最初の出会い
ブックマークありがとうございます!
更新が遅くてすみません。
姿を消して、重力のくびきから解放された俺は、かる~くジャンプするだけでフワっと洞穴の入り口まで到達した。まるで風船にでもなったかの様な。
おおぅ、カッルイな! でもチャラいって意味じゃないゾ! そこンとこヨロシクっ!
メディ君はリアクション無しッ!っと。
ココで「ピキキ……ハ!? 化石化したジョークに一瞬フリーズしてしまいました」なんてボケが入ると無味乾燥な、おっさん一人旅のちょっとしたアクセントになるんだけどなぁ。
『所謂コテコテのベタな掛け合いを御希望ですか。ココは軽く溜息をつきつつ、敢て放置が王道かと』
オッ反応良いねぇ(笑)最初の頃と比べるとズイブンと人間味(?)が出て来た様な。
コレも成長って奴なんだろうか? なんだか楽しくなってきた。
身体が軽くなった為か、何処かウキウキした気分で空中を漂い、大きな穴の中に入ると、そこには巨大な鍾乳洞が広がっていた。
上は10m程の天井を支える岩の柱や壁が、下は底が見えない暗闇へと消え、奥行きはこれまた闇に溶け込み複雑に入り組んでいる。
主に上下に広大な空間を、縦横無尽に伸びた岩の道が曲がりくねって底の方まで続いていた。
先に進めそうな部分は、下り側に大きく右に曲がっていて、途中にはポツポツと灯りが、更にかなり奥の彼方にも小さな光が見える。
注目すべきは、上下から伸びたツララの様な岩肌に一定の間隔で、松明(の様なモノ)が設置されている所だ。
丁度道幅の基準になる様にも見える。
《やっぱりこの星の原住民(の仕業)なんだろうな》
『マスター、周囲のツララ状の物体は揮発性可燃物を内包しています。私達にとって危険とは言い難いですが、熱線兵器等、火の取り扱いには注意を』
《了解だ》
マッピングされた周囲の状況がつぶさにグリッドに表示される。
メディ君の言う通り、確かにツララっぽい物はソレ(可燃物)を膜の様に覆っていて、その分厚い所に穴を空けて木の棒(?)を差し込んで火を灯している様だ。
膜状なモノの熱伝導率が低い為に、巨大なロウソクとして使えるといったところか。
状況を確認した俺は点滅する光点を目指そうとしてふと、当然の様に現段階では不可視の筈の目的地を拡大表示されたウィンドウを覗き込む。
多重複合センサーとメディ君による予測補正の映像である。
まぁ元々惑星探査もこなす躯体だ、この程度、雑作もないのだろう。
シルエットとは言え、凹凸まで再現した3Dの人型モデルが時折寝そべったり、胡坐を掻いて座ったりしている動作まで捉えているのは流石と言おうか。
ちょっと小太り? と言うかタルの様な体形だが。
《人、だな》
『はい。マスター、目的地に在する対象は地球人類型に酷似した特徴を持つ個体の様です』
『ですが、他にも種族的に近い特徴を有する複数の原住民と思われる動きがあります。別の生体反応から逃走している様ですが、どうしますか?』
《え、ソレは……どっちが近い?》
『現在地から最短で複数の生体反応まで約5分、目的地まで約13分後に到達可能です。』
《近い方から行こう! どの道、現地言語の翻訳もしないとね》
『賛成です。マスター、では直接下降します。早速飛び降りてください。同時にバックグラウンドで翻訳を開始します』
《お、おぅ》
恐らく順路である松明状の照明の道から、底知れぬ暗闇へポーンと身投げした俺に、滑らかに切り替わった視界が飛び込んでくる。
どうやら明かりが灯る岩道自体は一本道の様で壁に沿ったり、縦穴の空洞を端から端へと渡したり、昔やってたゲームによく合ったダンジョンみたいである。
突然ガクン! と身体が重くなると急速に落ちていく。
は、速いよ、メディ君。最短て言うから多分そうなんだろうと解ってたけど。
ま俺も、正しく重力制御するメディ君に、絶大な信頼を置いてるからこそ愚痴も言えるんだが。
グリッドに矢印された横穴に飛び込んで、あっと言う間に「原住民が何かから逃げている」とメディ君が言った現場に近づくとキ-キー高音気味の音声が入ってくる。
「£@★!・」
「……て! な……ルぁー」
「なんであんなモン連れてくんだよー!」
「ニゲロー!」
「ハラへったー!!」
目の前に飛び出してきたのは、ノーム? いやホビット? と、昔の記憶の中にある、ファンタジーなイメージを体現した様な小人な人達であった。
必死の形相であろうが、――いや、こう言っては失礼だが――いささかバランスの悪い幼児体形にどうしてもコミカルさを見出してしまう。
小人な人達は五人(?)、文字通り転げる様にして奥の巨大な影から逃げている。
子供……じゃないよな?
多分アレで成熟した成体なのだろう。
眼帯なんかして結構表情の険しいのも居るし……
あっ! 危ない!
ビタンッ! と痛そうな音を立て転んだ仲間を、一斉に皆が助け起こそうと駆け寄る。
倒れた子(失礼)は小さな両手で顔を擦り擦り袖を引っ張られて立ち上がろうとするが。
そこに松明の陰影から這い出て来た、狼に虎を足して角を生やした様な異形の獣(?)が襲い掛かる!
眼帯の男の子(失礼)が懐の剣の様なモノを、こげ茶色のローブを羽織った子(失礼)が両手を向け、他の二人は倒れた仲間を庇って怯えた目を見開いている。
《ちぃっ!》
咄嗟に襲い掛かった獣に体当たりをブチかます俺。
あの小さな手と装備で太刀打ち出来そうには見えなかったから。
容易に想像できる、無残な光景を見たくなかったから。
ドカン! と壁にめり込み気味に吹っ飛ばされた獣はズルズルと地面に落ちた。
フラつきながらも立ち上がり、体勢を整えようと低く頭を押さえ、唸り声をあげている。
《存外タフな奴だ》
「な、何!?」
「スロン? 、魔法? 撃ったの?」
「間に合うか! 全然! 何もしてないよ!」
「また来る!」
ドンッ! と獣が加速して再度小人な五人を襲う。
《させねえよ!》
無褒美に接近した獣に、俺はバインバインと自らバウンドして下から顎を狙って体当たりした!
ガキンッ! と小気味よいインパクト。
呆気なく空中に跳ね上げられる獣。
そのまま何回転か宙返りさせられ、綺麗な放物線を描いて地面に落下。
ピクリとも動かなくなった。
《決まったゼェ! ジェ〇トアッパー! どうだ痛かろう!》
『そんなプログラムはありませ』
《メディ君、ステルス解除だ!》
『了解』
「「「「!?」」」」
「あぁ、ハラへったぁ」
唐突に音も無く姿を現した真ん丸ボディ(俺)に、五人の小人さん達が真ん丸眼をこれでもかと、見開いた。