プロローグ
前から書きたいと思っていた性転換小説です。更新ペースは遅くなると思いますが、よろしくお願いします。
朝起きると、なんだか頭がフラフラしていたが、熱があるならリビングにある体温計を取りに行かないといけないので、自分の部屋から出ないわけにはいかなかった。
普通に立つことさえ意識していないと、倒れてしまいそうなくらい足元が全くおぼつかず、まっすぐ行くのすら大変だった。
リビングへ行くと、お姉ちゃんがゆったりとくつろいでおり、いつも通りだった。
「空、おは……って大丈夫?」
お姉ちゃんが僕の様子を見るやいなや、驚いて慌てだしていた。今の状態を見れば無理もないが、横になって体を休めたいので、会話などせずに早く体温を計りたい。
「熱ないか測らせて」
「体温計は私が持ってくるから」
そういうと、お姉ちゃんは僕の腕を肩を組むようにし、歩く支えになり、ソファまで連れて行ってくれた。背もたれにもたれるように座ってテレビのチャンネルをまわしていると、姉が体温計を持ってきてくれた。
その体温計で熱を測りながら、テレビを見ていると、トランス病という病気を取り上げている番組があった。患者の家族や友達、そして医師の人のインタビュー映像を流しており、その病気について話していた
その番組を見ているうちに熱が測り終わったので、体温計を見てみると40度を超えていた。確か、この病気が発症する前兆に高熱を引き起こすとかいうのがあったような気がするが、多分関係ないだろう。
「何度だった?」
「40度以上あった」
そう言うと、お姉ちゃんは僕の腕を肩に回し、体の支えになりながら一緒に僕のベッドまで来てくれた。
「朝ごはんはヨーグルトでいい?」
僕が頷くと、お姉ちゃんは部屋から出て行った。こういう時に会話をする相手がいるというのは結構助かる。体が弱っているときに誰もいないと、どんどん気が滅入ってしまい、悪いことを考えてしまう。病は気からという言葉があるように、精神が肉体を引っ張るというのはよくあることと聞いたことがあるので、暗い気持ちになっていては、治るのが遅くなってしまうかもしれない。だから、ひとりぼっちじゃなくて良かったと思う。
そんなことを考えている間に、この時間に勉強をしていたら、どのくらい進めることが出来たのだろうと頭の中でふっと疑問が出てきた。この疑問が出てくるということは、この状態で時間が過ぎていくのがもったいないと感じているからだろう。
いきなり朝から熱が出るなんて思いもしなかったから、いつもやっている勉強が出来ず、昨日した用意が机の上にのったままになっていた。
「ほら、ヨーグルト。横に置いとくからね」
「わざわざありがとう」
お姉ちゃんがヨーグルトとスプーンの置いたお盆を枕の横に置いて、どこかに行ってしまった。静かな空間には慣れているはずだが、お姉ちゃんが出て行った途端に寂しく感じた。
しばらく時間が経ち、やることがなく退屈していると、お姉ちゃんが部屋に入ってきた。
「やることないから来た」
「暇なら勉強でもしたらいいのに」
「なにそれ嫌味?」
お姉ちゃんが来てから、笑いながらいろんな話をしていると、さっきまでの時間が経つのが遅く感じていたのが嘘のように、あっという間に時が過ぎていき、昼になっていた。
「じゃあ、お粥作って持ってくるから」
「ちゃんと作れるの?」
「お粥くらい作れるっつーの」
お姉ちゃんが部屋から出て行った。気を遣ってくれたのかは分からないが、おかげで楽しい時間を過ごすことができた。
お昼ごはんも、辛いながらお姉ちゃんとの楽しい時間と共に少しずつ食べていき、時間は掛かってしまったが、お茶碗一杯のお粥を食べ切ることができた。
そして、お姉ちゃんが食器を洗いに行き、また一人になる。
こういう時間は、いろんな考えが頭によぎるのだが、今はさっきまでの楽しくおしゃべりしていたことだけが思い出された。あんな時間がいつまでも続いてくれたら、どれだけ幸せなんだろうと思う。
そんなことを考えていると、下から鍵を開けた音が玄関から聞こえてきた。おそらくお母さんが帰ってきたのだろう。
そんなことを思っていると、階段を登ってくる音がした。音が止んで、少しの間無音になった後、ドアをノックされ部屋に入ってきた。
「大丈夫?」
「今はちょっとマシ」
入って来たのはお母さんで、体温計と水をお盆と一緒に持ってきていた。改めて熱を測ると、今朝と同じ体温だった。気持ち的に楽だったから、熱は下がってきたのかと思ったのだが、どうやら違ったみたいだ。
お母さんは体温計を見ると、コップに入った水を飲めと催促してきたので、水を飲み干した。そうすると、お盆の上に体温計とコップを置き、下へ持っていった。
一人になり、何もやることがない僕は早く風邪が治るように布団を肩まで被って寝た。
夕ご飯、お母さんはお茶漬けを持ってきてくれて、後で薬と水を持ってくるからと言ってから、部屋を出ていった。
そして、お茶漬けを食べ、食後に飲む薬を水と一緒に飲み、今日はきちんと体を休まなければならないので、すぐに眠りについた。
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