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「驚いた?」
黒い甲冑の“私”が、ゆっくりと歩み寄ってくる。
焼け焦げた大地を踏みしめる音が、異様に大きく響いた。
私は後ずさりながら、目の前の存在を見つめる。
「……あなたは、誰?」
「だから言っただろう?」
黒い甲冑の“私”は、剣の柄に手をかけながら微笑む。
「半分は、君だ と。」
「……どういう意味?」
心臓が嫌な鼓動を打つ。
——この感覚。
まるで、自分自身が否定されるような 恐怖。
「さあ、どこまで説明すればいいかな?」
黒い“私”は剣を持ち上げ、刃先をこちらに向けた。
風が吹く。
血の匂いが鼻を刺す。
「君は、まだ何も知らないまま、ここに来た。」
「でも、君が『私』にたどり着くのは、運命 だったんだよ。」
「……運命?」
「そう。だって——」
黒い甲冑の“私”が微笑みながら、静かに告げた。
「君は“ここ”で生まれたんだから。」
—— 何を言っているの?
脳が理解を拒む。
私は、この戦場なんて知らない。
私は、ただ……
「さあ、思い出して。」
黒い“私”が剣を構えた。
「君が 何者なのか を。」