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旅立ちと別れと

 目が覚めると、どうやら皆未だ眠ったままだった。


《俺、どれくらい寝てた?》


『おはようございます。マスター、3時間10分程です』


《ほぉ、なんか二十時間位寝た様な気がする。もう一時寝ないで済む。ってくらい》


『それは良かったです。それだけ効率の良い睡眠だったのでしょう』


 まぁ、メディ君が体調管理もしてくれてんだもんな。心配無用か。


《んじゃメディ君、いくよ》


『了解です。マスター』


[躯体変形バリアブルチェンジ!] 


 掛け声はご愛敬。無論皆を起こさない様、身体の内側の声さ。

 さて、親方の依頼をやっとくか。



 ……出来上がってしまった。その数インゴット300個強!

 いや、まぁ、ね? こんな一瞬で終わるとか思って無かったからさ。


『厳密には5分ほど掛かりましたが?』


 あ、はい。……にしても暇だな。


 うずたかく積層していた原石達をそのままインゴットに変え、うずたかく積んだ山を一瞥いちべつしながら何か暇つぶしを考えて……


 メンドクサ。もう一度寝るか。

 親方の歯ぎしりとイビキが凄いな。それでもトト族の皆はグッスリか。余程疲れたのかな。


 幸せそうな顔して寝てるなぁ。

 なんかイイな……こんな感じ。


 結局俺は元の球体に戻り、皆が起きだすまで眺めていた。


―――――――――――――――


 朝食を皆で食べ終わると、改めて親方にさっきの成果を差し示す。


「ハぁ!? なんじゃこりゃ?! いつの間に! どいつも至高品質フルクオリティじゃねーかッ! ……しかも…イヤ…俺ですらこんなモン……ちょっと、見た事ねぇ出来栄えだぜ?!」


「スタイ殿! アンタ、コレで食えるゼ! というか、これが世に出たら王族とか皇帝に囲われるな……絶対に!」


「「うわー!」キレイ!」


「インゴットじゃないみたい!」


「見事だな! 素材が……完璧に均一だ!」


 御礼も出来た様だし、喜んでくれて何よりだ。

 俺は新しく作り直した頭部のツインモノアイを、ゴーグル越しにへの字に曲げてニコニコ表示をしている。


 さて、ソロソロ行くか。


[喜んで貰えて良かった。それで……私はソロソロ出ようと思う]


「「え!?」もう?」


「まぁ、待て待て。そのままじゃ何かと不便だろ。ニ、三日待ってろ。ちょいと都合つけてやる」


[そうか? ありがとう。ではお言葉に甘えてもう少しお世話になるか]


「「良かった」ね!。」


 うんうんと頷き、ニコニコ顔で答える。俺は


 困ったなぁ。あまり一緒にいると情が湧いてくるんだよなぁ。

 居心地の良さについ甘えたくなってしまう。


 トト族の皆は、親方に依頼品を作って貰うまではココで過ごすそうなので、割と長期の滞在になるのだ。

 食料はどうするんだ? と聞くと時空間魔法を用いた、伸縮自在の特殊な倉庫を持っているらしい。

 その中にかなり大量に詰め込んであるから大丈夫なんだそうだ。無論親方も持っている。との事。


 ナニソレ四次元ポケ〇ト? 便利だなぁ。ちょっと欲しいかも。


「親方には俺達、専属の行商人が居るからね」


 あぁ、そうか。確かにそうだ。なるほどね。


 そんなこんなで、皆を手伝ったり、一緒に地上へ行って暇をつぶしたりと四日間程過ごした。

 有意義な時間だった。なにやら親方も準備できたらしい。


「ほら、コレ持っていきな」


 手渡されたのはフード付きの灰色のローブ。

 と、諸刃が鈍く輝く大層立派な大剣であった。

 ローブは今の俺の全高190cm位にピッタリのサイズだ。

 大剣は極太で、ほぼ身長と同じ位の長さである。

 アタッチメントの付いたホルスターベルトを装着し、丁度背中で背負うタイプの物。


 まるで昔読んだコミックの黒い剣士のアレだ。


 気に入った! きっと業物なんだろうな。


 それその物が濃い存在感を放っている様だ。


「俺の銘入りだ。身分を聞かれたらソイツを見せな。帝都、聖都、大国の王都でも通用するぜ」


「機械人が出入りする様なのは多分、帝都くらいだ。あと、たちの悪いギルドに目をつけられた日にゃぁ面倒だからな。気をつけろよ」


[本当にありがとう! 恩に着る。]


