第十二話
更新が遅くなってしまいました。今回の話は長いと思いますが、最後まで読んでくれるとありがたいです。
今日は何もすることがないので、とりあえず朝食をとろうと、一階に降りると、お姉ちゃんが外着に着替えて、荷物の整理をして、出掛ける準備をしていた。何か予定でもあるのだろうか。
「どっか行くの?」
今日は仕事が休みのはずだし、スーツじゃないから、誰かと遊びに行くのだろう。この時期だから、もう仲が良い人ができていても不思議じゃない。
「楓さんと遊びに行くの。同い年だから気が合って、連絡をとりあううちに、今度どこかへ一緒に出掛けますかって言われて、それでね」
あの人って、お姉ちゃんと同い年だったのか。共通点も多いだろうし、話が合うのも頷ける。
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
お姉ちゃんは部屋から出て行き、玄関の開け閉めと鍵を締める音が聞こえた。
朝食も食べ終わったことだし、自分の部屋に戻って勉強でもしておこう。
勉強机に置いてある教科書とノートを広げて、いざ始めようとした途端に雅紀くんから連絡があった。確か日曜日は陸上部は休みだったはずなので、暇をしているんだろう。
でも、雅紀くんから誘ってくるなんて、珍しいこともあるものだ。一体どんなことを送ってきたのか、確認してみると、茜さんの家で七海さんと一緒に集まってるから、来ないかという内容だった。特に用事もないので、行くという返事をした後、着替えや戸締りを済ませて、財布や携帯をポケットの中に入れて、やろうとしていた勉強の用具をカバンに入れて、学校に向かった。
僕が着く頃には、すでに雅紀くんが学校の前で待っていた。
「ごめん、わざわざ迎えに来てもらって」
「そんなことないよ」
軽い挨拶を交わすと、二人で茜さんの家へ向かって行った。何か話すこともなく、黙々と歩いていったので、その時間は二人に何をされるか考えたりとか、勉強した部分を頭の中で復唱したりしていた。
「急に呼び出してごめんな。最初は三人だけの予定だったんだけど」
申し訳なさそうに話していた。今日一日は勉強だけで時間を潰すつもりだったから、そんなこと気にしなくてもいいのに。
「今日は暇を持ち余してたから、むしろ呼ばれて嬉しいくらいだよ」
「それなら良かった」
雅紀くんの表情が明るくなった。そんなに僕を突然呼んでしまったことが気がかりだったんだろうか。そんなに気を遣ってもらわなくても大丈夫なのに。
「なんで俺らの周りって変なやつばっかなんだろうな」
茜さんを始め、結構特殊な人ばかりではあるのは確かだ。そういう人たちの縁があると言えば、それまでだが、それにしても不思議だ。
「おかげで毎日退屈しません」
「空も大変だな。気持ちはよく分かるよ」
あの二人と仲良くしてきている雅紀くんの方が、扱いについては慣れてるだろう。口から出た言葉は、その分苦労してきているからこそ出た言葉だろう。僕なんかより大変な思いをしている雅紀くんには凄い以外、何も言葉が出てこない。
茜さんの家に着くと、雅紀くんがインターホンを押して、茜さん達を呼んだ。
「やっと来た。連れてくるのが遅いよ」
「そんな無茶言うなよ」
会う度に定番となっている二人の掛け合いが始まった。僕は二人をスルーして家の中に入っていき、玄関で終わるまで待っていた。
やっと終わったのか、二人とも家の中に入ってきた。
「お待たせ。じゃあ部屋まで案内するね」
茜さんが前を歩き、その後ろに僕と雅紀くんが付いて行った。あまり人の家でキョロキョロするのは良くないと分かってはいるものの、緊張して無意識のうちにしてしまう。
「ここが私の部屋だよ」
「それじゃあ、お邪魔します」
茜さんが部屋のドアを開けると、退屈そうにしている七海さんが待っていた。部屋の中に入ると、女の子らしいものが、ところどころにあった。失礼かもしれないが、無駄なものが置いていない殺風景な感じのする七海さんの部屋とは対照的だった。
「茜さんらしい部屋だね」
「褒め言葉として捉えておくよ」
茜さんが床に座ると、僕のところにクッションを置いて、そこを手で叩いていた。そこに座ってということだろうか。何もそこまでしなくても地べたに座るのに。
「ここで何してたの?」
「前みたいに三人で遊ぼうかなって思ってたんだけど、やっぱりそーちゃんが居たほうがいいなと思って」
そう思ってくれてるのは、僕にとって凄く嬉しい。やっぱりこの人たちと仲良くなれてよかった。
「空が来たのはいいけど、結局何するのか決まってないじゃない」
何かやることがあって、呼び出したんじゃないのか。やることが決まってなくても、このままダラダラとくつろいだりして、ゆっくりするのもありっていうか、むしろそうしてくれるとありがたい。
