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修行の旅と新たな出会い


「ブラストナックル!」


 馬鹿デカい体躯を痙攣させ、恐らくはその身体の内側をズタボロにされた恐竜モドキは息の根を止めた。

 体長は15m程だろうか。以前のティラノサウルスモドキとは違うタイプだが、同じ様に強暴な顎と、棘の付いた長大な尻尾を振り回し、俺を捕食しようとしてきたのだ。


 哀れなその姿を一瞥すると、俺は次のターゲットをセンサーで探す。

 因みにローブと大剣は収納したままである。



 アレから俺は人型形態ロボフォームを思い通りに動かす為、あらゆる動作を試してきた。

 嘗て自分が「人」であった頃の勘を取り戻す様に。


 変形機構をモノにした直後は、格闘戦どころか、満足に歩行すら難儀な程、身体制御に苦労した。

 何度も倒れては起き上がり、基本的な動きをその身体に叩きこむ毎日。

 本当に初期は、倒れても同時に腕すら思う様に動かせず、受け身も取れなかったのだ。


 なんなんだコレは! まるで赤ん坊じゃないか!

 クソ! メディ君がもう懐かしいぜ。


 それでも疲れない身体を、休む事無く自らに課せた課題をクリアする度に、次へ、次へと駆使して来た。時間は過ぎたがその効率は、生身の身体を持つ生物とは凡そ懸け離れたモノであったろう。耐久度が桁違いなのだ。

 それに何故か再起動ぼっちになってしてからは、俺は睡眠を必要としなくなった。


 やがて、俺が知る「人」の範疇では凡そ不可能な領域まで昇華した。と、確信した俺は、漸く目的地を目指し出発した。


 そして今は旅の途中の「修行」の一環として「狩り」を行っている。

 狩った獣達をランク分けし、タグを付けてデータベースに登録していく。


《今のはGランクってトコかな》


 片っ端等からサイズの大きな、如何にも獰猛そうな奴だけ狩ってるはいるが、くまで主観である。

 因みに基準となっているティラノサウスモドキは、ランクFだ。

 未だにソレ以上のタグを付けた事は無い。

 だって、メディ君がかなり呆れてたから……

 時折口からビーム(だと思う)を発したりする奴もいるが、そういうのは決まって身体のデカい、最低でも10m以上の奴だ。


《なんなんだろうな、アレ。魔法じゃないよな?》


 その概念はトト族の皆や親方デイフェロから聞いていたから、どうにも違う気がする。


 この世界の魔法は所謂(俺のイメージでの)ファンタジーのソレで、魔力を必要とし、先ず術式が展開し、発動する際は必ず詠唱を必要とする。……らしい。

 基本原理メカニズムは全く解らない。何せ俺にはその「魔力」とやらを検知する能力も無いのだ。ま、必要ないんだが。


《む?! センサーが捉えた、この反応は?!》


 グリッドには小さい光点が7つ、よりデカい光点が3つ、ソレを囲む様に座している。

 更にその後方には同じ位の大きさの光点が集団でそちらに向かっている。

 そしてセンサーは、小さな光点の中に、ある特異な反応を捉えていた。

 拡大表示して


《見つけた!》


 俺は現場に向かうべく、重力制御光学迷彩フル・ステルスモードを展開した。

 因みにコレは俺のオリジナルで、元々の機能――本体から発する、熱や振動といったあらゆる放射をも遮断する――に、外からの既知の探査線には基本的に時間差ラグの無い「透過」を再現実効する、フェイク効果を追加したものだ。


《メディ君に見せたら、なんて言うだろうな》


 約10kmの距離を、俺は一足飛びに跳躍する。


 すぐに見えて来た現場では、既に戦闘が開始されていた。

 瑞々しい草花の緑の絨毯が、そこだけ踏み荒らされて禿げ上がっている。

 やはり小さな光点は「人」であった様だ。中には獣人らしき人物も混じっている。

 その中に一体だけ特殊な全身甲冑フルプレートを着込んだ様な、その割にはやけにスリムなシルエットが見えた。


《間違いない、アレは「機械人」だ》

 ――動き其の物は非常に滑らかで、如何にも「人」の様に振舞い、とても自然だが、如何せん細すぎる。

 遠目にも女性型と見えるアレが、何かを着込んでるとしたら、中の「人」は骨しかないだろう。

 或いは中身が純粋な筋肉などの生体組織で、外骨格を持つ昆虫の様な「人間」とも考えられるが、俺のセンサーが反応した、その個体が内包、発生するエネルギーは、明らかに判り易い電気的なパワーだった――


