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私は日によって帰る道を変えている。何もない町ではあるけれど、それでも私的に綺麗だと感じる通りもある。クリスマスが近づいている影響で、アーケード街は軒並みライトアップされ、心なしか歩くカップルの姿は増えた気がする。今日はそのアーケード街は通らない。なんとなく今日あの通りは私には違和感があった。
通りによって車内BGMも変えたりしている。今日は大きな葬儀場がある通りに決めた。葬儀場マニアというわけではない。ただ、あの通りには私の好きな西洋風の建物があった。昼間は特に何も感じないが、夜になるとあの建物は独特の雰囲気を出す。おそらく4階建の普通のマンションだけども、夜灯りが点いているのを見たことがなかった。そもそも周りの建物と見た目が違うから余計目立っていた。
車内には私のお気に入りのギターアーティストの曲が流れている。どこか幻想的な曲調の彼の曲は好きだ。
なんとなく外の空気を欲した私は、10センチほど運転席の窓を開けた。気がつくと、あの建物を通り過ぎようとしていた。いつも通り居住者がいないのか、何一つ明かりは点いていなかった。建物入り口が真横に来た時、人影が一瞬見えた気がした。視力があまり良くないので何かの見間違いだろうか。目立つ外観をしているが、建物について私の周りで話に上がったことはない。ただのアパートなら話にも上がらないのが普通かもしれない。そうして私は家に着いた。