「やることないんだし、私達の昔話でも聞く?」
その提案に僕が小さく頷く。どこかに出かけて疲れるよりは、興味のある三人の馴れ初めを聞いたほうがいいだろう。
「小学生の時に雅紀と仲良くなったのかな」
顔を上に向けながら、思い出すように話している。そんな頃から知り合ってると、もう居るのが当たり前みたいになってそう。
「あの頃は可愛かったのに、今はこんなに大きくなっちゃって残念」
「何が残念だよ」
すかさず雅紀くんがツッコミを入れると、茜さんは本棚の中からアルバムを引っ張り出し、写真を皆に見せてきた。
「これが小学生の時の私。そして、こっちが雅紀。今と全然違うでしょ」
確かに全然違う。今の面影は若干あるものの、身長が小さくて女の子みたいで可愛かった。同じ人物とは思えない。きっと今とは違う意味で人気だっただろうなと思ったし、昔から茜さんがそのままだったとすると、仲良くなった理由も分かる。
「修学旅行のときは楽しかったよ」
「何が楽しかっただ。俺で遊んでたくせに」
そうすると、修学旅行の時の写真を広げ、雅紀くんが茜さんや他の女の子と写っている写真を指さした。
「もうこれは、まるっきり女の子にしか見えないよね」
「見えないよねって、お前らがやったことだし、こんなの着けてたら誰だってそう見えるだろ」
雅紀くんがロングヘアのカツラを着けられて、恥ずかしそうにしている姿があった。子供ならぱっと見で男の子にも女の子にも見える中性的に見える子がいて、その子が女の子の髪型のカツラを着けると、それなりに見えたりするけど、その写真に写ってる雅紀くんは、茜さんを含め、他の子よりも可愛い女の子らしく、これが男の子と言われても信じられないくらいだ。
「なんでお前らに体力が無くなるまで追いかけ回されなきゃいけないんだって思いながら、その時は必死に化け物から逃げるみたいに走りまわってたのは、今でも嫌な思い出として記憶に残ってるよ」
「こんなに可愛い姿を私達に見せるのが悪いんだよ」
興奮しながら追いかけまわしている茜さん達の姿が頭に浮かぶ。確かにこんなのが襲ってきたら、体力が完全に無くなるまで逃げ回らないと、命まで奪われそうな感じはする。
こんなことをされていたなんて、小さい頃の方が歯止めがきかなくて、危なかったんだろう。
「久しぶりに小さい頃の写真を見ると、雅紀ってあんなに可愛かったんだなって、しみじみと感じるね。もうこの写真だけで、ご飯何杯でも食べられるよ。このまま成長していったら、水希くんと一緒に女装させて、姉妹写真みたいにさせられたのに」
「こんな風になってよかったよ」
雅紀くんは胸を撫で下ろしていた。そんな恐ろしいことをさせられなくて良かったと思っているんだろう。僕も暴走している茜さんは手に負えないから、そんなことにならなくて安心した。
小学校のアルバムを本棚に直し、今度は中学校の時のアルバムを出してきた。クラスメイト一人ずつ写っている写真があるが、一年生の頃の雅紀さんは男装をしている女の子にしか見えない。周りから変な目で見られただろうなと思う。
「最初、雅紀を見た時は制服を間違えてるんじゃないかって思ったもんね」
やっぱりこんな風貌だと、絶対に違和感を感じるからね。この格好はおかしいと思ってしまうのは仕方ないと思う。
それからアルバムをめくっていくと、三年生の時の写真が見つかった。そこには、今と同じような感じの雅紀くんが載っていた。男の子の成長は早いなと思うのと同時に、なんで僕は背が伸びなかったのだろうと嫌なことを考えてしまった。
「中学生でみるみる成長していっちゃって、今みたいな背が高いだけみたいになっちゃったというわけ」
「なっちゃったって」
思わずツッコミを入れてしまった。今は雅紀くんは格好いい感じだが、それが茜さんにとっては、ずっと可愛いままでいてほしかったというのは、分からなくはない。
「小学生の時の可愛さを残したままの姿だったらどうなってたんだろう」
茜さんが目を閉じて、顔を少し上向きにする。少し時間が経つと、顔がにやけてきていき、口が開いたままになっていた。その状態のまま、カバンの中から絵を描いているノートと筆箱を取り出したかと思うと、集中して絵を描き始めた。描き終わったのか、鉛筆を置いて僕たちに絵を見せてくれた。
「なんで俺が女子になってるんだよ」
「可愛すぎて女の子として描いてしまった」
絵を見ると、昔の可愛かった頃の雅紀くんの制服姿と普段着姿を描いていた。どっちも女の子が着るようなものなのはいいとして、二つとも胸の部分が異様に盛り上がって、完全に胸の大きい女の子の絵だった。
「もう一回、描き直すから待ってて」
そう言うと、鉛筆を持ってノートに絵を描き始める。それが終わると、また僕たちに見せてきた。