 余計な事に為らない様、俺は少し様子を見る事にした。

 未だ彼らの戦闘能力が解らないからである。

 俺はほぼ無意識にセンサーを調整し(コレ位は出来る様になった)、彼らの台詞を拾ってみる。


「あンの屑共! よくも俺達を嵌めやがって!」

「舐められたモンだねぇ! …さっさと片付けて、馬鹿共はたたっ殺すよ!」

「あぁ…先ずはコイツ等を畳んでしまうぞ!」


 何やら怒鳴り合う様な会話の内容では、どうやら誰か(何か?)の計略にめられた様だ。

 彼らのセリフのやり取りが鮮明になるにつれ、なるほど気合は充分、且つ決死の覚悟も伺える。

 が、どう見ても旗色が悪い。


「ちっ! 一匹ずつなら何とかなるのに!」

「落ち着いて!…焦りは禁物!」

「そう、未だ大丈夫…なハズ!」


 襲い掛かった一体に3人、他の一体に2人、別の一体に2人。

 7人全員がこの戦闘に掛かり切りである。


「ねぇ……流石にヤバくない? さっさと逃げた方が」

「かもな…クソ!」


 どう見ても捌ききれてない。贔屓目に言っても手こずってる状態がやっとみたいだ。

 完全に分断され、二人組の方は明らかに押され始めている。それに…


《アレじゃ不味いな。後方から群れで来てるぞ》


 こらえ性の無い俺はステルスを解除し、戦闘に介入した。

 直観的に俺は、丁度一番近い獣人組が、魔獣モンスターのブレス攻撃に晒されると感じた。

 データベースを参照するまでもなく、相対する魔獣の特徴を既に知っていたからだ。

 コイツは火を吐くタイプだ。

 体内から口中へ移動する、急激に上昇していく熱源反応を感知。


《やはりそうきたか!》


 ダッシュすると、瞬間的に魔獣が目前に迫る。

 そのままの勢いで狙いすましてジャンプ、紫の体表を持つ小ぶりな魔獣(10m位)の顔を横から蹴り飛ばす。

 インパクトの瞬間、重力制御で身体を重くするのが真髄ミソだ。


 水風船の破裂に濁点の混じった様な鈍い音をたて、頭部を無くした魔獣の死骸は遥か彼方に飛んで行った。


「な!?」


[助太刀する!]


「な、何奴?!」


[後ろから集団が来ている! 早く他の奴と合流しろ!]


「す!? すまねぇ! ……オメェは!?」

[後にしろ!]


 怒鳴りながらも、即座に少し離れたもう2名の苦戦している魔獣の背後につき、尻尾を掴む。

 片手で掴んだ尻尾をムチの様にしならせ、魔獣ごとカウボーイロープよろしくブン廻し、更に上下左右に振り回す。

 何度も地面へ叩きつけ、力を込めて引っ張ると、ブチンっ! と音をたて、尻尾が根元から千切れた。

 気絶したのか、其のままこと切れた様に倒れ伏す魔獣。


 でも生きてんだよな、判ってるよ。中途半端に残すと面倒だ。


「フン!」


 トドメに背中から手刀を叩きこむ。魔獣は背骨ごとスッパリ切断され、死んだ。


「「!!?!?!!」」


 驚愕で声に為らない様だが、さっきと同じセリフを吐き、他の仲間へ合流を促す。


 一番奥側の、残る3人組の戦闘を振り返ると、最初に助けた獣人達が援護に入っていた。

 一人が弓と魔法の遠隔攻撃&一人が近接戦闘に加勢しての連携攻撃だ。

 必勝パターンの陣形なのか小気味よい流れで、元の三人も表情に余裕が見える。


 《魔獣も大分弱っているな…。すぐにこの2人も駆け付けるだろう》


 アレなら大丈夫だろう。そんなに手強い奴ではないし、せいぜいGランクだ。


 あとは、後ろからやって来てる「群れ」だな……その数凡そ50体。


《一々相手するのも面倒だ、アレやるか》


 俺はグリッド上の光点をマルチロック・オンすると、スっと両手を付きだす。


電磁誘導荷電流放射ライトニングブラスト!」


 前方広域に眩い雷光が水平に(・・・)、ジグザグな軌跡を描いて帯を伴って放たれ、直撃を受けた魔獣の群れは、自ら引き起こして来た土煙と共に、その悉くを炸裂させ、真っ黒な血と肉の塊りとなって動かなくなった。


「なー、なな?!」

「す、スンげぇな!!」

「何事なの?!」

「なんと!!」

「ほぅ!! ……お仲間かい?」


「アレは!? 違う、あんな出力……聞いた事ない……彼は私達、機械人マシーンナリーとは違う……」


 後方での戦闘も終了したらしい。

 驚嘆に慄くの声の後、鈍く光沢を放つ機械人からそんな科白が漏れ出るのを、俺は上の空で聞いていた。


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