第一章 エピローグ
雲一つない空。港にはこの街で知り合ったばかりの人達が大勢来ていた。
殆ど妻の幼少を知る人達か、冒険者ギルド関連、長老議長も居る。
漸く、帝都へ出発と相成ったが、予定より一か月遅れたのも確かだ。
盛大に行われた結婚式は、色々と有ったが何より妻が喜んでくれたのが良かった。
あんなに大変だとは思いもしなかったが、家族も参列者も皆快く祝福してくれた。
いつか話せたらな。故郷に残した母には幸せになって欲しい。と常々願っている。
俺は諦めない事に決めた。
身体の中に眠る世界への扉の事も、いつか帰還する事も。
メディ君もリベイラの中で健在化し、無事「出産」され、今は妻の賢者となった……。
帝都で何が待つのか。
エルドランを出発する船の中から、見送りにきた様々な人達に手を振りながら夢想する。
まぁ皆が居ればどうにでもなる。
いざと云う時は俺一人でもなんとかしなきゃならないが、家族を守るのは当然なのだ。
今の俺には頼もしい仲間達も居る。
出港する船のデッキで湿った海風を受けながら、進行方向の行く手を見た。
真っ直ぐな水平線だ。
!
一瞬、黒い直方体が浮かんでいた様に感じたが、グリッド上には検知されなかった。
AIのレイも何も言ってこない。
まさか……トラウマになりつつあるのか?
そんな馬鹿な。
……今更ビビってる場合じゃない。
俺には家族も居るんだ。
今度もし見つけたら、その時は容赦しない。
徹底的に存在を否定して、消してやる。
どこか己の中に納得出来ない感情が芽生えるのを、俺は認める訳にはいかなかった。
第二章へと続きます。