「なんでこんな服を着てるんだ」
「可愛いからいいでしょ」
またしても、女の子の服を着た絵だった。泣きそうな表情にしているのは、個人的な趣味だろう。それにしても、よくこんな絵を数分で描けるな思う。こんな上手い絵を速く描けるのは羨ましい。
「思い出に浸るのもいいけど、そろそろ昼ごはんにしない」
壁に掛けてある時計を見てみると、もう正午をとっくに過ぎていた。話を聞くのに集中し過ぎて、全く時間なんて気にならなかった。念のために勉強道具を持ってきたけど、今日は使うことはなさそうだ。
「どっかに食べに行くか、買い物して雅紀と空に作ってもらうかのどちらかね」
どちらにしても、この二人は元から作る気などなく、食べるだけで済まそうとしているのか。茜さんもあんなに器用なら、料理ぐらい少し練習すれば、できそうなんだけどね。
「お前らも料理に参加するという選択肢は無いんだな」
なんだか二人だけ楽をしようとしていて、不公平に感じる。これだとお金は多少かかっても外食にした方が良さそうだ。僕たちが作ってるところを見られるだけというのは、なんか嫌だし。
「材料をお釈迦にしていいって言うんなら、私達が手伝ってもいいよ」
そんな勿体無いことは絶対にさせない。安全な工程のものしかさせないから、見ているだけより手伝ってほしい。この人達でも大丈夫な工程が分からないけど。
「材料を茜と七海だけで賄ってくれるんだったら、俺と空で料理を振舞ってやってもいいぞ」
「その提案、のった」
その交渉条件なら、僕も納得だ。だけど、二人に買い物を任せると、何を買ってくるか分かったものじゃないので、何が食べたいか聞いて、買うものは僕と雅紀くんが選んでくる。
「何が食べたいの?」
「二人が作るものなら、なんでもいいよ」
それが一番困るんだけどな。今食べたいものなんて無いし、簡単な料理と言っても、数え切れないほどあるし。
「材料見ながら考えるか」
雅紀くんの提案に頷いて賛成のサインを見せると、貴重品を持ってスーパーに全員で出かけた。
スーパーに売っている野菜や肉類は種類が多く、どの値段の何を買うか、一向に決まらない。こういう時に自分の食べたいものが頭に浮かんでくれればいいのだが、売っている商品を見ても、何も浮かんでこない。
「もうカレーでいいか?」
「私はいいよ」
全員が賛成し、それぞれがジャガイモやニンジン、そして牛肉を持ってきて、雅紀くんが持っているカゴの中へ入れる。カレールーの辛さは皆で決めて、中辛となった。
「はい、これ」
雅紀くんが茜さんにカゴを渡す。レジに行っている間に三人で外に出て、払い終わるのを待っていた。やっぱりスーパーの中はエアコンが効いて涼しかったのか、若干暑く感じる。
「お待たせ。荷物重いから持って」
この中で唯一の男の子である雅紀くんにスーパーの袋を渡した。遠慮なくスッと渡せるあたり、互いの関係が伺える。
「雅紀が居て良かったよ」
「それはどうも」
感情のこもってない返しをしていた。荷物持ちとして利用されてるんだから、当たり前といえば当たり前だ。
家に着くと、買ってきた材料をテーブルに置き、袋から取り出してキッチンへ持っていく。これからカレーを作っていくのだが、なぜか茜さんと七海さんが食卓のテーブルの椅子に座っていた
「なんでもう座ってんの」
人に見られながらだと、気が散ってしまうから、どこかへ行っておいて欲しい。そこに居られると、早くしないといけないんじゃないかと思ってしまい、どうも落ち着かない。
「そんなに暇なら食器とか出しとけよ」
茜さん達に指示をすると、雅紀くんはもう野菜を切り始めていた。僕も早速その手伝いをしようと、ジャガイモの皮を剥いて、一口大の大きさに切っていく。
「切るの上手いな」
雅紀くんが褒めてくれた。そんなことを言っている本人も僕以上に手際よくしてる感じがする。料理が上手い男の子って人気があるだろうな。
「雅紀くんほどじゃないよ」
僕がそう言うと、褒められるのに慣れていないのか、雅紀くんが恥ずかしそうに照れていた。なんだか昔の女の子だった可愛さが見えた気がした。
「二人でイチャついてんじゃないわよ」
「イチャついてなんかないよ」
ヤジを飛ばされたので、びっくりして大きな声で返事してしまった。そんなこと言われたのは初めてだったので、どう対処していいか分からない。
「擬似百合……えへへ」
「どこをどう見たら、そんな風に見えるのよ」
百歩譲って七海さんの言ってることは分かるとして、茜さんの言ってることは全く分からない。一体どういう思考回路をしているのか、今でも謎ばかりだ。
「脳内再生で昔の可愛いままで成長した雅紀を現実に当てはめて、それを視覚情報として受け取っているだけだよ。簡単でしょ?」
