表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/99

10

ノックの音が鳴った後、一瞬の沈黙が訪れた。


私は戸惑いながらも、ドアに近づく。こんな時間に訪ねてくる人などいるはずがない。それに、インターフォンも鳴らしていない。ドア越しに静かに耳を澄ませると、外からは何の物音もしない。ただの空耳か?


だが、次の瞬間——


コン、コン。


まただ。確かにドアが叩かれた。


深く息を吸い込み、意を決してドアノブに手をかける。そっと回すと、わずかに隙間を作るようにドアを開いた。


そこに立っていたのは——


「……え?」


目の前にいたのは、私自身だった。


黒いコートに身を包み、髪型も顔立ちも私と瓜二つの人間が、無表情のままそこに立っている。


「……やっと見つけた。」


私と同じ声が、冷たい夜気の中に響いた。


反射的にドアを閉めようとした瞬間、“私”は素早く手を伸ばし、ドアを押さえた。


「待って。話を聞いてほしい。」


「……あなたは、誰?」


「君が思っている通りの存在だよ。」


“私”は静かにそう言いながら、一歩前に踏み出す。


同時に、背後の闇がわずかに揺れた。まるで、何かがうごめいているかのように——


その瞬間、全身の毛が逆立つような寒気が背筋を走った。


「……あなたは?本当に”私”なの?」


私は震える声で問いかける。


すると”私”は、少しだけ表情を緩めた。


「……半分は、ね。」


そう言った瞬間、世界が暗転した。


まるで目の前の現実が崩れ落ちるように、意識が深い闇へと引きずり込まれる。


次に目を開けたとき、私は見知らぬ場所に立っていた。


——空が、近い。


夜空を覆う黒い雲の合間から、城の尖塔が顔を覗かせていた。


ここは、どこだ?


風が冷たく吹き抜ける中、私はただ呆然と空を見上げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