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風が吹く。


それは、どこか懐かしい風だった。


けれど、もう私はその風を城の玉座から眺める者ではない。

私は、この風を感じる者となった。


世界が、変わろうとしている。

いや——

私が、変わろうとしているのかもしれない。



「……あなたは、満足?」


シラーチルの声が、静かに響いた。


私は、彼女を見つめる。


金色の瞳は、何も語らない。

それなのに、すべてを見透かしているような気がした。


「満足、か……」


私は、答えに詰まる。


満足、という言葉は、この選択にふさわしいのだろうか?


私は、創造主であることを捨てた。

それは、つまり——


この世界を変える力を、手放したということ。


リーモアが、そっと笑った。


「君は”見る者”ではなくなったけれど……“生きる者”として、何を選ぶ?」


私は、言葉を失う。


これから私は——

何をするのだろう?

どこへ向かうのだろう?


「これからのことは、私にもわからない」


「でも、それでいいんだ」



シラーチルが、僅かに目を細める。


「ならば、あなたの歩む道を見届けよう」


彼女は、跪いた。


「……私は、創造主の最も忠実なる家臣」


「あなたが何を選ぼうとも、それを支える者であり続ける」


その言葉に、私は息を呑む。


もう私は、創造主ではない。


それでも——

私を支えるというのか?


「……ありがとう」


その言葉を口にするのは、久しぶりだった気がした。



リーモアが、ふと空を見上げる。


「……そろそろ、行こうか」


彼の指先が示す方角に、扉があった。


それは、どこか見覚えのある扉だった。


けれど、今の私はそれを”試練”の象徴としては見ていない。


「これは……」


リーモアが微笑む。


「これは、お前が”最初に選ぶ”ための扉さ」



私の足元に、影が伸びる。


影は、私とともに歩もうとする。


私は、もう迷わない。

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