そんなことを平気でやってのけるなんて、一体どこの能力者なんだよ。もはや、もう人間技の範疇を超えて、常人には理解できない域に達してしまっている。そんな人を分かろうとすること自体が間違った行為なのかもしれない。
「男の子なのに料理できるなんて凄いね」
「一人暮らしした時に、家事とかは最低限出来るようになれって言われたからね」
それって、あまり男の子に言うようなセリフじゃない気がする。どちらかというと女の子に言う言葉だ。最近は性別なんて関係ないのかもしれない。そんなことを元男の僕が言うのもなんだけどね。
「それって私達に対する嫌味?」
「そう聞こえるなら、七海も出来るように練習したらどうなんだ」
ぐうの音も出ないような正論だ。これは反論のしようがないだろう。もしこれで言葉を発したとすれば、それはただの言い訳だ。
「お母さんと水希がいるから大丈夫だもん」
「そんなんでいいのか」
やってくれる人がいるから、私はしなくてもいいという考え方に、雅紀くんが呆れてしまっている。僕も苦笑いしかできなくて、雅紀くんも僕と同じようなことを思っているに違いない。
「水希に可愛さで負けるのは仕方ないにしても、家庭的な部分でも負けてたら、女子として勝てるところ、一つも無いぞ」
「水希に負けたって悔しくないもん」
そんなことを言いながら、若干涙目になってしまっている。本当は男の子である水希くんに女の子らしさで負けるのは、悔しくて嫌なんだろう。性格面でも、従順で尽くしそうな感じなのに対し、彼女は自分の思ったことは言いたくなる性格。どちらがいいかは分からないが、リードしたい人にとっては水希くんの方がいいだろう。引っ張ってほしい人は七海さんの方がいいと思うが、一般的な女の子らしい性格といえば、水希くんの方になるだろう。
「水希は女子よりも女子な男子だからね」
「そうそう。そういうこと」
言わんとしていることは分かるけど、だからってやらなくていい理由にはならないと思う。それに出来ることを増やした方が絶対に得だし、それが家事ならなおさらだ。
「出来たほうがいいのは分かってるんだけどね」
料理をするのが怖いのだろうか。でも失敗は何事にもつきものだし、そんなことを言うのは七海さんらしくない。
「二人なら大丈夫だよ。きっと僕よりも上手くなると思う」
「励ましてくれて、ありがとね」
これで少しでも料理に対して、前向きになってくれたらいいのだが、それはどうだろうか。
「でも私は食べる専門のままでいいや」
「私もそのままでいい」
二人とも料理をしない宣言をしていた。そんな残念な二人は、ご飯の支度を終えて、こちらを見ながら食卓のイスに座って待っていた。
「空って、いつから料理するようになったの?」
お母さんの手伝いで始めたけど、それも小学校の低学年くらいだった。それを含めないなら、いつぐらいから一人で料理できるようになったかは、具体的に覚えていない。おそらく小学生の間には出来るようになっていたと思う。
「手伝いをし始めたのは、小学生になってからだったと思う」
その手伝いも自主的にやったことだから、嫌という感情は全く感じなかったし、それどころか、お母さんと話せる時間が増えて嬉しかったような記憶がある。
「料理できる人って、ほとんどが親の手伝いからって人が多い気がする」
自分一人でやり始める人は、確かにそんな聞かない。やっぱり小さい頃は両親と触れ合うのが楽しいだろうから、やればやるほど褒めてくれて、それでやる気になって、いつの間にか一人でも料理ができるようになっていたというパターンが一番多いだろう。
「それはそうかもね」
お母さんが大変そうだから、水希は自分も手伝わないといけないんじゃないかという話を前に七海さんが言っていたことを思い出す。案外僕も、水希くんのような気持ちになったから、手伝っていたのかもしれない。
「よし出来た。あとは煮込むだけだな」
カレー自体は出来たので、僕たちの皿をキッチンのところへ持ってきて、コップの中にお茶を入れた。やることが無くなったので、椅子に座って待っていた。
「空って彼氏とかできたことあるの?」
「そんなのないよ」
この間まで男子だったんだから、彼氏とかできるわけがない。でもこの年齢で恋人が一人もできたことがないのは、おかしいのだろうか。確かに付き合ってるんだろうなという人は、それなりに居たが、ほとんどは居なかったと思う。
「意外かも。空って可愛くてスタイルも良いし、ちょっと前にラブレターを貰って告白されてたから、モテてたんだろうなと思ったのに」
「あれだろ。告白は何回もされたけど、好みの相手が居なかったからじゃないか」
そんなもの高校に入学するまで貰ったことなかったよ。むしろ貰っている相手を見て、羨ましいと思っていたような立場の人間だったよ。
