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闇と光の境界が、限界まで溶け合っていた。

亀裂が走る。

世界が崩壊する。

しかし、それは終焉ではなかった。


私は息を吸う。


目の前に広がるのは、灰の降り積もった広大な空間。

遠くで、鐘の音が聞こえた。

だが、それは祝福ではなく、鎮魂の響き。


この世界は——死につつある。


「お前は、もう”創造主”ではない」


影が告げる。


その声は穏やかだった。

挑発でも脅迫でもなく、ただの”事実”として。


私は唇を噛む。


「……それでも」


「それでも?」


影が微笑む。


「お前は何になりたい?」



シラーチルが私の隣に立つ。


「……“決めなくてもいい”」


彼女の言葉は、妙に澄んでいた。


影は小さく首を傾げる。


「またその理屈か」


「そうよ」


シラーチルは、まっすぐ影を見つめる。


「“定義”が必要なのは、世界のほう。

 でも、それを決めるのは私たちじゃない」


私は彼女を見つめる。


「……なら、私たちは?」


「変わり続ければいい」


影が笑う。


「“不確定”であることを選ぶのか?」


「選ぶんじゃない」


シラーチルは静かに首を振る。


「最初から、そうだっただけ」


その瞬間——


“世界”が弾けた。


音もなく、境界が砕ける。


空間が歪み、ねじれ、形を持たないものへと変貌していく。


私たちは、“無”の中に立っていた。


リーモアが低く呟く。


「……世界が、“再構築”を始める」


影が、私を見つめた。


「“創造主”は終わる。

 だが、お前は”創造”を捨てたわけじゃない」


私は目を閉じる。


“創造”とは何か?


私は、何を生み出し、何を壊し、何を選んできたのか。


答えは、どこにもない。


でも——

私は、手を伸ばした。


その指先に、“何か”が触れる。


光。


闇。


全てを内包する”無”が、私の手のひらの上で脈動して。

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