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「……世界を、救う?」
私の声はかすれていた。頭の中は混乱しているのに、どこかでその言葉がしっくりくる感覚があった。
黒い“私”は微笑を浮かべたまま、手を差し出す。
「君はかつて、世界の均衡を守る存在だった。でも、敗北し、記憶を失った。」
「……私が負けた?」
「そう。君は影に飲み込まれ、転生した。でも、まだ終わりじゃない。」
私は震える指で、自分の胸元を押さえた。心臓が強く脈打っている。
「でも……何も覚えていない。どうすれば?」
「心配しなくていい。私が“鍵”を開ける。」
黒い“私”はそう言って、指先を私の額にそっと触れた。
——次の瞬間、視界が白く染まる。
目の前に広がるのは、果てしない荒野。
冷たい風が吹き抜け、空はどこまでも赤い。
その中心に 黒い塔 がそびえ立っていた。
「ここは……?」
「君が最後に立っていた戦場。」
隣に立つ黒い“私”が淡々と告げる。
「そして、ここで 世界の終わりが始まった 。」
胸の奥で、何かが疼く。
私は拳を握りしめ、塔を見つめた。
「……私は、どうすればいい?」
黒い“私”は静かに微笑んだ。
「決めるのは、君自身だよ。」
——この世界を救うのか、それとも……。