「人を選べるような立場じゃなかったよ。こんな小さくて可愛げのないような私みたいなのが人気なわけ……」
「ねぇ、空?」
七海さんが僕に顔を近づけてくる。それが妙に威圧感があって、無意識のうちに体を後ろに下げていた。
「謙遜のしすぎも、相手を傷つけてしまうから、失礼にあたるんだよ。知ってた?」
「すみません」
七海さんの迫力に圧されて、思わず謝ってしまった。自分を卑下しすぎたかもしれないが、人を選べるような立場じゃなかったのは事実なので、別に謙遜してるわけではない。
「七海さんは身長が高くて綺麗だから、結構モテてきたんじゃないんですか」
そう言った途端、七海さんが俯いて恥ずかしそうにしていた。これは相当なものだったのだろう。
「ななみんは相当モテてたよ。それはもう羨ましいくらいに」
やっぱりモテてきたんだ。こんなスタイルの良い人が居たら、人気になるに決まってるもんね。誇れることなんだから、恥ずかしがらなくてもいいのに。なんで触れられたくない過去みたいな反応をするんだろう。
「全員女の子だったけどね」
まぁ、カッコいい感じがするから、その人気があったのも不思議ではない。さっきの反応をしたのは、こういうことがあったからなのかと納得した。
「劇でも王子様役をやらされたりしてたもんな」
追い打ちをかけるように雅紀くんが補足する。そんなことをわざわざ口に出して言わなくてもいいのに。
「忘れようとしてるのに思い出させるなー」
大声で雅紀くんに言い返していた。本当に忘れたかった出来事なんだろうな。王子様役ということは、女の子にアレをしたってことなんのだろうか。
「確かやったのは白雪姫だったような」
「あーやめてー。聞こえない聞こえない」
でも劇だから、多分したふりだろうな。それでも周りから見たら、本当にしてるように見えるから、見にきたお客さんは歓声をあげていただろう。
「キスするふりをすると思ってたのに、まさか姫役の人が、少し起き上がって本当にキスするとは思わなかった」
茜さんがイキイキとした表情で、その時の出来事を話していた。こういうのは大好物なんだろうな。
「その時のななみんの表情も良かったし、王子様があまりにも綺麗なのでしちゃいましたっていうコソコソ話も良かったよ」
「もうそれぐらいにして、さっさとカレー食べよ。カレー」
早く終わりたいのか、昼ご飯を早く食べようと提案してきたので、皿にご飯を入れてカレーを注ぐ。全員の分が机の上に用意されると、皆が手を合わせる。
「いただきます」
全員で一斉に言うと、皆カレーを食べ始めた。中辛なので少し辛く感じるが、それが程よくて美味しかった。
「やっぱりカレーは美味しいね」
「そうだな」
全員で味の感想を言いあいながら、どんどん食べ終えていく。数分後には、僕以外の全員が食べ終わっていた。自分の量は少なくしてあるのに、全然食べるスピードが違う。
僕も完食すると、全員でトランプをすることとなった。 内容的にはババ抜きや七並べというスタンダードなものだったが、一番負けの数が多い人には罰ゲームというルールになった。最下位が一番多かったのは七海さんで、その次に僕が多かった。助かってよかったと思いながら、どんな罰ゲームが待っているんだろうとドキドキしながら待っていた。
「罰ゲームは何にしようかな」
笑いながら手の指をバラバラに動かしていた。もう完全に襲いかかりそうに見える。これから何をさせるつもりなのか想像もしたくない。
「やりすぎはダメだよ」
「分かってますよ。そんなこと」
これは全く分かっていない顔だ。一位にならせてしまったばっかりに、こんな事態を招いてしまった。この人に節度がある行動は宝くじの一等を当てるくらいの確率しかないだろうけど、その確率を引き当てるよう祈るしかない。
「じゃあ今日一日は私の妹として接してもらおうかな。ななみんは私のことをお姉ちゃんって呼んでね」
茜さんにしては、随分と無難なものを言ったので、そっと胸を撫で下ろした。それでも私欲は多分に含まれてるけど。
「分かったよ。茜がそういうなら」
そう言った途端、茜さんが七海さんに顔を近づけていた。無駄に笑顔だから、それが逆に怖い。
「お、お姉ちゃんがそういうなら」
「良い子ね。七海」
姉妹というよりも母娘みたいに見える。それに茜さんが七海さんを完全に支配しきっているみたいだ。これはこっちも想像以上に大変なことになりそうだ。
「良い子の七海には、お着替えをさせてあげるからね」
「やったー。ありがとう、お姉ちゃん」
完全に棒読みになっている。可哀想ではあるが、無理に介入すると、こちらまで巻き込まれそうだから、助けたいのは山々だけど、頑張ってください。
