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世界が震えている。
まるで、私の決断を待っているかのように。
亀裂は光を放ちながら、地面を這うように広がり、境界が曖昧になっていく。
ここはどこなのか。私は誰なのか。
いや、それすらも今となっては意味のない問いなのかもしれない。
シラーチルが私を見つめている。
「お前は、答えを見つけたのか?」
その問いが、意識の奥深くへと沈み込んでいく。
——私は答えを見つけたのか?
「……わからない」
その言葉を口にした瞬間、シラーチルの微笑が、ほんのわずかに歪んだように見えた。
「そうか」
「お前がわからぬというのなら、私にもわからぬのだろうな」
彼はゆっくりと目を閉じる。
風が吹いた。
重く、湿った風。
まるで、世界の底から立ち昇るため息のような、深い風だった。
私は、ずっと見ていた。
遠い城から、人間の営みを。
彼らの愛を、憎しみを、絶望を、希望を。
何度も自問した。
なぜ彼らはこんなにも愚かなのか。
なぜ彼らはこんなにも愛おしいのか。
その答えを知りたくて、私は人間として生きることを選んだ。
そして——
今、私はここにいる。
「創造主」
リーモアが、静かに私を呼ぶ。
私は顔を上げた。
彼は、ゆっくりと近づいてくる。
「君が求めた答えは、きっとすでに君の中にある」
その言葉に、私は息を呑んだ。
答えは——
すでに、私の中に?
シラーチルが手を伸ばす。
「お前が選ぶのだ」
その指先が、私の額に触れようとした——
その瞬間。
世界が、弾けた。
光と闇が混ざり合い、すべてが溶け合うように揺らぐ。
私は、意識の奥へと引きずり込まれていった。
——私は。
——私は、何を選ぶ?
そして、私は目を開けた。
そこには——
新たな世界の始まりか。世界の終焉か。