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光が渦を巻く。
目を細めると、そこには白一色の世界が広がっていた。天井も、壁も、床も、すべてが光を孕んだ白。境界が曖昧で、どこまでが地面でどこからが空なのか、すぐには分からなかった。
リーモアは、何もかも知っているような顔で静かに微笑んでいた。
「ここは?」
「君が歩むべき最後の道の入口さ」
リーモアはゆっくりと歩き出す。彼の足元にだけ、淡い影が落ちる。それがなぜか、とても不思議に思えた。
——影がある。
それはつまり、光があるということ。
ならば、この世界の光はどこから生まれているのか?
「……リーモア」
「なんだい?」
「この光の正体は?」
リーモアは少しだけ足を止め、振り返った。
「それはね——君自身の記憶だよ」
記憶?
思わず足元を見つめる。
白い床。
白い壁。
だが、目を凝らしてみれば、そこにはかすかに揺らめく何かがあった。水面のように、触れれば波紋を広げそうな、淡い揺らぎ。
——記憶。
「君が歩んできた道、見てきた景色、感じた想い……そのすべてが、この世界を形作っている」
リーモアの言葉に、息を呑む。
今までのすべてが、ここに集約されている?
「だからこそ、君はここで選ばなければならない」
「……選ぶ?」
「そう。君が、何を見て、何を感じて、何を願うのか——その答えを」
ふと、視界の片隅に変化が生じた。
——闇。
真っ白な世界に、ぽつんと小さな影が落ちる。
それは、最初はただの影にすぎなかった。だが、ゆっくりと、それは形を持ち始める。
「……これは?」
リーモアは、目を細めた。
「君の内にある、もう一つの可能性」
影は、ゆらゆらと揺れる。
まるで問いかけるように。
まるで待ち望んでいるように。
「君は、この世界をどうしたい?」
リーモアの声が、静かに響く。
——どうしたい?
この世界を?
この、すべての始まりと終わりを?
思考が、加速する。
リーモアは、ただ見つめている。
選ぶのは——私。
光と、影と。
創造と、破壊と。
終わりと、始まりと。
私が——選ばなければならない。