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74 空白の誓約

空白の誓約


光と影が、私の指先から零れ落ちる。


触れたものは形を失い、溶けていく。

空間は歪み、裂け目が静かに閉じ始めた。


まるで、世界そのものが、私の選択を受け入れようとしているようだった。



「……君は、決めたんだね」


リーモアの声が、どこか寂しげに響いた。


「そうみたいだ」


私の声は、どこか他人事のようだった。


決めたはずなのに、胸の奥に重く沈む感覚がある。


私が選んだのは——


「私は...」









「この世界を...壊さない。」

リーモアが微かに目を細めた。

「創造主である君が、それを選ぶのかい?」


シラーチルが問いかける。


その言葉に、私は息を呑む。


——私は、創造主。


この世界を生み出した者。

すべてを見届ける者。


けれど——


「私は、この世界の一部として、生きる」



シラーチルが静かに目を閉じた。


「……なるほど」


彼の金色の瞳が、再び私を見つめる。


「お前は、創造主であることを捨てるのか?」


その問いは、私の核心を突いた。


「……捨てる、とは違う」


私の言葉は、自分でも驚くほどはっきりとしていた。


「私は、ただ”見る者”ではなくなる」


シラーチルが、僅かに目を見開く。


リーモアが、そっと笑った。


「そうか」


その言葉は、どこか懐かしさを帯びていた。



私の手のひらの光が、次第に形を失っていく。


それは——


私の創造主としての力。


私が、この世界を作り上げた証。


ゆっくりと、それが霧散していく。


私は、もう”創造主”ではない。



「——これで、お前は”人間”だ」


シラーチルの言葉が、静かに降りる。


私は、空を仰ぐ。


新しい世界が、そこにあった。


私は、その世界で——


私は...

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