合流
嫁方の家に帰り着いたのは結局昼過ぎだった。
既にダスティン達〔明けの星風〕のメンバーが訪ねてきていた。
応接室に皆集まっている。義父は用がある、との事で一旦俺を降ろした後、長老議会庁舎ビルに戻っていった。
「おかえりなさい、スタイ」
「スタイの旦那、久しぶり!」
「よぅ、邪魔してるぜ」
「アンタ達結婚するんだって? 幸せにするんだよ! リベイラ泣かしたらタダじゃおかないからね」
バシバシと叩いてくるアビゲイルの横に、見た事のない女性がいた。
[皆! よく来たな。ほんとに久しぶりな気がする。ところで彼女は?]
スッと当人が前へ出てくる
「初めまして。ローニャ=ベルトンよ。貴方がスタイさんね」
[初めまして、スタイです。皆には世話になっている]
「新顔なんだ。まぁその、俺がスカウトしたんだけど……」
ダスティンが彼女のすぐ横に立ち、アビゲイルが小さくウンウンと頷いていた。
ははぁ、そう云う事か。グラバイドはどこ吹く風って感じだけど。
……いやぁ? ニヤニヤしてるか。
[そうか、これから宜しくお願いするよ。ローニャさん]
「こちらこそ! 噂は色々聞いてます。凄く強いんですって?」
「ま、スタイの旦那はちっと特別なんだ」
「へ~、貴方達がいう位だから相当なのね。でも何故ギルド登録して無いの?」
[え、そういや登録ってしてないな]
「ウチのメンバーって事で、噂だけは知られてるんだけどね」
「そこで私の出番ですよっと」
エメラダが声を掛けてくる。今帰宅した様だ。
颯爽と応接間に入室し、皆にリベイラの妹である事を手短に説明すると、俺に対して向き直った。
「冒険者ギルドからのお達しです。本人登録をするので、エルドラン出発前には必ず出頭する様にと」
[あぁ分かったよ、それで皆に話があるんだ]
皆が顔を一斉に向ける。
俺は、機神から頼まれた事も踏まえた上で、今後の動向(要望)を伝えた。
リーダーはリベイラだから、コレはあくまで俺個人の提案だけど。
「帝都ね。実はウチにも召喚要請が来てるの。〔明けの星風〕としてね」
「ホントだ、何時の間に……あ、推薦者ってこの人」
「シーモア=ブルックリン? 海軍の少佐だって」
「アー、あン時の艦長か!」
「ハイハイ」
「あの太っ腹のおっさん!」
「如何にも渋いオジ様って感じの人よね」
[知ってるの? 誰?]
俺とリベイラとエメラダは、グラバイド達から海賊船団を片付けた話を聞いた。
途中からローニャが興奮気味に引き継いで、淡泊な後日談が空前絶後の冒険譚へと変わっていった。
「兎に角あんな戦闘は見た事も聞いた事も無かった! 軍人さん達も皆驚いてたし!」
[そりゃ大活躍じゃないか! 三人とも凄いな]
「……ホントだッ! 映像データありますよ。姉様、ワールドギルドに上がってる」
ゴクっと喉を鳴らし、食い入る様に見入っていたエメラダがボードを見る様に促す。
ある程度は覚悟していたリベイラも、段々と顔色が変わっていった。
本人達は騒ぐ程の事かね。位なのが対照的である。
「姉様~兄様~。皆さんお昼の御用意が出来ました。食堂にどうぞって、お母様が」
オリビアが呼びに来て移動するまで、微妙な空気が流れていた。
義母メローダが用意してくれた遅めの昼食を堪能すると、皆は其々街に繰り出して行った。
昨日ついたばかりで、折角の機械都市を探検したいそうだ。
其れなら今の内にと、俺はリベイラに打ち明けるのであった。