僕たちがいる部屋から出て行った二人は、しばらく帰ってこなかった。一体どんな恐ろしいことが起こっているのだろうか。
「なんか七海に申し訳ないな」
「そうだね」
そう言いながらも、どんな服を着てくるかを楽しみにしている自分がいる。恥ずかしがってる姿が目に浮かぶようだ。
「おまたせ。今日は髪型に合わせて服装とキャラを決めたいんだけど、どうしようかなと思って」
服装だけでなく、キャラクターまで決めるというのは、とても面白そうだ。候補として何があるのだろうか。
「一つ目に思いついたのが、スタンダードなロングヘアで、清楚な感じにする」
いつものイメージとは少し違うが、身長が高いから、長い髪は似合うと思うので、一回は見てみたい。
「二つ目は、お下げにして、気弱な感じにする。いつもとギャップがあっていいと思うの」
確かにギャップがあっていいかもしれない。はっきりものを言う人が、言いたいことを言えないというのもいい。
「三つ目は、サイドポニーかポニーテールにして、元気な感じにしたいとも思う」
イメージと一番かけ離れてるのは、これかもしれない。良いのが多くて決められない。これは迷ってしまうな。
「四つ目は、ショートカットで無口な感じ。言いたいことはボソッと言うみたいな」
どれも良くて一つに絞れないな。いっそのこと全部を試しちゃえばいいんじゃないかと思ってきた。
「どれがいいと思う?」
「どれか一つに決められないから、全部やってみればいいと思うよ」
中間テストの勉強のこともあるし、あの時の仕返しも込めて、茜さんの好きなようにやればいいと思う。自分の私情もあるが、罰ゲームなんだから、きちんとやらないと罰にならない。
「分かった。全部二人に見せた上で、私が良いと思ったものを今日の衣装にする」
楽しそうにしながら、部屋から出て行った。最初はどれから出てくるのか楽しみだ。あの人がやられてる姿を見るのは久しぶりかもしれない。
「お待たせ。七海ちゃんを連れてきたよ」
「こんにちは。いつもお姉ちゃんがお世話になっております」
なんだか礼儀正しい感じだ。服装は白を基調とした服と淡い水色のスカートを身に着けていて、それが長い黒髪を映えさせていた。まさに理想の女性像とする人が多いであろう姿であるが、裏で何を考えているか分からないタイプだ。
「新鮮でいいね」
「褒めてくださり、ありがとうございます。中村さんのような人に言われると、とても嬉しいです」
成り切りすぎていて怖い。もう少し恥ずかしがる姿を見せてくれるかと思ったが、そうでもなかった。ちょっと残念かも。元が七海さんと考えると、面白いけどね。
「茜さんのことはどう思ってるの?」
「少しだらしないお姉ちゃんだと思ってます。家の中でも身の回りには気をつけてって言ってるのに、全く聞かないんですから」
見事に演じきっている。けどそれは、世話焼きで姉想いの妹という感じなので、僕の思っている清楚な人のイメージではない。でも敬語を使っておけば、清楚な人が使わないであろう汚い言葉には聞こえない。
「じゃあ次の衣装ね」
「では皆さん、またお会いできることを楽しみにしてます」
七海さんらしからぬ丁寧な物言いだったけど、やるからには徹底的にやってやろうという姿勢は彼女らしかった。次は何で来るだろうか。
「入ってきていいよ」
何も言わずに七海さんが入ってきた。何も喋らないのは新鮮で、どうすればいいか全然分からない。あまり話さないという点では、昔の僕を見ているみたいだ。
ショートカットで上着が長袖の青色でズボンが黒色だった。表情がほとんど変わらず、何を考えているか読み取れない。
「じゃあ、こっちに来て」
そう言うと、先に茜さんが部屋を出て、それについていくように七海さんが部屋を出て行った。なんかやりづらい感じだったな。
「今のどうだったと思う」
「話しかけていいのか、どうしたらいいか分からなかった」
やっぱり雅紀くんも同じことを思っていたのか。可愛いといえば可愛かったけど、僕には合わなかった。
「もう入ってきていいよ」
部屋の中に茜さんが入ってくると、その後ろでオドオドした感じの子が入ってきた。灰色の厚手のセーターを着ており、白いロングスカートを履いていて、髪型はお下げだった。
「こんにちは」
消え入りそうな声で僕たちに挨拶をしてきた。先程の無口な感じとは違い、こちらは頑張って話してくれようとしている感じだ。
それにしても、ずっと茜さんの後ろに隠れているのは、どうにかならないだろうか。弱気な性格の設定だから、仕方ないことだと分かっていても、気になってしまう。
「七海さん可愛いね」
「そんなことないです。あなたのほうが私なんかよりも、女の子らしくて可愛いし、何を着ても似合いそうで羨ましいです」
なぜか褒め返されてしまった。それが弱気な性格のイメージなのだろうか。
