シンガポールの夜
初投稿です。よろしくお願いいたします。
喧噪の中、俺が待っているのは飛行機。修学旅行の帰り。
「シンガポールたのしかったなー。なぁ?角。」話しかけてきたのは、友人の健斗だ。学校の中で一番仲がいい友達だ。
「どうした?死んだ魚の目してるけど。」
「うん?…ああ、なんか調子わるくてなぁ。風邪ひいたかも。」
「先生に伝えるか?」心配そうな顔で聞いてきた。やっぱいいやつだよなぁ。こいつ。
「いや、いいや。色々聞かれたらめんどくさいし。」
「そっか。ところで、何が一番たのしかった?」キラキラした目で聞いてくる。
「何の話?」
「修学旅行の話。」
「なんだろうなぁ…「俺は、電車かな。」」おう。勝手にしゃべりだした。こいつは無類の電車好きで、特に『音鉄』らしい。どうせまた、車内放送の話を…。
「車内放送覚えたんだよ!聞く「きかない。」そっかー。残念。」
ほらな?こいつは車内放送が大好きで、あほみたいに聞かせてくる。この間こいつが行ったカナダの電車の車内放送でスペイン語?かなんかのを披露してくれた。しかも、始めるときに、「ピーンポーンパーンポーン♪」と言わないとスイッチが入らなくて、うまくスペイン語?を言えないらしい。
まあ、そんな話は置いといて。
「そろそろ、集合の時間だな。いこう?」
「え?ああ。もうそんな時間か。」
ロビーの椅子から立ち上がり、動く歩道を歩いて搭乗口に向かった。
「知ってた?動く歩道って、歩いちゃいけないんだって。」
「へー。そうなんだ。」
む。興味なさそうだな。ここで電車の話題をひっかけっると…。
「エスカレーターもそういう作りらしくて、電車に乗るときに歩いちゃダメだったら乗り遅れちゃうよな。」
「それは困るな。学校にも遅れちゃうし。」
「ああ。確かに。」
「けど、お前はいつも遅れてるし、いっか?」
「うっせ。」
何てこと暴露してくれてんだ、まったく。健斗が言っていた通り、俺はよく遅刻する。起きるのが遅いからだ。
そんなこんなで搭乗口についた。もう沢山人が集まている。
「クラスごとに並べー!」
先生が号令をかけていたので、違うクラスの俺たちは分かれた。
「じゃあな。」
「おう。また日本で。おやすみー。」
「おやすみー。」
列に並んで、先生に搭乗券を確認してもらう。
「橋本は…よし。」
OKをもらったので次は荷物検査だ。荷物を全部リュックにいれて…よし。かごに荷物を入れて、俺は金属検査機を通ってエックス線検査を受けている荷物を待つ。荷物を受け取った俺は、ゲートの前にあるソファーに座って搭乗まで少し休憩だ。
「ふぅー。」疲れたので、思わずため息が出てしまった。軽く首を回すと、リンパのあたりが少し痛む。やべぇ、本格的に風邪かもなぁ。目をつむって休んでいると、『ビー!ビー!』と音が鳴った。どうやら誰かが金属の検査に引っかかったみたいだ。しかも、同じ学校の生徒で、俺ともそこそこ仲がいい友達である。流冴だ。さんざん体をまさぐられて、げっそりとした顔で出てきた。
「だいじょうぶ?」と、声をかける。
「ああ。だけど、おっさんに体を触られて最悪だ。」
「なんかでてきたの?」
「特に何も。」
「うわ。災難だったな。」
「ところで、将棋やんね?」
急だな。こいつは、将棋が好きでこの旅行にも持ってきていた。まあ俺も好きだから、相手をしているわけだが。
「場所を考えろ、場所を。あと俺今、死ぬほど頭痛いからできない。」
「じゃあ死ねよ。」
おい。冗談にしてはひどくないか?
「そーゆーこというなよ。」
「だって、死ぬほどなんでしょ?」
「比喩だって比喩。」
こいつには比喩がつうじないのか?
「まあいいや、そろそろ搭乗時間っぽいぞ。」
「あ、ほんとだ。」
俺たちの学校の生徒だけじゃなく、一般人も一緒に、列をなしてぞろぞろと飛行機へ向かった。
イヤホンと毛布をもらって、席に着く。隣には、先客がいた。隣に座っている平田が、声をかけてきた。
「なぁ。イヤホンジャックどこに入れるかわかる?」
いや、知らねえし。風邪気味だしもう寝たいんだが。
「テーブルの横にある穴じゃないの?」
「うーん、入んないんだよ。」
「得意の力ずくで入れてみたら?」
「うん。…ふんっ!あ、入った」
「音はきこえるか?」
「いや。全く。」
「うそだろ?ほかに探してみるか。」
しばらく周りを探していると、ひじ掛けの前部分にそれらしいものが見つかった。
「これじゃない?」
「うん。それっぽいな。」
「さっき刺したやつ抜いて、こっちに刺したら?」
「わかった。……?抜けない。」
「力ずくで入れたんだから、力ずくで抜いてみろよ。」
「おう。…ふんっんん…!!『ぶち』!?」
「は!?」
なんと、根元からちぎれている。
「まじか…。キャビンアテンダントさんに言った方がいいかな?」
変なところでまじめだな。めんどくさくなりそうだし…
「やめとこう。俺のイヤホン貸すからさ。使わないし。」
「ありがとう。」
「じゃあ俺もう寝るから、お休み……ってきいてないのかよ。」
平田は、早速イヤホンをつけてゲームをしていた。俺は、目を閉じて眠りについた。