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俺の名は・・・

「玉?」


「玉だな」


「キンキラキンの金玉だ!」


 ぺぺしッと叩かれた子(失礼?)は先刻の逃走劇中から腹が減ったと嘆いてた奴だ。

 成る程、見れば幼児体形一行の中でも取り分け健康そうな体格と顔色だ。

 案外大物になるかもしれない。

 ダブルで突っ込みを入れたのは女の子(失礼)二人だ。

 よく似た容姿をしている。双子? 姉妹か?


《メディ君、俺しゃべっても大丈夫?》


『はい。マスター、問題ありません』


[アー、コホン。ハジメマシテ、コンニチワ]


「「ハ?「!?え?」」…」


 キョロキョロと辺りを見回す子(失ry)も居れば、最初からじぃっと、こっちを見つめてくる奴もいる。眼帯をした男の奴だ。


「しゃべる玉か」


[そうです。因みに今、襲われていた貴方達を助けたのも私です]


「えー、ホント? こんにちは! それはどうも助けてくれてありがとうございました!」


「したーッ!」


「コンチワ!オイラはスロン!」


「ロナです」「コナです」


「ソロン!」


「……オロムだ」


 皆それぞれ一様に礼を言うと、シュタっと手を挙げるスロン、ペコリと各々頭を下げる姉妹のコナ&ロナ、手でお腹をポンと叩くソロン。

 オロムだけは警戒している様だ……当たり前だけど。

 てか、他四人は打ち解けるの早過ぎだろ……。


 五人とも皆肌は浅黒い。

 毛髪は真っ白なのがロナとコナ、やや赤茶けたのがスロン、ソロンは根元が黒く毛先が金色で、オロムは白髪交じりの灰色である。


 俺は身体を五人より少し斜め上を見上げる。

と言っても身体の中心から左右対称に横向きの細長いスリットを発光させ目に見立て、身体全体を顔の様なモノとして表現しているのだが。

 口は丁度、真ん中下側の装甲パネルをスライドさせて小さな穴を作ったモノだ。


[私が、村長です]

『マスター、ココは空気を読まないと』


「ドコの村?」


[あっと、すみません、今のは挨拶みたいなものです。私はマスターライト。スタイと呼んでいただきたい。以後お見知りおきを]


 名前は今考えた。

 適当である。元おっさんの話術力(?)なめんな。

 行き当たりばったりとも云う。

 ……が、ヤッてしまった様である。


「私が村長です。ロナと呼んでください」


「私が村長です。コナと呼んでください」


「私「私が(ry)ソロン!」ンでイイよ!」


[失礼した。人と会うのが久しぶりで、つい嬉しくて冗談を言ってしまった。……だから勘弁してください]

『マスターには私が憑いていますから』


「え、そうなの? アハハ! 面白い玉だ!」


「淋しかったんですね」


「私達はもう仲間です!」


「ハラへったなぁ」


 見た目同様、能天気な四人と違って、眼帯の男の奴があからさまな警戒心を抱いて俺に問う。


「オロムでイイ。なぁスタイさんよ……アンタが、本当に、さっきの魔獣を倒したのか?」


[呼び捨てで構わない。如何にも。身を隠す術を持っているから……そうだ、ソコを見てて欲しい]


 俺は近くの可燃物では無い、岩肌に張り付く様にそびえたつ高さ2m程の鈍い反射光を放つ、見た目イカにも硬そうな岩塊に狙いをつける。


 トントン、と軽く跳ねる。


「「ンん?」」

「え、オイ…待て!」


 一気に体当たりした!


 ドゴォンッ!

 と派手な音を立て、厚さ3m程の岩塊が少々の塊を残して粉々になる。


「「キャ!」」


 小さな手で同じく小さな口を覆うロナ&コナ。

 勿論、俺は痛くも痒くも無い。


[どうかな?]


 (キリッ!)と、効果音を出しても良さそうなドヤ顔、(をしたつもり)で皆を振り向く。


「プハァ!?」

「アー?!」

「スス、スッゲー!?」

「「ウソ…?!」でしょ…?!」


 尻もちをついたスロン、ポカンとしたソロン、ロナコナ、何れも正に驚愕の表情。


「あ?!…アレは真金剛石オリハルコン鉱脈だぞ?! お、お前さん…こ、こんなにかてえ石を……なんて事しやがんだ……」


 と、狼狽えた様子のオロム。

 文字通り粉々になった粒を手に取り、唖然としつつも、如何にも勿体無さそうな顔。


「待てよ……こんな、粉状になるなんて……一体どれだけの圧力が……」


 一転し、一粒一粒を指で確かめながらオロムは考え込んだ。


 あ、アレ? なんかダメな予感……失敗した?


『確かにこの惑星ではほぼ上限に達した硬度を持つ鉱石でしょう。私達にはあまり価値はありませんが』

『ただ、この洞穴下層にはより高密度の、純度の高い豊富な鉱床があります』

『目的とする資源は、その中でも更に高密度の結晶体です』


 メディ君が冷静に分析結果を説明するが、俺は何となくバツの悪い感触にちょっと不安になる。


[す、すまない。ただ証明したかっただけなのだが…]


 俺がそういうと、オロムが突然、ハッ?! と何かに気づいた様に、さも痛ましい目つきで俺をしみじみと観察するが


「お、オマエさん…ちょっと見せてみろ! …ケガは……ハ? な、なんだ?!! オイ?! どうなってる??! あんな事しといて、傷一つ……無いだとぉ!?」


 と更に目を丸くして、愕然とする。


《おや? このちっちゃいおじさん、コッチを心配してるのか?……なんだ、結構良い人っぽいな》


[問題ない、大丈夫だ]