「ううん、七海さんのその服装、すごい似合ってると思う」
「気を遣わせてしまってすみません。こんな服、私には勿体無いですよね」
弱気とはいえ、自分のことを卑下しすぎなのではないかと思ってしまう。そこまで相手に気を遣う人なんて見たことない。
「じゃあ次にいってみるから、ちょっと待っててね」
そう言い、茜さんとくっついたまま離れなかった七海さんが出て行った。
見た目は一番好きだけど、性格がネガティブすぎるのは好きではない。僕的には、あの見た目で清楚な感じが一番好きだ。
「次で最後だよ」
ちょっと雅紀くんが疲れてる様子だったので、頑張るよう応援した。
「お待たせしちゃったね。じゃあ入ってきて」
「七海だよ。よろしくね」
無理してる感ありありだ。それでも頑張って演じきろうとしている。髪型は肩くらいまでのサイドポニーテールで、服装はお腹が見えて、袖が少ししかない黄色の服とピンクのミニスカートだった。いかにも今の女の子という感じの衣装だ。
「それにしても、表情がコロコロ変わって可愛いし、元気でいいね」
「そうでしょー。それが私の唯一の取り柄だからね」
明るく取り繕っていて、今までの中では一番いいと思うし、僕はこれしかないと感じるくらい良い。
「やっぱりこれが一番かな。だから今日一日はこの衣装で居てね」
「こんな可愛いのだったら、毎日でも着られるよ」
とびっきりの笑顔で返事をしている姿は、とても凄いと思う。喜怒哀楽が激しくて、愛嬌のある性格は七海さんにとっては、ほぼ正反対の性格だから、やっていて一番疲れるに違いない。
そう思っていると、僕の隣に七海さんが座り、いきなり話しかけてきた。
「空さんって、胸も大きくて可愛いじゃないですか」
「そんなことないよ」
語尾を伸ばして話してきた。もしかして僕を詮索しようとしているのか。そんなことは絶対にさせない。
「今まで彼氏とかって、居たことあるんですか?」
「一回も無いよ」
昼に聞いたものをまた聞いたって答えは同じに決まってるじゃないか。なんでそんなことをするのか考えてみても、その意味は分からなかった。
「意外。じゃあ彼女が居たことはあるんですか?」
「そんなことあるわけないじゃないか。僕はレズじゃないんだよ」
彼女を聞かれたときのほうが反応を大きくしてしまった。もしかして、心の方も女の子に近づいてしまっているのだろうか。
「焦ってるっていうことは、実は居たんじゃないですか?」
キャラを利用した尋問が始まってしまった。これはどう切り抜けたらいいんだ。
考えている間に体を寄せてきて、接触しながら小さい声で呟いてきた。
「私は可愛い女の子は大好物なんです。空さんみたいな人を見ていると、襲いたくなっちゃうんですよ」
真剣な眼差しで揺さぶりをかけてくる。絶対に負けちゃダメだ。でも、恥ずかしくて自分の顔が熱くなってきた。
「顔が赤くなってますよ。もしかして想像していたんですか」
こんな攻撃に負けていては、また良いように利用されてしまう。ここは反撃を繰り出そう。
「そんな度胸があるのなら、是非ともやってほしいよ」
これで流石の七海さんも諦めてくれるだろう。茜さんじゃないんだし、本気で襲おうなんて微塵も思っていないに違いない。
「好きにしていいんだって、お姉ちゃん」
「じゃあ、一緒に来ましょうね。そーちゃん」
茜さんが僕の手を握って、部屋の外へ連れて行こうとしていた。それを見ていた七海さんが満面の笑顔で手を振っていた。全部計算で僕も同じ目にあうように誘導していたのを今頃になって気づき、見事にはめられてしまった。おそらく、あの笑顔は演技などではなく、素の表情だと感覚的にわかった。あの笑みが憎たらしい。本当、あの人は裏で何を考えてるか分かったものじゃないな。
違う部屋に連れてこられた。そこにあるクローゼットの中からカツラや服が違う空間に繋がっているんじゃないかと思うくらい大量に収納してあった。
カツラはポニーテールで服装は落ち着いた感じのものとロングスカートだった。もっと過激なものをされると思ったが、意外にもまともなもので安心した。
「そーちゃんは私のお姉さん役ね。しっかり者の感じだから、そこのところよろしくね」
「身長とか色々なものを考えると、僕が末っ子の方が妥当なんじゃないの」
ふとした疑問を茜さんにぶつける。僕はお姉さんというほどしっかりしてる人じゃないし、責任感があるわけでもないのに、なぜその役をやらせるのか。
「イメージと違うからいいんじゃないの。身長が高いななみんが妹で、身長の低いそーちゃんが姉っていうのがそそられるの」
さも当たり前かのように言っている。ギャップがあっていいのは分かったが、その変態的な目で見るのはやめて頂きたい。
「お姉ちゃんは準備出来た?」