「よせよせ。湿っぽくなっちまう」


 ポリポリと指で鼻先を掻くと親方がフッと神妙な顔で俺に告げた。


「あ、あとな……判ってると思うが……。お前さんの加工の腕ぁ、ホントに大したモンだ。だが、他の奴の前では程ほどにしておけよ? 絶対に権力者が群がってくっから、本気で面倒な事になるぜ? …まぁお前さんがそうしてぇ、つーなら別だけどよ。」


 俺はデイフェロ親方の只のお節介とは思えない忠告を、しみじみと温かく受け取り、深く頷いて見せた。

 それを見て親方が、少し安心した様な表情で頷き返した。

 トト族の五人がその小さな手を振って別れの挨拶をしてくる。


「スタイさん! 「また会いましょうね!」」


「「「また会おう」ぜ!」!」


[あぁ! 勿論だ! また会いに来る!]


 ――いつかまた、必ず皆に会いに来る! ――


 俺はそう誓い、思い出深い「クラフター鍾乳洞」から旅立った。

 無論、素のボール形態である。長距離移動はこっちの方が都合がいいのだ。

 猛スピードで山中を抜け出し次の目的地まで疾走する。


 泣いてない! 泣いて無いゾぉ-!


 振り切る様に、また会うその日まで。と自分に言い聞かせる様に、更に速度を上げた。


 因みに剣とローブは新設した位相空間デバイスにて管理保全してある。

 「地の民」属が使っていた、あの特殊な倉庫を真似て、メディ君が作ったモノだ。

 子機ビットを作るより余程有意義に感じたが故に、俺が頼んだのだ。


 山岳地帯を抜け出し、海岸線に辿り着いてもそのまま俺は海面を突っ走る。

 目指すは900km先の大陸らしい。


 いやー便利ですわ! 今の速度なら4時間もあれば着くかな?


 うーん、綺麗な青空だ! 雲一つない。


『マスター! 上空に未確認飛行物体出現! アレは』


 メディ君が慌てるなんて珍しいな。センサーにも引っかからなかった様だけど。

 グリッドで見上げる。


《うぉ!? なんだアレ!? 漆黒の直方体モノリスか!? でかっ! あんなデカいモノ今まで浮いてたか?》


『アレは今、突然出現しました。(前遭遇時には時空震が検知されたのに)』


 なんだろう。何がしたいんだアレは

《あ! が! イダダダ! な! んだ! こ・れ・・》


『マスター! 機体完全制御アイハブコントロール! 全力回避!』


 気味の悪い、謎の振動が俺を襲った直後、いきなり全力でブン殴られた衝撃が俺を吹っ飛ばした。

 グリッドが一斉に、警告アラート注意コーションで埋め尽くされる。


 いかん! コレは……アカン……奴や……


 激しく点滅する画面と、けたたましい警告音の中で、俺は意識が保てずブラックアウトした。



 気が付くと周りは乾いた大地で、俺は大きく窪んだクレーターの中に居た。

 抜け出すと海など、どこにも見え無かった。かなり飛ばされた様だ。


 信じられない事に外装の一部がひしゃげていた。俺はゾッとする。

 

 どれだけの衝撃を加えればこんな事が出来るんだ?


 確か理論上、極小ブラックホールに放られても折曲がらず、脱出さえ出来れば完全に元に戻る剛弾性を有しているんだったよな?


 ……ん?


 言ってる傍からひしゃげた外装が泡立ち、仕込まれたナノマシン達が修復を開始した。

 俺はさっきからずっと嫌な予感が背中を撫でる様な感覚に身体を震わす。

 ……球体のボディは俺の思い通りに動く。が、


《メディ君、現状を! メディ君!? メディーーック!?》


 AIであり、躯体の全てを司るメディ君は、ソレから応答しなくなった。

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