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事故→事後?

 なんと……濃密な実戦経験か。時にドラゴンを、時に魔物? の群れを、単体で又は仲間と共に打ち倒し、何度も危機を脱していくマノンに、俺は文字通り圧倒され、その歴史に感動を覚えた。


 凄い! 凄すぎる! マノン殿! 俺は貴方を純粋に尊敬する!


 俺の精神世界で、何故か俺は生前の肉体が少し若返った姿で、巨大なスクリーンに映し出されたマノンの戦闘の歴史を、熱に浮かれた様に注視する。


(貴様が…否、お主がスタイか。本当に星の外から来たのだな)


 スクリーンだと思っていたのが唐突に形を成し、現れたのは……マノンか?

 厳つい顔の、筋肉の塊然とした全身・・に無数の傷がある実年の大男が目の前に立って俺を見ていた。


(ちとこそばゆいが、そうまで羨望の眼差しで見られると…存外可愛い奴だ…どれ、もっと我否、ワシに触れてみぬか?)


 え? いや御父さん? そういやなんで俺達服着て無いの?!

 いや、あの、禁忌に触れるのはちょっと……私には貞淑な妻が!

 ……アッー! イヤんっ! て助けてー! AIレイえも~ん! も~ん、も~ん、も~…


 …オイ、腐ってないよな? 早く出てこんか!


『あーゴホン! マスターにちょっかい出す不届き者はドコのどいつですか~!』


(むぉう! なんという存在感! 貴女が「賢者」殿ですかな? お初にお目に掛かる。マノン=アーセナルと申す)


『私はこの躯体を司る、マスターの相棒、レイ。予期せぬ事とは言え、マスターが(迂闊にも)リンクした為、一時的にアナタも共有した様ですね(ブロックする暇もありませんデシタ。)』


 え、ソレほんとなの? なんかワザと放置してない? 普段の君の手際から言ってさ。


(この全能感! 素晴らしい! おおぉ!? 身体が? 私の身体が見違える様に充実していく!)


『カスタマイズの繰り返しで十数か所、機能衝突を患っていた様ですね。(美しくないので)改善しておきました。』


(おお! かたじけない! なんと御礼をしたら良いか!)


『特には。……マスターのリベイラさんにはマスターの初の同期リンク相手パートナーがアナタで在る事は内密に』


[(ギクゥ! AIレイさん。ありがとう!)]


『(いえいえ。コレも主格相棒の嗜みです)』


 AIレイが実に嬉しそうに呟く。


(心得た! 確かにスタイ、お主は少しソソッカシイな。)


 ニヤリとしつつ、親父マノンが更に近づく。


《はぁ、御尤もで》

(リンクの仕方を知らなかったのか。まぁもう今ので解ったな。…娘には内緒にしておこう)

《勿論です! ハイ!》

(フム。いな……我妻アレには特に絶対内緒だぞ…!)

《は、ハイぃ!》


 実際には存在しないハズの尻タブを掴まれた感覚。

 をハッキリと自覚した俺は衝撃を受ける。


 はぁん? コレこの感覚って肉体と変わらんじゃないか!

 つか癖になったらどうすんのよ!


 というか、同期リンクしたらこんな、肉感は勿論、相手の匂いや質感、果てはフェロモン?まで実感しちゃうのか!

 物理的な足枷?が無い分、さぞかし、随分と自由度の高い、あんな事やこんな事が……


『そろそろ(マスターが危険な兆候をもよおしてきたので)同期リンクを切りますよ? これ以上はマノン、補助記憶演算処理サブプロセッサー装置デバイスの無いアナタには危険です』


(…名残惜しいが、賢者AIレイ殿、義息スタイ同様、今後、我娘リベイラを宜しく頼みます)


 フッと同期リンクが切れ、目の前には現実が戻った。

 父マノンも大人しく……違った、闘技場を縦横無尽に駆け巡っていた。


「ワハハハハ! 軽い! 身体が軽いぞ!」


 ほんとに壁まで……あ、とうとう天井に張り付いて走り回ってる。

 重力制御も無いのに器用だなぁ。

 ほほぅアンカーチェーンか? 蜘蛛の男みたいな軌道を楽しんでる。

 面白そうだな、俺もやってみようかな。


(うん? リベイラかな?)


 グリッドにレーダーモードで転写された人影が、闘技場の外から近づいてくる。

 そういや今度、彼女にマーカーを付けて於こう。


「…スタイ? 御父様? 終わったの?」


 思った通り新妻リベイラが顔を出した。俺達の様子を見るとホッとした様だ。


「(上手くいったのね。良かった! ありがとう。)」

「(それと、お疲れ様スタイ!)」


 キュッと俺を抱きしめてくる妻に、同様に愛情を示し返す俺。


「娘よ。安心しなさい。スタイを我が息子と認めよう」

「!父様! ありがとう! 愛してる!」

「コレコレ。……大きくなったなぁ」


 床に降り俺達の直ぐ側に来たマノンに飛びつくリベイラ。

 こんなにストレートに感情を出すなんて羨ましいな、父親だからかな。


 やっぱり良いものだなぁ、今の君は、なんだか年相応の愛らしさを放っているよ。


 少し変形した義手で抱きしめた父マノンは娘の背中越しに、片手で五本指の親指を上に向け、俺に目配せする様に光通信を発した。


「(娘を宜しく頼む)」

[(ハイ! 命に替えても!)]


 心を込めて俺が頷くと、満足した様にマノンは娘との久しぶりの邂逅を慈しむのであった。



 後から呼びに来た義妹エメラダと、姉の後ろに隠れる様に付いて来た末妹オリビアが闘技場に入ってくるまで、俺達夫婦はこれまでの旅程を、マノンはリベイラから連絡が来た後、長老議会議長に報告し、果ては「機神」より俺当てに「天啓」を授かった事など、どれだけ用意したかを事細かに話し合った。


 まぁ、早めの夕食の食卓でも同じ事をヨメ方家族皆で話し合ったのだが。

 一番幼いオリビアは、俺達の話を聞くのに夢中になって、リベイラと俺を交互に見比べ、時折大きなため息にも似た感嘆の表情を浮かべて……何時の間にか、うたた寝していた。


「あら寝ちゃった。私ベッドに寝かせてくるわ」


 エメラダが甲斐甲斐しく末妹の世話を終えてくると、明日からの予定を切り出す。

 彼女は新米だがギルド長にも顔が明るく、今回の俺達の件に関してはほぼ任されているらしい。


「あ、そう言えば「トラム神殿、太陽神教スペリオル大司教イセリア」さん?より言伝がありますよ」

「いけない!忘れてた。マコーウェル夫妻から通信きてたの」

[マコーウェル夫妻?]

「グスマン&レジーナ=マコーウェルの事よ」

[あぁ!彼らもう結婚してたのか!]

「あの後すぐにね。」


 既に懐かしい顔だ。て……思い出した! この街で〔明けの星風〕メンバーと合流するんだった!


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