「出来たよ」
慣れてない呼ばれ方をすると、妙に恥ずかしい気分になる。でもお姉ちゃんって言われると、ちょっと嬉しいかも。
「じゃあ、早くきて」
茜さんが先を歩いていき、二人がいる部屋を開けた。制服で履き慣れたのか、スカートを履くのに抵抗がなかった。
「お待たせ。私のお姉さん連れてきたよ」
そう言った後に、僕が部屋の中に入っていき、笑顔でお辞儀をする。顔を上げた後に七海さんが僕の手を握って隣に座らせた。その時の茜さんは笑っているだけだった。
「空姉ちゃん、大好き」
隣にいる七海さんが、僕の腕に腕を絡ませながら、僕の肩に顔を乗せてきた。安心したような表情だったので、無下には出来ず、しばらくそのままにしていた。
「肩が凝るから、もう離れてくれる」
「お姉ちゃんが言うなら、そうする。でも肩が凝る原因は他にもあると思うな」
そう言いながら、七海さんは僕の胸のところをじっくりと見ていた。反射的に後ろに向いて胸を隠すようなことをしてしまい、恥じらってしまった。
「私だって好きで大きくなったんじゃないんだからね」
小さい独り言のような声で言ったにも関わらず、地獄耳の二人には聞こえていたのか、振り向いてみると、何か話していた。
「空姉ちゃんを見てると、どういう反応をしても可愛いっていう感情が出てきちゃう」
だからって何をやってもいいという理由にはならない。こっちまで罰ゲームみたいなことをやらされて、もう何がどうなってるか分からない。
「それには同意」
雅紀くんまで、そっち側の味方についてしまったら、僕を助けてくれる人が居なくなっちゃうじゃん。一対三なんて相手にすらならないよ。
「七海は肩を乗せてもらったのに、私には何もないなんて、絶対におかしい。だったら私は頬をスリスリするもんね」
気分を良くしたのか、茜さんは勢いよく僕に抱きついてきて、押し倒されるかたちになってしまい、為すがままにされた。
「頬擦りだけもなんだから、他のこともしちゃおうかな」
茜さんが僕のお腹のところを脱がせて、腰辺りから直にお腹の真ん中のところを人差し指で撫でられ、顎のところをつままれた。どういう意図でやってるかは大体想像はつくが、それ通りになることになっても、思い通りにはさせないつもりだ。
「こちょこちょこちょー」
体中のあちこちをくすぐってきた。体をよじらせたりして、笑うのを我慢しようと試みてみるが、わき腹や足裏、脇の部分は耐えることができなかった。
くすぐりが終わると、僕は茜さんを叱った。これは自分のストレスを発散させているわけではなく、あくまでもお姉ちゃんとして、茜さんのためだ。
その最中で全員が笑っていた。僕の何がそんなにおかしいのだろうか。もしかして、三人で何か悪いことを企んでいるのではないかと勘繰ったが、そういう感じはしない。それでも七海さんのことは無意識に警戒していたけど。
「皆どうしたの?」
「全然怒ってるように見えないから、つい笑っちゃった」
怒り慣れていないせいか、怒り方が変になっていたみたいだ。それでも、笑われるのには腹が立ったので、自分なりのムスッとした表情をした。
「もう可愛すぎる」
もう怒るのは諦めよう。これ以上は余計にいじられて終わってしまう。設定を忘れたのか、今は僕の頭を妹役である二人に小さい子のように撫でられている。
「私がお姉ちゃんなんだから、二人が撫でるのはおかしいと思うんだけど」
「お姉ちゃんが妹に撫でられて、私の方が年上なのにって悔しがってるシチュエーションもそそられるじゃない?」
それは僕の質問に対しての答えになっているのかは、この際考えないことにして、その考えは多少理解できる。でも、この状況でその言葉が出てくるということは、まだ僕で遊ぼうとしているのだろう。
「じゃあ、今度はこれを着てみて」
思った通り、僕で遊ぶ気満々だった。でも反抗する気も起きないので、自分は言われたことをただやるだけだった。
もはや、お姉ちゃんの役をやっているというよりかは、お姉ちゃんと呼ばれているだけのようになっていた。元気な子という役だけをやり、他は何もやられていない七海さんが羨ましかった。
髪型や服装を変えるのは勿論のこと、設定を決められ、セリフを言わされたりもした。世話焼きの幼馴染や素直になれない後輩といった、様々なものをやらされた。今日の出来事は、忘れたくても忘れることができないものになるだろう。
「今日は楽しかったね。また遊ぼうね」
今日は休みで、もう明日からは学校だというのに、一気に一週間分の体力を使い果たしたんじゃないかと感じるくらい疲れた。
家に着くと、吸い込まれるように自分の部屋へ入っていき、ベッドへ倒れこんだ。
明日からの学校の授業や登下校で使う体力は、きちんと週末まで持つのだろうか。




