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エピソード97

——目を開ける。


静寂。


何もない。どこまでも続く虚無。

光はなく、闇もない。ただ、 空虚だけが存在する世界。


私はここにいる。

私はここに——


「……おかしいわね」


私の声が響かない。喉があるのかすら、わからない。


ここはどこ? 何? 私は——誰?



頭の中に流れ込んでくる。何か。

それはまるで、血流の音。心臓の鼓動。存在そのものが発する波。


「貴女は選んだ。」


「ここって……」


私は振り向く。


——“私”がいた。


白い肌。

黒い髪。

金の瞳。


私は、私を見つめる。


「貴女は私?」


「私は、貴女」


私は何?


創造主? ただの一人の少女?


私は、誰?


「貴女は貴女」


——否。


「私は、私じゃない」


私は叫ぶ。

けれど、その声すらも吸い込まれていく。


「私は、私ではない!」


金の瞳が揺れる。


「そう。 なら、 貴女は何?」


「わからない!」


「ならば、 貴女は——」


——存在しない。


世界が軋む。


天と地がひっくり返る。


私は私の手を取る。


私は私の喉を掴む。


私は私を、


「また壊す?」


——そう。


私が、


私を、


——殺す。


指が食い込む。

呼吸が詰まる。


「……っ、ぁ……」


苦しい?

痛い?


違う。


これは——


「愛よ」


私が私を殺すこと。

それこそが、愛。


それこそが——救い。


「……私が、 私を……」


指が震える。

金の瞳が涙を流す。


「お願い……殺して……」


私は囁く。

私が、私に。


「終わらせて…… 私を……」


私が、私の首を締め上げる。


私は目を開けた。


暗闇の中。

私は、独り。


どこにもいない。


私は、 私を殺した?

それとも、私は——


「私は、 私で、 私ではない」


微笑む。


闇が広がる。

虚無が、

私を包み込む。


それは、

優しい夜——

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