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——喝采が鳴り響く。


雷鳴のような拍手、狂ったような口笛、歓喜に満ちた嬌声。

それらが重なり合い、渦巻き、天井の見えない劇場にこだまする。

私はひたすらに逃げる。


「いいねぇ!素晴らしい!最高の一手だったよ!」


仮面の男が手を叩く。

彼の瞳は夜のように深く、まるでこの狂気の舞台そのものを愛しているかのようだった。


そして、その傍ら——


影が、私を見ていた。


「私の番?」


音が止まる。

観客たちが静まり返る。

舞台の空気が、急激に冷えていく。


影が微笑む。


「それじゃあ——少し、楽しいことをしましょう?」


言葉と共に、影が指を鳴らす。


——世界が、反転した。



地面が歪み、劇場の形がぐにゃりと変わる。

舞台と客席が入れ替わり、壁が天井となり、光が闇にのみ込まれる。

誰もが歓声を上げる。

まるで、自分たちがこのカオスの一部であることを誇るように。


私は立っている。


盤の中央に。


影もまた、そこに立っていた。


「ねえ、知ってる?」


影が囁く。


「ゲームってね、必ず勝者と敗者がいるの。」


「……そうね。」


「でも、それが二者だけだとは限らないのよ。」


影がくるりと回る。

その仕草はあまりに軽やかで、まるで羽根のように儚かった。


「私たちが“駒”ならば、誰が“プレイヤー”なの?」


ぞくり、と背筋が凍る。


影が私をじっと見つめる。


「あなたは、誰?」


その問いが、私の脳に杭を打ち込む。



ピエロたちが笑う。

道化たちが踊る。

狂気の舞台は、なおも続く。


鐘の音が鳴る。


次のターンが始まる。


——それは誰の手番?


私は?

影は?

観客たちは?


このゲームの、本当の“プレイヤー”は?

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