72 新たなる胎動
世界が形を変えていく。
光と闇が混ざり合い、溶け合いながら、ゆっくりとその姿を定めようとしていた。
私は、亀裂の中心に立っていた。
視界の先に、シラーチルとリーモアがいる。
彼らはただ、私の選択を待っていた。
風が吹く。
その風は、どこか懐かしい香りを運んでいた。
それは、人間だった頃に感じたもの。
柔らかな陽の匂い、草木のざわめき、夜露の冷たさ。
そして——人間たちの笑い声と、すすり泣き。
私は知っている。
この世界は、あまりにも脆く、あまりにも美しい。
私がこの手で作り上げた世界。
だが、それは私の意志とは無関係に、生き続け、変わり続けてきた。
私は、そのことを知っていたのに——
「……私は、何を望んでいた?」
自問する。
シラーチルが静かにこちらを見つめていた。
「それを決めるのは、お前だ」
リーモアの声が響く。
「君が、何を望むか。
それが、すべての答えになる」
私は、選ばなければならない。
創造主として、この世界を作り直すのか。
それとも、人間として、この世界を受け入れるのか。
どちらの道を選んでも、戻ることはできない。
私は、そっと目を閉じる。
そして——
私は、選ぶ。
私の手が、ゆっくりと動く。
光が、私の指先に集まり始める。
世界の命脈が、私の選択に応じるように震えていた。
リーモアが微笑む。
「君が選んだ道が、君の真実になる」
シラーチルが、静かに私を見つめていた。
その目は、まるで何もかもを見透かしているかのようで——
それでいて、どこか寂しげだった。
私は、口を開く。
そして——