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鋭い風が頬を切るように吹き抜けた。


私は肩をすくめながら、ぼんやりと目の前の光景を眺める。


目の前にそびえ立つのは、不気味なほど静まり返った黒い城。その塔は雲を突き抜けるほど高く、夜空に飲み込まれそうなほど暗かった。


「……ここは?」


つぶやいてみるが、返事はない。


まるで夢の中に迷い込んだような感覚だった。


だが、風の匂いも、足元の冷たい石畳も、確かに“現実”のものだ。


私は慎重に周囲を見回した。城の門はわずかに開いている。誘われるように、一歩踏み出した。


そのとき——


「待って。」


背後から声がした。


——私の声だった。


振り向くと、そこには“私”がいた。


黒いコートを翻しながら、静かにこちらを見つめている。


「……また、あなた?」


「私のことは“影”と呼んでくれていい。」


影——つまり、私の“もう一人の私”が、ゆっくりと口を開いた。


「君は、これから何をするつもり?」


「……何をするって、この城の中に入るしかないでしょ?」


「そう。でも、選択肢はそれだけじゃない。」


影の瞳が揺れる。


「この世界には、道がいくつもある。君がどれを選ぶかで、すべてが決まる。」


「……どういう意味?」


影は答えず、ただ私を見つめた。


そして、かすかに微笑んだ。


「もうすぐ、すべてがわかるよ。」


その言葉とともに、影の姿がゆっくりと霧のように消えていった。


私は拳を握りしめ、決意を固める。


——もう迷わない。


私は門を押し開き、黒い城の中へと足を踏み入れた。

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