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朝になっても、雨は降り続いていた。いや、正確には昨夜よりもさらに激しくなっている。窓ガラスに叩きつける雨粒の音が、目覚まし時計のアラームよりも早く私を目覚めさせた。
「……今日もか」
カーテンを開けると、灰色の空に浮かぶ城が見えた。いつもと変わらない風景だ。しかし、今日は妙に違和感があった。城の輪郭が、昨夜よりもかすかに揺らいでいる気がする。まるで、空そのものが歪んでいるような――。
「……気のせい、かな」
少し寝ぼけているせいかもしれない。そう思いながらスマホを手に取り、いつものようにニュースサイトを開く。しかし、そこに表示された見出しに、私は思わず息を呑んだ。
『城の住人が現れた!? 謎の青年が目撃される』
――城の住人?
記事を開くと、写真が添付されていた。雨の中、フードを目深に被った細身の青年が写っている。顔ははっきりとは見えないが、その存在感は確かに異質だった。まるで、この世界に馴染んでいないような――。
「……まさかね」
私はスマホを閉じ、朝の準備を進めることにした。しかし、なぜか胸の奥がざわついている。