体視力、素早い動作での戦闘で相手を圧倒する。
『怠惰』
4番目の権能にして、女性の横顔の背後に巨大な瞳の紋章が光る。
不道徳な心を植え付けるなど、不和を生むことに力を有し、また観察力にも優れている。その反面動きや思考は鈍重な為、戦闘よりも群集心理の機微に触れ得る。
固有能力は、『怠惰』の言葉が表す通り、非常に愚鈍ながらも強靭な耐久力を有し、一時的に高速移動が可能ではあるが、連続での使用は出来ない。
『強欲』
5番目の権能にして、金銀宝石が溢れる様の紋章が光る。
飽くことのない所有欲から、欲望に忠実で、この世のありとあらゆるものを欲し、それは生物、無機物に拘らない。 手に入れられるものには、知識や情報も含まれる。
固有能力は、『暴食』が喰らった物を体内で変化させ、表皮を硬化・軟化させることで防御・回避に特化するが、時にその硬さ・柔かさを使った攻撃力の増加も発揮する。 また、『暴食』が喰らった物、その一部を任意に取り出すことも可能。
『暴食』
6番目の権能にして、巨大で荘厳な館を背景に、王冠と髑髏に巨大な蝿の紋章が光る。
゛死゛゛疫病゛等負の元凶として、全てを喰らい尽くす反面、壮重で思慮深く、至情に満ち溢れ、威厳と悲壮感を纏っている。『真理』に通ずる(?)
固有能力は、素材や質量の有無を問わず、存在する物を食べられる。そこから生まれる耐久性、再生力は、全ての権能に対し有効。 それを生かした、猪突猛進な突撃も行える。
『色欲』
7番目の権能にして、人と牡牛と山羊の3つの頭に軍旗と槍が交差し、回りを蛇が囲う紋章が光る。
色欲や嫉妬心を刺激し不和を生むが、その性質から冷静沈着で謀略に長ける。
固有能力として、手足、指先を伸縮自在の鋭利な刃に変え、刺殺等に無類の貫通力を誇り暗殺能力に秀でる。また、『強欲』『暴食』の能力を頼りにすることで、防御や回避行動は行わず相手に致命傷を与える。
次々に流れてくる情報・・・しかし、今までの様に荒れ狂う濁流ではなく、其々が自己を顕示するかのように・・・
そして、全ての情報が頭に流れた後、装身具から放たれる光は、徐々にその光を弱めていった。
それらを眺めつつ、暫し呆然とした・・・
フゥ---・・・
自然と息が漏れる中、傷が治っていたことも先程の行動も、権能の能力の一部が影響していたと・・・理解はできたが、納得は無かった。
一先ず、この装身具によって、この”力”は制御することが出来る。
それだけでも、あの訳の分らない事態は防げると、今はそう信じることにし、今後のことを考えていこう・・・
まずは、今後どう行動していくか、あの人族に復讐した気持ちは消えないが、”ナニカ”の言っていた”契約”は、未だに詳細が分からないことから、今考えても仕方は無いと思う。
では、如何すれば良いのか、向かう先・これからの事、このコボルとの容姿では・・・
考えようとすると、途方に暮れそうになる中・・・
『嫉妬』
またも装身具が、淡く光った瞬間・・・変化?
情報だけが流れ込み・・・姿形を変えられる?
『どう言う事だ』と思いつついると、選択肢が頭の中に浮かんできた。
人族(男)・人族(女)・ 灰色狼・UNKNOWN
何だコレは・・・?
訝しみながらも、”人族(男)”を意識してみた。
・・・・・・っ!?
身体に変化が表れ始め、手・足・胴の毛が無くなり、その形状も人族のそれになっていった。
それは、ほんの一瞬の出来事で・・・顔を触ると、鼻も耳も短くなっていた。
沢の流れの無い箇所に移動し、水面に自分の姿を映し見た。
・・・・・・っ!!
そこに映っていたのは、あの集落を襲った人族や、先程の人族達とは違った、若い人族のそれであった。
髪色はアッシュブラウンの短髪で、瞳の色は茶色く、肌は適度に日焼けし、健康的なそれであった。
・・・・・・
一通り確認し終わった後・・・一糸纏わぬ姿であることに、何故か羞恥心が込み上げてきた。
『強欲』
また装身具が、淡く光ったと思った瞬間・・・
先程の人族達が身に着けていたような衣服が、目の前に一揃い乱雑に出現していた。
何で衣服が此処に? たった今までは、何も無かったはずなのに・・・待てよ? 今、思い・感じただけの事に対して、この現象が起こっているのか?
一先ず考えるのは後にし、目の前の衣服に着替え、今一度水面に姿を映した。
それは、何処からどう見ても、人族の若者のそれだった。
「おおっ! 何処からどう見ても、人族になってる」
「・・・っ!? あれ? 普通に、言葉が発音できてる?」
「見た目の容姿が変わっただけで、こういった変化も起こるのか・・・?」
不思議がっていても仕方が無い、考えないといけない事は沢山ある・・・
転生したジーとしての知識や経験、転生前の河野 秋拡としての知識や経験。
焦付くような仲間、家族を失った感情は消えていないが、徐々に2つの意識が統合しつつある中で、それらを使って今出来る、やれることを考えよう。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
「・・・よしっ! 決めたぞっ! この場で考えても答えがある訳じゃないし、この世界の事も集落周りの森しか分らないままだし、どういった世界でどんな国・種族・物があるのか、まずは人里に向かい情報を収集しよう」
「この格好なら怪しまれることも少ないだろうし、あの人族を探し出すことが出来るかも知れない」
「それに、”ナニカ”との契約の事、そもそもアイツは何なのか・・・それらを知る手がかりもあるかも知れない」
「うっし! そうと決めたら、行動を開始するかなっ」
そうして、当ても無いままにまずは森を抜け、仲間、家族の仇の人族と、”ナニカ”に関して情報を得るべく、この広い世界へ新たな一歩を踏み出した。
『ぷくくくっ、さてさて』
『上手に踊ってくれよ~。僕のために~』
『あはははっ、あははははははっ』
To be continued...