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リーモアは、吹き抜ける風の流れを指でなぞるようにしながら、静かに言った。
「また会えるよ」
それは確信に満ちた声音だった。まるで、まだ起きていない未来をすでに知っているかのように。
「風みたいなものさ。どこかに行っても、いずれ戻ってくる。遠くへ流れていくように見えて、ほんの些細なきっかけで巡り合う」
「だから、僕たちはまた会う」
そう言い切るリーモアの横顔には、どこか懐かしさすら感じる穏やかさがあった。
風が大きく舞い上がる。
乾いた草の香りが立ち上り、世界がゆっくりと橙色に染まる。
「……ねえ」
リーモアはふと足を止め、こちらを見つめた。
「覚えていてほしいことがある」
空に向かって手をかざす。光が指の間をすり抜け、かすかな影を地面に落とした。
「この世界は、何もかもが『ある』ものだと、当たり前に思いがちだけどね」
「本当は違う」
「いつだって、何かを失いながら、何かを得ている」
「そのバランスの上に、僕たちは立っているんだ」
静かに、リーモアは微笑んだ。
「また、どこかで」
そう言い残し、彼は草原を歩き出す。
長い影が夕陽に溶け込むように、少しずつ遠ざかっていく。
風が、彼の背中を押すように吹いた。
「いつか、必ず」
その言葉だけが、風に乗って響いた。