 俺は少し嬉しくなって言うが、全然納得してない感丸出しのオロム。

 が、其れ以上は特に言及してこなかった。


「ま、まぁ力があるのは認める。でももう…やたら壊さない様に…な」


 ちょっとはっちゃけ過ぎたかな……

 と、そこにスロンが興奮した様子で被せてくる。


「フツーこんな粉々に出来ないって! アンタ、スんゲェな! 玉なのに!」

「スゴ玉だぁ」


 ソロンも丸いお腹をポンポンと叩いて呑気な声。


「親方に怒られるかな?」


 ロナが心配そうに疑問符を浮かべるも、コナが応える。


「ま、まぁ、ココには未だ沢山あるし、少しくらいなら良いんじゃないかなぁ?」


 コナの方がお姉さんっぽいな。

 そこでソロンが既に何処吹く風の様に、己の食欲を訴える。


「ねぇ、ゴハンにしようよぅ?」


「そぅ…だな。俺も腹減ったし。飯にしようぜ、皆!」


「やったー! やっとゴハンだ!」


 些か空気を読まないソロンの申し出が功を奏したのか、場の雰囲気も少し変化した様だ。

 スロンが同意し、他の皆もショックから立ち直るべく、ロナが声を掛けてくる。


「スタイさんも、良かったら一緒にどうぞ」


[お気遣いありがとう。だが私は、ココの…恐らくは最下層に用があるので…]


「最下層? そりゃぁ…超希少鉱石狙いか…オマエさん、随分と眼か…耳が利く奴なんだな」


 俺にはよく判らない慣用句的な言葉を言いながら、オロムが未だ疑わし気な表情を隠そうともせず、俺に問い掛ける。


[うむ。まぁそんな所だ]


 俺が素直に応えると、


「ふうん……まぁこの洞穴を知ってるってこたぁ、そういう事なんだろうな…」


 と、頷くとオロムは何やら考え込みながらも、其れ以上は聞いてこなかった。

 するとコナが、ささっと支度に取り掛かりながら、健気に俺に提案してきた。


「じゃあ、私達も「親方」の所に行くから、一緒に行きましょう。「親方」は一番下に居るの!」


 「親方」? ソレって…もしかして


『恐らく目的対象の最も近くに居る、先にイメージ処理を見せた個体かと思われます。何よりこの下には、その個体しか生体反応がありません』


 あぁ、あの樽の様なシルエットの人物ね。

 うん、そっかぁ…確かに案内してくれるとなると楽だね。

 では御相伴にあずかりますか。

 ても食えないけど。俺機械だし!


 その旨を伝えると、皆一応は納得してくれた様である。

 これから一時お世話になります。

 ヨロシクな!


 ゴソゴソと皆、背負った荷物入れの中から、思い思いの食材を取り出し、各々分担して食事の用意をしていく。

 流石に俺には必要が無いのでボゥっと見守っていた。

 その合間にも色んな事を教えて貰った。


 皆は〔ノーム〕と呼ばれる「地の民」属の種族で大体身長130cm前後、戦闘よりは採掘や採集を生業なりわいとし、種族単位で特技としているらしい。

 その中でもスロン達はトト族という部族で、オロムはその族長の次の候補、現補佐役との事だ。

 これから会いに行く親方は〔ドワーフ〕種族で同じ「地の民」属との事。


 益々ファンタジーな響きだな。


 因みに総じて皆皮鎧の様な装備品を身に着け、其々大小の丈夫そうな小物入れやらバックパックを背負っている。

 その内オロムがピッケルと両刃剣、ソロンは片手斧と盾、スロンは短剣に身長と同じ位の長槍など武器類を、コナが杖とバックラー、ロナもバックラーと弓をアタッチメントしている。

 上着も男性群は全体的に暗色系で纏められているのに対して、女性陣はもう少し明るい茶系のインナーに上から乳白色のローブ状の羽織を着ている。

 其々の上着に施された紋様が独特で、様々な色合いが所々グラデーションを醸し出したり、中々御洒落さんに見える。

 一見してかなり手の込んだ装飾、且つ綻びの無い一級の工芸品だ、随分手先が器用な印象である。


 そんな事を思い浮かべながら皆の食事中、俺は周囲の警戒を兼ねてコロコロと転がっていると、


「何をしてるの? 不思議な儀式だね?」


 という顔で其々声をかけてくる。

 お人好しな幼児体形だけど、なんというか放っておけない、気の良い奴らだ。

 

 というのも、実は――襲ってきた魔獣は【虎狼タイガーウルフ】(まんまだな)と云い、【キマイラ属】の一種らしい。

 スロンが洞穴に入る前、外で彷徨っていた赤ちゃん虎狼を拾い、そのまま連れてきたのだが、途中でピィピィとあんまり鳴くので、懐に忍ばせた〔魔石〕なる物を与えて観たところ、突如変貌し、あの事態になった。

 との事である――。


「使役獣にしたかったんだよー」


「魔獣使い(テイマー)でもないンだからムリでしょ!」


「無暗に魔石を与える前に、せ め て、ギルドに預けるべきだったな」


「スロンの考えなし!」


「ごめん。悪かったって~」


「はぁ喰った食った…。げぷぅ」


 てなワケで、元々この洞穴「クラフター鍾乳洞」は魔獣などあらわれる筈も無く、俺はただ無意味に転がっていただけだと云う事に。


 ……こっ恥ずかしい。


 食事休憩も終わり身支度をして、(気を取り直して)さあ、当初の予定通り出発だ。

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