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73 揺籃の終焉

揺籃の終焉世界が、静かに揺れている。


足元に広がる亀裂は、もはや裂け目ではない。

それは新たな胎動であり、崩壊ではなく——再生の予兆だった。


私の指先に集まる光が、脈打つように震えている。

それはまるで、私に問いかけているようだった。


——お前は、どうしたい?



リーモアが私を見つめていた。

その瞳には、迷いも、不安もなかった。


「君は、ずっと見てきたんだろう?」


彼の言葉が、私の胸を貫いた。


——私は、見てきた。


人々の営みを。

彼らの愚かしさと、美しさを。

喜びと悲しみのすべてを。


私は、そのすべてを見届ける存在だった。

そして、それを理解したいと願った。


だからこそ——


「……私は」


私は、選ばなければならない。


シラーチルが一歩踏み出す。


「お前は、この世界の主だ」


静かに、しかし確かな声で告げる。


「この世界を壊し、作り直すこともできる」


シラーチルの言葉は、あまりにも自然だった。

創造主である私が、世界の命運を握っているのは当然のことなのだから。


「それとも——」


シラーチルの金の瞳が、僅かに細められた。


「この世界に身を委ねるのか?」


彼の言葉に、私は息を呑んだ。


——この世界に、身を委ねる?


私は、創造主だ。

この世界は、私が作ったものだ。

それをただ、見届けるだけの存在に戻るというのか?


それとも——


——私は、人間として生きるのか?



リーモアが微笑んだ。


「君は、もう答えを知っているんじゃない?」


彼の言葉に、胸が締め付けられる。


「君がこの旅を続けてきた理由は、何だった?」



私は、ゆっくりと手を伸ばした。


光が、私の手のひらに集まり、形を成し始める。

その光は、確かに脈を打っていた。


それは——


「……私は」


静かに言葉を紡ぐ。


そして——


私は、選ぶ。


世界が、音を立てて変わり始めた。

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